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【オリバー・カーン来日インタビュー】ブンデスリーガのレジェンドが語る自身とGKの未来

2018.12.04

ブンデスリーガのPRのため来日したカーン [写真]=兼子愼一郎

 表情豊かに身振り手振りを交えて話す姿は、現役時代の野性味のあるイメージとは少し違う。しかし、全身から湧き出るオーラと時折見せる鋭い眼光には現役当時と変わらない凄みが感じられた。引退から10年、ブンデスリーガのアンバサダーとして来日を果たしたサッカー界のレジェンド、オリバー・カーンに、日本のこと、GKのこと、そして自身の将来について話を聞いた。

──2002年のワールドカップ後も何度か日本を訪れているそうですね。日本の好きなものは何ですか?

日本に来るたびに思うのは食事の素晴らしさだ。ドイツ料理はどれも濃くて重めなので、軽くてヘルシーな日本の料理をいつも楽しみにしている。次の日の体調も違う気がするよ(笑)。また、2002年のW杯の時は皆が優しくて礼儀正しいことに感銘を受けた。日本にはたくさんの友人やファンがいるし、日本に戻って来られるのはいつもうれしいよ。

──日本に来て驚いたことは? ドイツとの一番の違いは何でしょう?

天気かな(笑)。雪が降っているミュンヘンと比べると暖かいよ。それから人だね。それがすべてだと思う。ドイツの人々はいつも忙しくしていて怖いほどだ。まるで心の平穏がないように常に急き立てられている。それに比べると、日本人はもう少しリラックスしていて落ち着いていると感じるよ。それから今回楽しみにしているのは試合観戦だ。Jリーグ王者(川崎フロンターレ)の試合だと聞いている。チームについては詳しく分からないが、スタジアムの雰囲気を見てみたい。ドイツとは違うはずだからね。

──2002年のW杯以降、日本でもあなたのファンは一気に増えました。日本のファンの印象はどうですか?

日本のファンはとても熱狂的だと思うが、他の国で見られるような強引に選手を追いかけ回すといったことはなく、常に尊敬の気持ちを持って礼儀正しく丁寧に接してくれる。2002年のW杯では「なぜ大舞台で素晴らしいプレーをできたのか?」と何度もメディアに聞かれたが、今思い返してみると、それは日本という国の快適さがあったからこそだと思う。何度も思い返すほど私にとっては印象的な経験だった。日本ではお互いをリスペクトしながら話をすることができるし、こういった価値観が日本の社会において非常に大きな役割を果たしていると感じる。

──今年はW杯がありました。ロシア大会での日本代表の戦いぶりはどうでしたか?

私はドイツで解説の仕事をしていた。ドイツ代表が早くに敗退してしまって当然がっかりしたが、日本が見せてくれたサッカーには本当に満足している。ベスト8に進出していてもおかしくなかったと思う。その道は不運な形でベルギーに閉ざされてしまったが、戦術的な成長を見せてくれたし、日本代表は一枚岩にまとまった競争力のあるチームだった。日本はコーチ陣が全員日本人だったよね? それはまさに私が問題提起していることだ。多くの代表チームは海外から監督を招聘し、コーチ陣にも他の国籍の人物を起用する。しかし、私は自国の監督を選び、コーチも自国のスタッフが務めることが重要だと考えている。選手のメンタリティをより理解できるからね。リードを生かせず敗れたのはショックだったが、同時に強豪国に勝つチャンスがあると分かったのではないかな。

──前回王者として臨んだドイツはまさかの結果に終わりました。早期敗退の原因は何だったのでしょう?

もちろん非常に多くの理由があるが、スポーツとしてシンプルに考えて突き詰めるならば、ゴールチャンスで決めきれず外しすぎたことだろう。データ統計的に各数値を見れば、今回のドイツ代表には優勝したブラジル大会の時よりも良い項目がいくつもあったと思う。しかし、ゴールを決めなければ勝つことはできない。チャンスの数に対してゴールの確率が低かったことが、敗退につながってしまったと言える。

──GKにとって必要なメンタリティ、能力とはどんなものでしょうか?

最も重要なのはミスを恐れないこと、またミスが起きてしまった時にそれに対応する集中力だ。今やGKは単にゴールを守るだけではなく、多くの能力が求められるポジションになった。「ゴールキーパー」ではなく「ゴールプレーヤー」なんだ。現代のGKにはゴールマウスを離れ、フィールドプレーヤーとして問題なくプレーできる足元の技術が不可欠だ。(マヌエル)ノイアーや(マルク・アンドレ)テア・シュテーゲンのようにね。

──GKはミスが失点に直結するポジションです。実際にミスをしてしまった時の対処法を教えてください。

すぐに目の前のゲームに戻って集中すべきだし、後ろを振り向かず次に向かっていくことが大事だ。ミスを引きずって「問題があった」と考えてはいけない。そのミスは「まだ大したことない」と受け入れることだ。

──あなたはクラブと代表で数々の成功を収めてきました。個人的には2000ー01シーズンのチャンピオンズリーグ決勝が強く印象に残っているのですが、ご自身で特に思い出に残っているのはどの試合ですか?

もちろん、君たちが思い描くような大きな成功の記憶もあるが、そうでない試合にも忘れられないものはある。例えば、バイエルン時代ではなくカールスルーエに所属していた時のUEFAカップ2回戦、バレンシアとの試合はよく覚えている。確か1993ー94シーズンだったかな。我々はアウェイでのファーストレグを1-3で落としてしまったんだが、ホームでのセカンドレグで7-0の大勝を収めて逆転した。あの時のスタジアムには本当の喜びと熱意を感じたよ。それが一番というわけではないが、あの喜びを忘れることはない。大きな成功だけでなく、そのような瞬間も素晴らしい思い出だ。

──最後にご自身の将来について聞かせてください。先日「バイエルンの次期会長に就任か」という報道がありましたが、今後クラブで働く可能性はありますか?

私はクラブのスタッフや指導者よりもサッカーに関わるビジネスに興味がある。今は自分が進めているプロジェクトが最優先で、それに集中して取り組んでいるよ。

インタビュー=国井洋之 写真=兼子愼一郎


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