ウニオン・ベルリンのホームスタジアムで取材に応じた遠藤渓太 [写真]=鈴木達朗
今夏にドイツ挑戦を決断したMF遠藤渓太は、12日に行われたヴュルツブルガー・キッカーズ(ドイツ2部)との練習試合で、初めてウニオン・ベルリンの一員としてプレーした。前半45分のみの出場ながら、左ウイングとしてスピードやドリブルなどの武器を生かしてしっかりとアピール。スイス人のウルス・フィッシャー監督も「持っているものを、見ることができた」と評価した。
試合から一夜明けた13日、遠藤はドイツで初めて日本メディアの取材に応じた。ホームスタジアムの『アルテ・フェルステライ』に姿を現した22歳の日本代表MFは、ドイツの首都ベルリンでの新生活や友好的なチームメイトなど、この2週間の実感を話した。
遠藤は7月31日にドイツ入りしたが、日本でのラストマッチで左太もも裏を負傷したため、すぐにチーム練習に合流はできなかった。8月4日から個別で練習を開始し、チーム練習に合流できたのは試合前日の8月11日だった。時間はかかったが、本人は「なるべく早く練習に参加して馴染みたかったけど、最初は遠くからどういう練習をするのかを見る良い時間になった」とポジティブに捉えていた。
チーム練習に合流するまでの間、サッカーだけに集中していたわけではない。チームに順応するために、すでにドイツ語も覚え始めている。「(覚えているのは)挨拶とか色とか、曜日とか。数字はまだちょっと……」と話しつつ、通訳の山森順平氏に確認する仕草も見せた。
「グーテン・モルゲン(おはよう)」のような基本的な挨拶はもちろん、「ビス・モルゲン(また明日)」といったチームメイトにかけるような言葉も、すでにスラスラと口にできている。練習試合後のフィッシャー監督も、地元メディアに向けて「溶け込もうと努力している。フレーズ程度のドイツ語は話せるようにもなった」と遠藤の様子を観察していることを伝えた。
そういった姿勢はチームメイトにも伝わっている。合宿先のホテルでは相部屋となったDFクリストファー・レンツをはじめ、MFグリシャ・プレメルやシュトゥットガルトで岡崎慎司や酒井高徳らと過ごしたこともあるベテランのMFクリスティアン・ゲントナーといった選手がサポートをしてくれているという。
「彼らがよくしてくれて、ご飯にも行きました。コーチは基本的にドイツ語で喋るので、それがわからないときがある。それを彼らがうまく英語に噛み砕いて、すごくわかりやすく教えてくれます。それこそ家探しとかも助けてくれました」。
レンツはベルリン生まれの25歳。昨季は左サイドバックやウイングバックを主戦場とし、評価が急上昇中の選手だ。比較的年齢も近く、ピッチ上でもコンビを組む可能性が高い2人を同部屋としたチームの配慮が見て取れる。遠藤がベルリンでの家探しに関して、「クラブが探してくれてたんですけど、若い選手の方がうまくやれたりする。『俺、調べるよ』みたいに」と話したように、さっそく同世代同士の感覚も共有しているようだ。
新天地での背番号は自身が慣れ親しんだ「18」を選んだ。「マリノスでプロ1、2年目で18番をつけさせてもらっていた。『何がいい?』と言われた時に、最初に思いついたのが18番でした」。ドイツでは、プロデビュー時と同じ背番号を背負い、欧州1年目というまた新たなスタートに挑む。
遠藤は、まだ「1日練習して、練習試合に1試合出ただけなので」と前置きした上で、自身の武器であるドリブルやサイドの仕掛けで違いを作りたいと意気込んでいる。「逆に自分から、その長所を取ってしまったら、何をしにこっちに来たのかわからなくなる。そこは何度でも挑戦できるようにしたい」と決意を示した。
ベルリンでの新生活やチームに馴染み始めている中で、8月15日には次の練習試合が控えている。ディナモ・ドレスデン(ドイツ3部)と対戦するこの試合でも、左サイドから果敢にチャンスに絡む背番号18の姿が見られるはずだ。
取材・文=鈴木達朗