インテルが約46億円をつぎ込んで獲得したJ・マリオ(左) [写真]=Inter via Getty Images
メルカート(移籍市場)終了間際の駆け込み移籍も終わり、各クラブがシーズン前半を戦っていく戦力が整った。今回はビッグクラブを中心に、セリエAのメルカート戦略の成績を分析してみようと思う。
まず誰の目にも明らかなのが、序盤からコツコツと確実に狙った選手を確保していったユヴェントスの計画性の確かさだ。昨夏も史上最高額の移籍金でユヴェントスを離れるという情報が飛び交ったフランス代表MFポール・ポグバ。ユーロ2016フランス大会終了後、より具体性を帯びていたマンチェスター・U復帰を諦念してか、メルカート解禁早々にローマからボスニア・ヘルツェゴヴィナ代表MFミラレム・ピアニッチを獲得した。チャンピオンズリーグを勝ち抜くには、ポグバとレアル・マドリードへ復帰したスペイン代表FWアルバロ・モラタの穴をも埋めなければならなかった。しかし、ユヴェントスは昨シーズンのセリエA得点王のFWゴンサロ・イグアインをナポリから引き抜くことに成功。イグアインはデビュー戦で早々にゴールを決めるなど、早くも相乗効果を見せている。またチェルシーのコロンビア代表MFフアン・クアドラードを引き続きレンタルでキープ。バルセロナからはブラジル代表DFダニエウ・アウヴェスも加わり、中盤、最終ラインに厚みができた。これだけの”売買”で収支は2350万ユーロ(※=約27億1000万円)とプラス額だ。
一方、この夏のメルカートで大金を投資し、大博打に出たのが中国人資本が加わったインテルだ。まずはゲームメイクができるアルゼンチン代表MFエベル・バネガをフリーでセビージャから獲得し、早い段階からチーム造りを実行した。そして8月に入ってから、運動量のあるイタリア代表MFアントニオ・カンドレーヴァを投入。ワンダ・ナラ夫人が必死で駆けずり回り移籍先を探したFWマウロ・イカルディも結果的にはチームに残った。一方で移籍を希望していたクロアチア代表MFマルセロ・ブロゾヴィッチ、そしてDFダヴィデ・サントン、モンテネグロ代表FWステヴァン・ヨヴェティッチらも残留。放出しようとしていたプレーヤーたちを譲渡できなかった。カンドレーヴァ(※2200万ユーロ=約25億4000万円)とポルトガル代表MFジョアン・マリオ(※4000万ユーロ=約46億2000万円)の移籍金が響き、終始はマイナス1億2900万ユーロ(※=約148億9000万円)という大赤字だ。この投資をフランク・デ・ブール監督がどう生かしていくのか。まだ2試合のみしか指揮していないため、今のところは何とも言えないのだが……。
完全にメルカート戦略で出遅れたミランは、ヴィンチェンツォ・モンテッラ監督の鶴の一声で引き寄せた中盤のオールマイティー・プレーヤー、チリ代表MFマティアス・フェルナンデスを締め切りギリギリで獲得したのが大きい。カリアリ移籍が決定的となっていた中での“逆転ゴール”だったのだから、同監督のフィオレンティーナ時代の功績だろう。ナポリもポーランド代表FWアルカディウシュ・ミリクやイタリア代表MFエマヌエレ・ジャッケリーニを補強し、イグアイン退団後も攻撃力を低下させないよう務めた。
果たして移籍を果たした選手たちがそれぞれのクラブで輝きを放つのか。まずはシーズン序盤の動向を注目したい。
※数字は全てイタリア紙『ガゼッタ・デッロ・スポルト』調べ。
文=赤星敬子