左から武藤、宇佐美(上)、内田(下)、酒井高(上)、長谷部(下)、原口(上)、大迫(下) [写真]=Bongarts/Getty Images
8月26日、いよいよブンデスリーガが開幕を迎えた。今シーズンの1部リーグには日本人選手8名がプレーする。2度目のドイツ挑戦に臨むFW宇佐美貴史や、ケガからの再起を図るFW武藤嘉紀など目が離せないシーズンが始まる。
■躍進が期待される宇佐美のブンデス再挑戦
19歳で名門バイエルンに入団し、ホッフェンハイムで過ごした翌年も含め計2シーズンをドイツで過ごした宇佐美貴史。自身2度目となるブンデスリーガでの挑戦は、かつて居を構えていたミュンヘンから北西へ約65キロの町アウグスブルクで、この夏始まった。
ここまでは、まだ確固たるポジションを獲得しておらず、DFBポカール1回戦FVラーヴェンスブルク戦でも、ベンチで90分間を過ごしている。しかし、そもそもディルク・シュスター監督は今月上旬に「彼はJリーグでプレーしていたから、夏はまったく休みがなかった。これでは肉体の回復ができない」と話しており、コンディションが上がってくるのは、「まだこれから」と考えている。したがって、開幕戦のスターティングイレブンに宇佐美が名を連ねる可能性は低く、指揮官も長いシーズンを見据え、宇佐美の起用を計画している。
またプレーについても、ボール技術、視野の広さ、アジリティについては当初から高く評価しており、「最初は、ブンデスリーガでプレーするのに必要な頑丈さが欠けていたが、彼は今、懸命に戦っている。すべて順調だ」と、課題克服を目指す宇佐美の強い向上心にも感心しきりな様子。左MFで躍動する宇佐美の姿を見られるのは、もはや時間の問題だ。
■ひざの回復具合に悩まされる内田
内田篤人が最後に公式戦のグラウンドに立ったのは、2014-15シーズンのチャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦レアル・マドリード戦までさかのぼらなければならない。昨夏メスを入れたひざの回復具合は、本人や周囲の想像以上に悪く、残念ながら昨シーズンは丸々1年間を棒に振ることになった。今春から行っていた日本でのリハビリもようやく終わり、この夏には久しぶりにシャルケへ戻ってきたものの、クラブ幹部によれば、再び患部に違和感が生じたため日本に2週間ほど滞在し、ドクターの診察を受ける予定であるという。
内田が離脱している間に、これまで同選手の独壇場だったシャルケの右サイドバック(SB)は、一転して多くの候補者がひしめく激戦区となった。ブラジル人DFジュニオール・カイサラとDFザシャ・リーターの2人が昨夏まとめて獲得され、今オフにはセビージャで主将を務めていたスペイン人DFコケも加入。治療を終え、プレーができる状態にまで回復しても、内田にはその後厳しいポジション争いが待っている。
ただし、負傷前の内田は時折レギュラーから外されつつも、最終的には再びポジションを奪い返し、不死鳥のごとく復活しては、安定したプレーを我々に見せてくれた。まずはケガを完璧に治し、復帰までの道のりを着実に歩んでいってほしい。
■武藤の定位置確保にはコンディションの改善が不可欠
ひざの外側靭帯を負傷し、昨シーズン後半戦の大部分を欠場した武藤嘉紀は、間もなくマインツ加入2シーズン目を迎える。主将だったオーストリア代表MFユリアン・バウムガルトリンガーと、GKロリス・カリウスがチームを去ったが、FWジョン・コルドバとMFクリスティアン・クレメンスの完全移籍が決まり、今のところ攻撃メンバーの顔ぶれに変化はない。そのため、昨シーズン前半戦のパフォーマンスを取り戻すことができれば、武藤の地位はそう簡単に崩れないはずであるが、しかしプレシーズン中にも、ひざに違和感を訴え練習を切り上げるなど、状態が万全でないのも確か。加えて、ポジションを争うコルドバ、MFハイロ・サンペリオ、MFパブロ・デブラシス、クレメンスらの調子は軒並み良好であるため、武藤がトップコンディションに戻ったとしても、すぐさまスタメンの座を取り戻せるとは限らない。攻撃の選手である以上、例え少ない出場時間でも目に見える結果を残していくことが、武藤には求められている。
