今週末激突するバイエルンとドルトムント [写真]=Getty Images
今週末、ブンデスリーガは世紀の大一番を迎える。近年稀にみる混戦模様となったタイトルレースの命運を握る首位攻防戦が開かれるのだ。
長らくバイエルンの一強時代が続いてきたブンデスリーガだが、今シーズンはいつになく熾烈な優勝争いが繰り広げられている。25節を終えた時点で勝ち点「8」差の中に上位5チームがひしめき合っており、特に“トップ2”はデッドヒートを繰り広げている。
今シーズンも残り9試合という佳境に突入し、首位ドルトムントを2位バイエルンが1ポイント差で追っている。そんな両チームが4月1日(土)に激突するのだ。それでは、今季のマイスターシャーレの行方を占う大一番、バイエルン対ドルトムントによる“デア・クラシカー”をプレビューしよう。
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■最多対戦
1963年に始まったブンデスリーガにおいて、最も多くの対戦回数を誇るのはバイエルンとブレーメンの対戦カードで111回。だが、カップ戦を含めた全公式戦の対戦を見ると、ドイツ国内で最も頻繁に行われている対戦カードはバイエルンとドルトムントによる“デア・クラシカー”で今回が133戦目(ブンデスリーガに限ると108戦目)。
国内カップ戦やチャンピオンズリーグなどでの対戦も含め、過去132戦の結果はバイエルンの「65勝35分32敗」。やはりバイエルンが約2倍の勝利数を収めているわけだが、この32敗(PK戦を含めると34敗)というのはバイエルンにとって過去59年間の対戦カードの中で最多黒星だという。バイエルンが最も負けている相手がドルトムントなのだ。同じく、ドルトムントにとっても65敗(PK戦を含めると67敗)は過去最多の敗戦数。そう考えると、“デア・クラシカー”は“天敵同士”の対戦と呼ぶことができるだろう。
ちなみに、近年の対戦成績を見るとバイエルンが圧倒している。2019年8月のDFLスーパーカップでドルトムントが2-0の勝利を収めて以降は、バイエルンが8勝1分0敗。昨シーズンの対戦もバイエルンがホーム&アウェイで勝利。第31節の対戦では、FWロベルト・レヴァンドフスキのゴールなどで3-1の勝利を収めたバイエルンがリーグ10連覇を達成。“デア・クラシカー”で優勝が決定するのは史上初のことだった。
今季最初の対戦となった10月の第9節では、アウェイのバイエルンが2点のリードを奪うも、74分にFWユスファ・ムココのゴールで1点を返したドルトムントが、後半追加タイム5分にFWアントニー・モデストのヘディングシュートで追いつき劇的なドロー決着。ドルトムントがバイエルン戦の連敗を8でストップさせることになった。
■13季ぶりに“レヴァンドフスキ不在”
ドラマチックな結末を迎えた第9節の対戦は、13年ぶりにポーランド代表FWロベルト・レヴァンドフスキ(34歳)が不在の“デア・クラシカー”だった! 世界屈指のストライカーは、2010年の夏にレフ・ポズナンからドルトムントに加入し、ドイツでゴールを量産し始めて、同クラブで公式戦187試合に出場して103ゴール。そして2014年夏にバイエルンへ移籍してからは公式戦375試合で344ゴールという驚異的な数字を残した。
実は、レヴァンドフスキは2010年夏にドルトムントに加入して以降、一度も“デア・クラシカー”を欠場したことがなかったのだ! 2010-11シーズンから昨シーズンまでの過去12シーズン、彼は一度も休むことなく40戦連続で“デア・クラシカー”に出場し続けてきた。しかし、昨夏バルセロナへと移籍したため今季のダービーには不在。第9節の対戦では、13シーズンぶり、41試合ぶりにレヴァンドフスキ不在の“デア・クラシカー”となったのだ。
当然、昨夏ドルトムントからマンチェスター・Cに移籍したノルウェー代表FWアーリング・ハーランド(22歳)も不在だった。ハーランドは、ドルトムント時代に“デア・クラシカー”に7回出場して5ゴールをマーク。素晴らしい数字を残したが、実は7試合とも敗れており、一度も勝利を味わえなかったのだ。しかしドルトムントは、ハーランド退団後の最初の対戦でバイエルン戦の連敗をストップさせており、両エースの退団により“デア・クラシカー”の“運気”が変わったのかもしれない…。
■天王山は首位が有利
今回、2位バイエルンが首位ドルトムントを本拠地に迎えるわけだが、データ会社『Opta』によると今季ブンデスリーガで1位と2位のチームが対戦するのは3度目のこと。第4節のバイエルン1-1ボルシアMG、第5節のウニオン・ベルリン1-1バイエルンも首位攻防戦だった。当時、首位に立っていたバイエルンは2試合とも引き分けたことで首位から陥落するのだが、やはり首位攻防戦は「首位チーム」が有利だという。
ブンデスリーガでの過去13回の首位攻防戦において、首位チームは2位を相手に「7勝5分1敗」の成績を残しているという。唯一の敗戦が2020年12月のレヴァークーゼンだ。彼らは2位のバイエルンをホームに迎えた首位攻防戦で、93分にレヴァンドフスキに決勝点を許して1-2の逆転負け。そこで首位が入れ替わり、バイエルンに優勝を譲ることになった。
ということは、過去13度の首位攻防戦で1位と2位が入れ替わったのは1度しかないのだ!
■初陣が“デア・クラシカー”
代表ウィークに監督交代に踏み切った王者バイエルンは、新体制の初陣が“デア・クラシカー”となる。今季ここまで公式戦でわずか3敗ながらブンデスリーガで首位の座を明け渡したバイエルンは、3月24日にユリアン・ナーゲルスマン監督を解任。そして主力選手との確執が噂された青年監督に代わりに、元ドルトムントのトーマス・トゥヘル監督を招へいした。
「初陣がドルトムント戦だなんて、これ以上のチャレンジはない」と古巣との一戦に燃えるトゥヘル新監督は、これまでマインツ、ドルトムント、パリ・サンジェルマン、チェルシーを率いて見事な結果を残してきた。とりわけチェルシー時代には就任からわずか4カ月でチャンピオンズリーグを制しており、チーム再建能力には定評があるため、揺らいだ王者をすぐに立て直すのかもしれない。
いずれにせよ、ドルトムントを率いる敵将エディン・テルジッチとは初めての対戦になる。そんな両監督の共通点と言えば、選手時代に無名だったこと。シュトゥットガルト・キッカーズ時代にブンデスリーガ2部で8試合に出場したトゥヘルだが、その後はさらに下のリーグでプレーし、ケガのため24歳で現役を退いた。対するテルジッチは主に4部リーグで現役時代を過ごし、大学でスポーツサイエンスを学んだあと、スカウトとしてセカンドキャリアをスタートさせた。
その両監督がブンデスリーガの頂きを目指してぶつかることになるのだ。実績ではトゥヘルに分があるが、ドルトムント時代の成績を見ると瓜二つ。トゥヘルはドルトムント時代にリーグ戦68試合で「平均2.09ポイント」(勝率62%)というクラブ歴代最高成績を誇る。対するテルジッチも48試合で平均2.04ポイント(勝率65%)とトゥヘルに肉薄しているのだ。
果たして、彼らの初対戦はどちらに軍配が上がるのか、今週末の“デア・クラシカー”に注目したい!
(記事/Footmedia)
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