激戦の後に両チーム混ざって笑顔で記念撮影 [写真]=千葉格
「日本の代表として誇りを持って戦えました」。ドイツの強豪チームとの一戦をそう振り返ったFW楢本善次郎くんの表情はキリッと締まっていた。小学4年生から6年生を対象にしたフットサル大会「EXILE CUP 2017」を制覇した大阪セントラルFCは、EXILE賞の「ヨーロッパサッカー夢者修行」でドルトムント遠征を実施。3日目の2月11日は、午前中に地元チームとの親善試合に臨んだ。
大阪セントラルFCはこの日、地元クラブのホンブルッハーSV U-13と対戦した。ドルトムントと提携しているホンブルッハーSVのU-13はヴェストファーレン地域の1部リーグに属し、昨季は3冠も達成した強豪チーム。大阪セントラルFCは小学6年生が中心の10人で構成されたドイツ遠征チームで世界に挑んだ。試合前には、それぞれが持参した寿司のキーホルダーやけん玉、ハチマキなど日本のお土産をプレゼントし、相手選手との交流も図った。
試合はサッカーコートを一回り小さくしたピッチで、9人対9人、30分×3で実施された。第1戦は、慣れない人工芝に「いつもと違う」「ピッチが固い」と苦戦。緊張からプレーにも固さが見られ、正確なパスでワンツーを効果的に使ってくるホンブルッハーSVに押されたが、なんとかスコアレスでしのいだ。
第2戦は徐々にリズムをつかむと、14分に唯一の5年生FW西出隼くんが左サイドから鋭くカットインして右足を一閃。これは惜しくも相手GKの好セーブに阻まれたが、この流れで獲得したCKで均衡が破れる。キッカーのMF衣川誠駕くんが中央に送ったボールを、キャプテンのMF鴨川光輝くんが168センチの高さを活かし、ヘディングで叩き込んだ。「いつもボールがいいから」と鴨川くんが言えば、衣川くんも「いつも決めてくれるから」と阿吽の呼吸を披露し、得意な形で先制点を決めた。
これで“波に乗った”大阪セントラルFCはその2分後、相手のバックパスを「思いっきり狙いにいった」というFW白濱聡二郎くんがカットし、同じく詰めていた楢本くんへ冷静にパス。「コースを切って、相手に出させたところで潰せた。あとは2対1だったから、GKを外して決められました」という楢本くんが狙い通りの流れで追加点を挙げた。
守っては守護神の清水琉日くんが「芝が薄かったので、ボールは日本より伸びたけど、試合中に慣れました」と抜群の適応力を見せて、好セーブを連発。「DFがちょっと寝ぼけていたので、僕が目を覚ませてやろうと思って。嘘ですけどね(笑)。全力を尽くしました」とおどけた表情を見せた。元木悠太くん、下舘拓海くん、糸賀大耀くんのディフェンスライン3人も徐々にパフォーマンスが安定し、2戦目は2-0の無失点で終えた。
しかし、3戦目の開始直前にアクシデントが発生。ディフェンスラインの中央でプレーしていた下舘くんが、競り合いで鼻を負傷していたことが発覚し、大事をとって交代となった。後に病院で手当てを受けた結果、骨に異常はなかったが、下館くんは「ドイツは荒いなと思いました」と身をもって海外の激しさを経験した。
3戦目は相手に押し込まれる我慢の展開が続き、高本夏海コーチからも「イライラしたら負けやぞ!」と激が飛ぶ。交代枠がない中、徐々に疲れも見えだし、19分にゴール前の混戦からミドルシュートを決められ、1点差に迫られる。直後の22分には鴨川くんがFKで自陣から鮮やかなロングシュートを沈めたが、間接FKだったためノーゴール。それを理解できなかった選手たちは、素早く切り替えができず、その隙を突かれてピンチを招いたが、ここもGK清水くんのセーブに救われた。終盤の猛攻も清水くんを中心に粘って守り切り、3試合合計2-1で大阪セントラルFCが接戦を制した。
試合後、キャプテンの鴨川くんは「無失点で勝ちたかったけど、勝ててよかったです。試合も楽しかったです」と勝利に笑顔を見せたが、同時に「(相手は)日本人より厳しく、球際が強かったです。数的有利をすごく作ってくるから、判断のスピードが難しかったです」と、海外との差を実感。同じくボランチの衣川くんも「相手のプレッシャーが早くて激しかったから難しかった。もっと周りを見て先を考えていきたい」とさっそく課題を口にした。
今回は日本が高さで優っていたが、167センチの糸賀くんは「高さはあるから空中戦は負けなかったけど、ドリブルをしているときの当たりとかはすごかった。日本とは違った」と話し、174センチの楢本くんも「今まで体で負けることはあまりなかったけど、久しぶりに負けたから、また体を強くしていきたい」と、海外の球際の激しさや強さに驚いていた。高本コーチは「外国人相手でも背の高さとか、ある程度ボールを持てたので、そういうところで自信を持てたことが収穫です」と話したが、チームの過信を招かないよう冷静に気を引き締めた。
「今日戦ったドイツの子はここから体もすごくでかくなるし、スピードとかパワーも出てくると思う。現状に満足すると伸び代がなくなってしまうので、勝って良かったですけど、変な自信というか、『俺たち結構やれている』というのが強くなり過ぎると、あまり良くない。もちろん自信になったらいいですけど」
ドルトムントのサッカースクールでコーチなどを務め、今試合のレフリーを担当したトルステン・ゼンクテラー氏は、「正直に言うと、両チームの力は均衡していた。何人か大きい選手がいてCKなどのセットプレーで活かせていた。やっぱり背の高い選手が有効だったね」と評価しつつ、「ドイツの子供たちもこういう風にやれる機会はあまりないから、両チームにとってよかったと思う」と話した。今回の親善試合は、大阪セントラルFCが貴重な経験を積めたように、ホンブルッハーSV U-13にとっても“世界を知る”機会となったようだ。
【EXILE CUPヨーロッパサッカー夢者修行/現地レポート全5話】
第4話「香川真司登場のサプライズに一同唖然…!」に続く。
【現地レポート第1話】「夢を追うドイツ遠征がスタート!」
【現地レポート第2話】「8万人超えのスタジアムで興奮のブンデスリーガ観戦」
【現地レポート第4話】「香川真司登場のサプライズに一同唖然…!」
【現地レポート第5話】「サッカーと向き合い、楽しんだドイツ遠征」
By 湊昂大