トレーニングで再び負傷した宮市亮 [写真]=Getty Images
負傷離脱中の宮市亮が待望の復帰へ少しずつ前進している。昨シーズンの終盤にケガを負ってから約4カ月。離脱が長引いているが、現在は自身の体と向き合いながら、チーム練習への完全合流に近づいているところだ。
ブンデスリーガ2部開幕直前の9月18日、まだ復帰の目処は立っていなかったものの、クラブを通じた電話取材に応じた宮市の声は明るかった。「実際のところ、状態はもうだいぶ良くなっている。今はもう痛みもなくて、あとはチームに合流するだけです」
この夏はチーム練習と個別練習の行き来が続き、当初の見込みよりも負傷離脱が長引いている。「大元はひざのケガからくるバランスの崩れが大きいと思います」。昨シーズンの終盤に負ったひざのケガが原因で、内転筋やそけい部にまで影響が出たことで復帰が遅れているという。
昨シーズンの宮市は今の負傷離脱が想像できないほど絶好調だった。ブンデスリーガ2部の開幕から第28節まで全試合に出場し、最終的にはフィールドプレイヤーでチーム最多の29試合に出場。ザンクト・パウリの主力として確固たる地位を築いた。これまでキャリアを通じてケガに苦しんできたが、日々の体のケアや試合に向けたルーティーンを地道に積み重ねて復活を遂げていた。
だが、3月に感染が拡大した新型コロナウイルスの影響で状況は一変。リーグ戦は中断となり、チームでの練習は中止され、自宅でトレーニングに取り組む日々が続いて生活リズムも変わった。約2カ月の空白時間を経てリーグは再開したが、ウイルスによって様変わりした環境の中で過密日程も強いられた。
そんなイレギュラーな状況の中で、宮市は不運にも見舞われた。5月27日に行われた第28節のハイデンハイム戦で相手選手と衝突してひざを負傷。過去に前十字じん帯断裂という大ケガを負ったひざをまた痛めたことで、別の箇所にも影響を及ぼすこととなった。
「両ひざの前十字をやっているので、そいつがいつもいろんな問題を引き起こすというか。ハイデンハイム戦で衝突してひざを痛めて、その影響で内転筋にも痛みが出ていました。ずっと試合に出続けて、コロナで空いた期間もチームから渡されたトレーニングプランをずっとこなしていたけど、結構ハードだった。いろんな要因があって今のケガという形になっていると思います」
ひざのケガによって第29節で昨季初の欠場を余儀なくされた。第30節で一度復帰はできたものの、その後の4試合は欠場したままシーズン終了を迎えた。6月28日の最終節は事前に欠場が決まったため、治療とリハビリに専念するために試合の前に日本へ一時帰国。7月末にドイツへ戻ると、チームのプレシーズン開始よりも約2週間も前から、復活を期してオフ返上でリハビリを開始した。
その甲斐あってプレシーズン中に一時はチーム練習の一部に参加するまで回復した。順調に復帰へ近づいているかと思われたが、その後はチーム練習への合流を果たすことなく、再び個別練習に逆戻りしていた。なかなか完全復帰できない状況を受けて、ドイツ紙『ビルト』でさえも「リョウの謎」と困惑気味に報じていた。
この“謎”の離脱期間に何が起きていたのか。本人によると、順調に回復はしていたものの、夏のキャンプ中に今度はそけい部の痛みが発生したという。それにより、再び個別練習に戻ることとなった。「リハビリも順調で新しいシーズンに入ってもいけるだろうという感じだったんですけど、キャンプ中に痛みが出てきて。そこで無理してまた痛みが出るより、リスクを避けるために一度(チーム練習を)抜けて、今に至る感じです」
5月に負傷してから早くも4カ月が経った。ドイツの短い夏は終わり、すでに新シーズンも開幕した。宮市はまだ離脱が続いているが、そけい部の痛みはすでに回復し、復帰に向けて少しずつ前進している。本人の感覚に限って言えば、来週中にもチーム練習に合流できる状態だという。復帰時期は未定だが、「体次第ですが、次の数試合のうちに出場できたらな、という感じです」と期待を込めながら語った。
ただ、ティモ・シュルツ監督は慎重な姿勢を見せている。9月9日付けの『ビルト』紙によると、指揮官は「リョウはチームにとって非常に価値のある選手だ。だからこそ、できるだけ早く復帰してほしい」と宮市に期待を寄せている一方で、「もう3週間かけて完全に回復するなら、その方がいい。今は苦しくてもリスクを冒したくはない」と話している。
宮市も指揮官の姿勢を理解している。「監督は気にかけてくれますし、早く戻ってきて欲しいと言われています。だけど、監督もこのケガのことをわかっていて、そんなに無理をせず、しっかり治してから帰ってきて欲しいと言われています。なので、しっかり治して復帰したいですね」
まずは自分自身の体と相談しながら、チーム練習への完全合流を目指していく。「あとはチームに合流するだけ」と話したが、そのタイミングは未定で、日々の体の調子次第だという。宮市のケガは忍耐と慎重を要する。チーム練習に完全合流できても、当然ながら体との相談は続くため、すぐに試合に出場するのは難しいかもしれない。復帰へは着実に近づいているが、昨季のような笑顔の宮市が見られるのは、もう少し時間がかかりそうだ。
取材・文=湊昂大
By 湊昂大