リーグ6連覇中のバイエルンは、今季も充実した戦力とともに新シーズンを迎えようとしている[写真]=Getty Images
面白味に欠けるリーグになった印象は否めない。欧州最多の動員数を誇るとはいえ、昨今のブンデスリーガには優勝争いが事実上存在しないからだ。昨シーズンに連覇の記録を「6」まで拡大し、最終的に2位シャルケに勝ち点21差をつけたバイエルンが強すぎるのだ。とはいえ、無敵というわけではない。昨シーズンはホッフェンハイム、ボルシアMG、ライプツィヒ、シュツットガルトの4クラブが、この絶対王者から白星を挙げている。現在のバイエルンに3冠を達成した2012-13シーズンほどの競争力はないだろう。
それでもバイエルン王朝が揺らがないのは、第二勢力のレベルが高まっていないからだ。昨シーズンの欧州戦線において、グループステージを突破したドイツ勢は1チームだけだった。そう、バイエルンしか勝ち抜けなかったのだ。チャンピオンズリーグ(CL)に臨んだドルトムントは格下のAPOEL(キプロス)に勝利できず、ライプツィヒは優勝候補不在のグループで3位に終わった。ホッフェンハイムはプレーオフでリヴァプールに敗れた後、ELのグループステージでやはり涙を飲んでいる。近年、ドイツのサッカー関係者たちは「4大リーグではなく、3大リーグ」と吹聴してきたが、いまやセリエAより格上と確信させるポジティブな材料は見当たらない。
今シーズンもほぼ間違いなく、バイエルンが圧倒的な強さを誇示するはずだ。いや、すでに誇示していると言ってもいい。なにしろDFLスーパーカップで昨季のDFBポカール覇者であるフランクフルトを5-0で蹴散らしたのだから。ロベルト・レヴァンドフスキキやトーマス・ミュラー、マッツ・フンメルスら6連覇に貢献した主軸が健在で、レオン・ゴレツカやセルジュ・ニャブリらドイツ代表の新鋭を加えたチームの戦力値は昨シーズンを上回っている。欧州最高峰のクラブでの実績に欠けるとはいえ、バイエルンを知り尽くすOBのニコ・コバチ新監督が舵取りを誤るとも考えにくく、早い段階で首位固めに入ってもなんら不思議はないだろう。
第二勢力の奮起とスモールクラブの“バイエルンいじめ”が鍵
王朝に終止符を打つには、アクセル・ヴィツェルという大物を迎え入れたドルトムントや中心選手の流出をベルント・レノ(現アーセナル)ただ一人に食い止めたレバークーゼンなど、第二勢力の奮起が欠かせない。期待値が高いのは、やはりドルトムントだ。ボルシアMGでの実績があり、前所属クラブのニースをCLに導いた智将、リュシアン・ファーブル監督が早い段階でチームを掌握できるかが鍵になる。また、8月31日までに補強ポイントのCFに優秀な人材を確保できるかも重要だ。
優勝争いの灯を早々と消してしまわないために、スモールクラブによる「バイエルンいじめ」にも期待したい。玉砕覚悟で自分たちのスタイルを貫くのではなく、ロシア・ワールドカップで中小国が列強相手に見せたような堅守速攻で王者を苦しめるチームがどれだけ出現するか。なりふり構わずに守りを固めるチームに、バイエルンが苦戦する傾向はDFBポカール1回戦でも確認できた。4部のドロホターゼン・アッセルから終盤までゴールを奪えず、81分に生まれたレバンドフスキの得点で辛うじて勝利を収めたのだ。
もちろん、ブンデスリーガに魅力がないわけではない。ホッフェンハイムのユリアン・ナーゲルスマンやシャルケのドメニコ・テデスコ、ブレーメンのフロリアン・コーフェルトら30代の青年監督が見せる采配、シーズン中にメキメキと頭角を現し、観る者を魅了する数多くのヤングプレーヤーたち、そして、久保裕也の新規参戦で計8人となった日本人プレーヤーたちのプレーなど、注目すべき事柄は少なくない。ただ、シーズン佳境の4~5月に、CL出場権争いや残留を巡るサバイバルが最大の見どころになるのはなんとも寂しいかぎり。バイエルンの連覇を阻むチームが現れずとも、1日でも長くタイトルレースが続くことを願うばかりだ。
文=遠藤孝輔