2016-17シーズンのセリエAを総括 [写真]=Getty Images
2016-17シーズンのセリエAで最も成功したのは、やはり史上初の6連覇を達成したユヴェントスだろう。王者の名にふさわしい戦いぶりで、イタリアサッカー史に残る大偉業を成し遂げた。攻撃面ではゴンサロ・イグアインが加わったことでさらに得点力が上がり、守備面ではまだまだ現役のジャンルイジ・ブッフォンや“BBC”ことレオナルド・ボヌッチ、アンドレア・バルザーリ、ジョルジョ・キエッリーニも健在だった。
ローマの“バンディエラ”トッティの退団もビッグニュースとなった。25年間、同じ色のユニフォームを着続けた伝説のプレーヤーが、ついにそのユニフォームを脱ぐ日が訪れてしまった。
また、ユヴェントスに負けず劣らず成功のシーズンを送ったのが、アタランタだ。クラブ史の最高順位を更新し、4位でフィニッシュ。初のヨーロッパカップ戦出場権を獲得した。
そのほか、トリノのアンドレア・ベロッティがゴールを量産し、26得点と一躍セリエAを代表するストライカーとなった。ガッロ(めんどり)の愛称で、頭の上でとさかに見立てた手をひらひらさせるゴールパフォーマンスはおなじみとなった。そして下位では、セリエA1年目のクロトーネが最終節でドラマチックな残留決定を果たしたのも印象的だった。
■11位:カリアリ(80点)
昨シーズン、11年ぶりにセリエBでの戦いを強いられたカリアリは、リーグ最多得点を記録するなど、強さを発揮して1年でのセリエA復帰を決めた。そして迎えた今シーズン、目標であった残留をしっかりと果たした点は評価すべきだろう。
マッシモ・ラステッリ監督体制2年目となる今シーズンは、第2節でローマと2-2の打ち合いを演じたかと思えば、第5節ではユヴェントスに4失点で完敗。その後も、インテルを2-1で破った一方、フィオレンティーナやナポリに5失点を喫するなど、不安定な1年だった。
総得点が全体の11位となる「55」と順位相応だったのに対し、総失点がワースト3位の「76」、無失点試合はわずかに「4」と、攻撃的なサッカーがセリエAでも通用することを示した一方、守備面の脆さが浮き彫りとなった。
それでも、これだけ失点しながら攻撃的サッカーを貫いての11位フィニッシュは、成功のシーズンと言える結果だ。来シーズンは守備面を改善することができれば、さらに上位を狙うことができるかもしれない。
■12位:サッスオーロ(70点)
昨シーズン6位と大躍進を果たし、クラブ史上初のEL出場権を獲得したサッスオーロ。“二足のわらじ”で挑んだ今シーズンは、やや不完全燃焼に終わる結果となった。
ELではグループステージ初戦でアスレティック・ビルバオを3-0と撃破し、昨シーズンの勢いそのままに決勝トーナメント進出を果たすのではないかと期待された。だが、欧州の舞台はそんなに甘いのもではなく、その後は2分け3敗と白星を挙げることができず、最下位で大会を去ることとなった。
一方、リーグ戦ではELと並行して戦った前半戦はやはり苦戦を強いられ、5勝3分け11敗の16位で折り返した。それでも、リーグ戦1本となってからは調子を上げ、後半戦は8勝4分け6敗と数字を取り戻し、12位でフィニッシュ。昨年と比べれば満足のいく順位ではないものの、限られた戦力の中で2つのコンペティションを戦った上での結果としては、合格点といえるだろう。
来シーズンは再び欧州カップ戦出場権を目指したいところだが、ローマがエウゼビオ・ディ・フランチェスコ監督の引き抜きを画策しているというニュースが飛び交っている。クラブ史上初のセリエA昇格やEL出場といった躍進の立役者となった指揮官が去ることとなれば、後任探しに苦労するだろう。
