ブンデスリーガのPRのため11月末に来日したカーン [写真]= 兼子愼一郎
ブンデスリーガの伝説的GKオリバー・カーンが11月末に来日し、11月30日(金)から12月2日(日)までの3日間にわたって様々なイベントに登場した。親日家でもあるカーンはブンデスリーガのアンバサダーとしてのPR活動に加え、日本のサッカーファンと交流を持つイベントにも積極的に参加。カーンが日本で過ごした濃密な3日間を振り返る。
■11月30日(金)
ツアー初日は東京・六本木で行われたメディア・ブリーフィングに登場。ブンデスリーガ中継でおなじみの西岡明彦アナウンサーとトークセッションを行い、日本との関わりやブンデスリーガの現状、自身のキャリアと今後について語った。
カーンはGKの現状について、「今日のGKは、GKではなくなった。もはや11人目のフィールドプレーヤーであり、テクニカルな面で大変な能力を求められる」と説明。“ゴールプレーヤー”というキーワードを用いてGKの役割の変化について主張した。また、新時代のGKとその指導者の育成のため自身が立ち上げた「Goalplay」というGK養成プログラムについても紹介。今後はブンデスリーガとタッグを組み、ドイツだけでなく世界中にこのプログラムを展開していく予定だという。
メディア・ブリーフィング後は各メディアの取材に応じたほか、ブンデスリーガを放送する『スカパー!』やブンデスリーガをスポンサードする『タグホイヤー』を訪問。サッカーキングの個別取材にも応じてくれた。
以下、トークセッションより一部抜粋。
──ブンデスリーガでプレーする日本人選手について
ブンデスリーガには現在7人の日本人選手がいて、2部にも数人の日本人選手がいる。日本のサッカーの質、トレーニングの質は間違いないと思う。日本人のメンタリティはドイツ人と似たところがたくさんあって、ドイツ人と同様に規律を守り、熱心にトレーニングに励む。ブンデスリーガはそれを美徳として重要視している。その上で、最終的に大事なのはクオリティだが、日本人選手はメンタル的にもフィジカル的にも、ヨーロッパで成功する可能性を備えていると思う。
──GKになったきっかけ
元々GKになるつもりはなかったが、祖父が誕生日にGKジャージをプレゼントしてくれた。5歳か6歳だった私は、祖父を失望させたくない一心でそのジャージを着ることにした。実はこのジャージはドイツの伝説的GKで、のちに私自身のコーチにもなるゼップ・マイヤーのものだった。そういうわけで私はGKになった。
──ドイツが優秀なGKを多く輩出している理由
ドイツには偉大な伝統があり、常に名選手がいた。1950年代に活躍したトニー・トゥレクに始まり、先ほど名前を挙げたゼップ・マイヤー、さらに「トニー」ことハラルト・シューマッハーがいて、若いGKにとっての素晴らしいロールモデルになってきた。GKというポジションはドイツ人の性質に合っていると思うし、ドイツには規律あるトレーニングもある。そういうわけでドイツにはこれまで優れたGKが出てきた。将来的にもそうあってほしい。
──自身の活動について
私は2015年、パートナーとともに『Goalplay』を設立した。ドイツ人GKの9割が、訓練されたGKコーチの指導を受けていないという現実を知ったのがビジネスを始めた理由だ。我々が目指すのは、より良い“ゴールプレーヤー”を育てるために選手およびその指導者を育成することだ。
■12月1日(土)
J1リーグ最終節が開催されたこの日は、J1王者・川崎フロンターレの試合を観戦するため等々力陸上競技場に来場。試合前には陸前高田市の復興支援の一環として行われた餅まきイベントにも緊急参戦した。赤いハッピ姿で登場したカーンは、詰めかけたファンに対し、日本語で「フロンターレ、オメデトウ!」と祝福。やぐらの上から餅やみかんを投げ、その後は自ら募金箱を抱えて支援を呼びかけた。
初のJリーグ観戦後は「サッカーショップKAMO渋谷店」に移動して、サイン&写真撮影会を開催。集まった約50名のファン一人ひとりと笑顔で記念撮影した。2002年の日韓ワールドカップ以来、カーンの大ファンだという男性は、「会うのはもちろん初めてです。引退して10年が経つのにやっぱりカーンさんは存在感が違いました」と感激しきりだった。
この日はKAMO渋谷店の地下1階にある『ESTADIO』(エスタディオ)でパブリックビューイングイベントも行われ、集まったブンデスリーガ公式ファンクラブのファンとともにブンデスリーガの「ブレーメン対バイエルン・ミュンヘン」などを生観戦した。
■12月2日(日)
ツアー最終日は日比谷の「MIYAMOTO FUTSAL PARK 日比谷シティ」でゴールキーパークリニックを実施。メディア・ブリーフィングでカーンが説明した「Goalplay」の理念の下、「Goalplay」所属のコーチ陣が参加した約20名の中高生を指導した。カーンは直接指導するシーンこそなかったものの、中高生たちのプレーを熱心に観察。「高いポテンシャルには驚いた。すごくレベルが高い。いろいろな地域でやってきたが好印象を持っている」と参加者たちを称賛した。
カーンは午後から行われた小学生フットサル大会の表彰式にも登場。参加者一人ひとりに直接記念品を手渡し、「大事なのは『Keep Going!』(前進し続ける)」と激励した。最後は参加者全員との記念撮影に収まり、子どもたちやその父兄に囲まれながら笑顔で会場を後にした。
By サッカーキング編集部
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