ELのフランクフルト対ベンフィカが行われたヴァルトシュタディオン [写真]=Getty Images
4月18日に行われたヨーロッパリーグ(EL)準々決勝セカンドレグで、MF長谷部誠が所属するフランクフルトはベンフィカ(ポルトガル)に2-0で勝利を収め、2試合合計4-4のアウェイゴール差により劇的突破を果たした。欧州カップ戦ではドイツ勢唯一の準決勝進出に、ドイツ国内でもこの勝利に盛り上がっている。
その一方で、世界中のネットメディアを“賑わせた”ファンがいる。ポルトガル人のアルバロ・オリヴェイラさんだ。彼は熱狂的なベンフィカファンで、同試合を観戦するためにリスボンから車でフランクフルトを目指し、友人と28時間をかけた長距離ドライブを敢行。その様子をインスタグラムで逐一報告していた。
2人は“フランクフルト”には到着したものの、そこは試合開催地であるドイツ南西部の大都市『フランクフルト・アム・マイン』ではなく、間違ってドイツ北東部のポーランドとの国境沿いにある小都市『フランクフルト・アン・デア・オーダー』にたどり着き、試合も観戦できず、やり場のない怒りを露にしていた。
悲劇的な“勘違い”は、ドイツ国内の主要メディアのみならず、各国の通信社やイギリス『BBC』のような信頼度の高いメディアまでもこぞって報道。当サイトも『BBC』の報道をもとに伝えていた。このニュースはすぐさま世界中を駆け巡り、まさに現代のネットメディアの様相を象徴する事態となっていた。
それから一夜明けた4月19日、ドイツのサッカーカルチャー誌『11フロインデ』が、アルバロさんの騒動は同誌による“作り話”だったと明かした。アルバロさんが実在しない人物であり、インスタグラムもフェイクアカウントであることをツイッターで明言。「我々は、あまりに急ぎ過ぎのオンラインジャーナリズムを、ちょっとだけからかってやろうと思った。まさに、狙い通りにうまく行った」。
インスタグラム上には、試合の2週間前からポルトガルのサッカーファンを連想させる写真とポルトガル語のコメントを投稿。さらにアルバロさん役を、俳優のマルセロ・ロドリゲスさんが務めていたというから、周到な準備による“作り話”だったようだ。
投稿の最後には、ドイツ語の『11フロインデ(11人の友人たち)』をポルトガル語に訳した『11アミーゴス』と記載された画像とともに、「数少ない信頼できる雑誌の一つ」とのコメントを掲載して種明かしを行い、最後まで独自のユーモアを貫いた。
https://www.instagram.com/p/Bwb06bKJyAZ/
同誌はツイッターで自戒も込めて、こう呼びかけている。「もし、これが自分たちが仕組んだことでなければ、我々も特に何も考えることなく、このことを記事にして取り上げていたことは明らかだ。今回のアルバロの一件は、我々のネットディアの仕事の進め方をじっくりと熟考する、良い機会となるだろう」
急速に普及したインターネットやSNSで簡単に情報が得られるようになった時代。影響力が高まり、より信頼が求められるネットメディアに対して、『11フロインデ』が警鐘を鳴らしている。
By サッカーキング編集部
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