■13位:ウディネーゼ(70点)
1995年のセリエA昇格以降、上位争いを演じてきた“プロヴィンチャの雄”だが、ここ数シーズンは下位に低迷。アントニオ・ディ・ナターレが去り、転換期を迎えたクラブは、MFロドリゴ・デ・パウルやMFセコ・フォファナら有望な若手をスカッドに加え、今シーズンに臨んだ。
しかし、開幕からの7戦で2勝とスタートダッシュに失敗すると、ジュゼッペ・イアキーニ監督を解任。地元出身のルイジ・デルネーリ氏に再建を託した。
新指揮官はデ・パウルをトップ下からウイングへと変更する「4-3-3」のシステムを採用すると、堅調に勝ち点を積み上げ、13位でシーズンを終えた。クラブは最終節のインテル戦終了後にデルネーリ監督との1年間の契約延長を発表。来シーズンは継続路線で上位進出を狙う。
■14位:キエーヴォ(60点)
ロランド・マラン監督の下、昨シーズンは9位の成績を残し、下馬評を覆す躍進を遂げた。今シーズンは、大きな補強もなく、マラン体制を継続。組織的に構築された守備とヴァルテル・ビルサを中心としたスピーディーな攻撃で、序盤戦は昨シーズンに続き好成績を収めた。
しかし、シーズン後半には堅守が崩壊し、失点数が増加。右肩下がりに順位を落とし、最終的には14位でシーズンを終えた。マラン監督はベテラン選手を中心に据えて、システムを構築してきたが、シーズン終盤にはその脆さが浮き彫りになった。セルジオ・ペリッシエルなどいぶし銀の活躍を見せるベテラン選手もいるものの、高齢化が特に目立つ最終ラインには、テコ入れの必要性が垣間見えた。
■15位:ボローニャ(55点)
昇格1年目の昨シーズンは、苦しみながらもシーズン途中に就任したロベルト・ドナドーニ監督のもと、残留を勝ち取った。すると、今シーズン序盤はホーム開幕3連勝を飾るなど、第5節終了時には7位につける好スタートを切った。
ただ、得意のホームで4勝2分け3敗と好成績を残した一方、アウェイでは7試合白星なしと苦戦が続いたこともあり、前半戦は15位で折り返すことに。後半戦でも苦手のアウェイで1勝しか挙げることができず、このまま15位でフィニッシュすることとなった。
29試合11ゴールと奮闘したマッティア・デストロの活躍もあり、1度も降格圏に沈むことなく残留を決めた点は評価に値するが、最終的に昨シーズンの順位(14位)を下回ってしまったのは残念だった。来シーズンはアウェイでの成績を向上させることができれば更に上を目指せるだろう。また、今シーズンは上位陣との対戦にことごとく敗れただけに、新シーズンはいくつかのジャイアントキリングにも期待したいところだ。
■16位:ジェノア(50点)
名門チームはイヴァン・ユリッチ監督のセリエA一年目の難しさを表していた。プレーヤーとしての経歴がこの古豪チームで際立った同監督を、エンリコ・プレツィオージ会長が迎えた。まだまだ指導歴は浅いがクロトーネをセリエBから昇格させた手腕を買ってのものだ。ここ数年、中位で可もなく不可もなかったチームの今シーズンを、会長はユリッチ監督の才能に賭けた。
前半戦こそ第10節でミランに3-0、第14節でユヴェントスに3-1とビッグクラブを破る飛躍を見せた。しかし第17節でパレルモに3-4と競り負けてからチームは低迷。第16節でペスカーラに0-5で負けたところで、ついにユリッチ監督はクビになった。チームは16位まで落ちていた。
しかし、後を引き継いだアンドレア・マンドリーニ氏も第26節からの6試合で勝ったのは第27節のエンポリ戦だけで、1勝1分け4敗と悲惨なもの。テコ入れに失敗したクラブはまたもやユリッチ監督を呼び戻した。復帰戦の第32節ではラツィオとドローを演じたがそのまま浮上することはなく、第37節のトリノ戦に2-1競り勝ち、残留を決めるのがやっとだった。ゴラン・パンデフ、ニコラス・ブルディッソなどビッグクラブに所属した選手もいながら、その経験を生かせなかった。会長はクラブ売却の意思を示している。