■安泰ではない長谷部のポジション争い
プレシーズンを見る限り、レギュラーを手にしていたようにも思えた長谷部誠。しかし初の公式戦となった21日のDFBポカール1回戦マグデブルク戦ではMFサボルチ・フスツィとMFオマール・マスカレルの2人が中盤の底を務め、長谷部は65分にFWルーク・カスタイニョスとの交代で途中出場だった。ニコ・コバチ監督の構想では、マスカレルがボランチの第一候補であり、長谷部とフスツィが2番手。また、昨シーズンは右SBを本職とするアメリカ代表DFティモシー・チャンドラーを追いやり、同ポジションに入ることもあった長谷部だが、今シーズンはDFギジェルモ・バレラをマンチェスター・Uからレンタルで獲得しており、同選手が右SBを担うことになる。ブンデスリーガ在籍10シーズン目のベテラン選手となり、昨シーズンはフランクフルトのフィールドプレーヤーで最多となる32試合に出場した長谷部だが、今シーズンにおける同選手のポジションは、決して安泰ではない。
■原口は数字での貢献が求められる
パル・ダルダイ監督の就任以降、急激に出場機会を増やしていった原口元気は、昨シーズン1年を通して、ヘルタの右MFとして君臨した。しかし、シーズン前に同監督が「元気には得点に結びつくプレーを求めている」と語ったように、昨シーズン記録した2ゴール以上の結果を出さなければ、これまでのように長い時間をピッチで過ごすことはできなくなるだろう。ただし、原口自身もそのことは十分理解しており、プレシーズンからたびたび「今年はとにかく得点やアシストを残したい」とコメントしている。
昨シーズンは、できるだけサイドに張っていることを求められていたが、今シーズンは同じ右MFでもインサイドでのプレーが多くなり、よりゴールに近いポジションを取ることができる。バイエルンでもプレーしたドイツ人MFミッチェル・ヴァイザーとのポジション争いに打ち勝ち、今シーズンこそはゴールを量産してほしい。
■定位置を確保した酒井高
2015-16シーズンの前半戦は、それまでハンブルガーSVの右サイドを守り続けていたDFデニス・ディークマイヤー、そして左サイドのDFマティアス・オスチョレクからポジションを奪えず、酒井高徳は控えに甘んじていた。しかし後半戦に入ると、ディークマイヤーをベンチに追いやり、自身を引き抜いてくれたブルーノ・ラバディア監督の期待に応えている。
今シーズンのプレシーズンでも酒井は右SBの第一候補として起用されており、また「去年は1年目ってこともあったけど、今年は『自分が中心だと思ってやってほしい』っていうふうに監督から言われたし、『声を出してチームを鼓舞してほしい』ってのも言われている」と、単なる主力選手の1人ではなく、中心的存在としての振舞いも増加。今年は、これまでとは一味違った酒井を、多く見られることになりそうだ。
■厳しいポジション争いに挑む大迫
1991-92シーズン以来24年ぶりとなる1桁順位で昨季の戦いを終えたケルン。ここ3シーズン、2部からの昇格、1部残留、9位と、毎年チームの成績が上向いている一方、昨シーズンの大迫勇也はトップ下やサイドMFでの起用が多く、わずか1得点という寂しい成績だった。
昨年までの4-2-3-1から、今シーズンのケルンは4-4-2が基本路線となる見込みで、大迫は昨シーズン15ゴールで得点ランキング5位のFWアントニー・モデスト、FWセルー・ギラシー、ラトビア代表FWアルチョムス・ルドネフスらと、前線の2枠を争うことになる。ただし、高い得点力を持つモデストがそのうち1つを確保するのはほぼ決定的であり、今夏の新加入選手2人よりも優れた部分を指揮官に見せなければ、大迫の出番は昨シーズンよりも減少してしまうだろう。
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文=鈴木智貴
By 鈴木智貴