■17位:クロトーネ(85点)
まさにミラクルだった。前半19試合で勝ち点わずか9。最下位でくすぶっていたこのチームが、粘り強くあきらめず「セリエA残留」という大きな仕事をやってのけた。最終節で残留をかけて一騎打ちとなったエンポリとは、第20節の時点で勝ち点9差。第21節にはジェノアと引き分けたが、エンポリがウディネーゼに勝ったため、ポイント差は11とさらに広まった。上昇のきっかけとなったのは第30節のキエーヴォ戦だった。エンポリが8連敗しているのに対し、クロトーネは大きな1勝を挙げたのだ。そして続くインテル戦でもホームで勝ち点3をものにした。ここでエンポリとの勝ち点差はわずか3に。最終節では、エンポリは降格が決まっていたパレルモに負けたが、クロトーネは強敵ラツィオを破って奇跡を起こした。
勝ち点34のうち、後半19試合で稼いだのが25ポイントというからすごい。また、第30節以降のラスト9試合での勝ち点の合計は20と、全体の3位にランキングされた。1位のナポリが23、2位ローマが22と、その勢いがどれだけ大きかったかがわかる数字だ。初のセリエAで、何としてでも残留したいという執念が奇跡を起こした。ユリッチ前監督から引き継いだ「3-4-3」から「4-2-3-1」、そして「4-4-2」と変えていくことでチームが成長した。この足跡は選手、監督、関係者の自信となり、決して忘れることのできない経験となった。
■18:エンポリ(40点)
この20年間でセリエAに4回昇格している。しかし裏を返せばそれだけ降格しているということで、またもやBへ逆戻りとなった。前半19試合を終えた時点では勝ち点18で、パレルモ(10)、ペスカーラ(9)、クロトーネ(9)に比べると事態はそこまで深刻ではない、と見られていたはず。そこからシーズン終盤に向けて、急降下してしまったのはなぜか。
第22節のクロトーネ戦では直接対決で敗戦。そして第24節のインテル戦から7連敗を喫してしまう。確かにラツィオ、ユヴェントス、ナポリ、ローマとビッグクラブが続き苦しんだのだろうが、ジョヴァンニ・マルトゥシェッロ監督はチームを立て直すことができなかった。またシーズン最後の3試合、カリアリ、アタランタ、そしてパレルモから勝ち点が奪えず、最悪のジ・エンドとなった。
今シーズン獲得したアルベルト・ジラルディーノが以前のようなレベルの高いプレーかできなかったことと、1月に“至宝”リッカルド・サポナーラをフィオレンティーナにレンタル移籍で放出してしまった点が悔やまれる。
■19位:パレルモ(30点)
ついにシチリア島からセリエAのクラブが消滅した。パレルモがセリエB降格になったのは、マウリツィオ・ザンパリーニ元会長に端を発するお家騒動がいくらか関係しているはずだ。イタリアには「金を出すが口も出す」タイプの会長が多く、ザンパリーニ会長はまた、シーズン中の監督交代を頻繁に行う人物で知られている。2016-17シーズンも開幕時のジュゼッペ・イアキーニ氏に始まって、暫定を合わせると10人近くがベンチに座っては去っていった。
そしてついに会長自らがクラブから離れるときたから、ますます情勢は不安定になるばかり。しかもクラブを引き継いだのは元タレントでイタリア系アメリカ人で投資家のポール・バカグリーニ氏。体中にタトゥーが入った人物だ。アメリカ式のビジネスでクラブを立て直すというが、どうなることか。
第8節のトリノ戦から第16節のキエーヴォ戦までの9連敗、そして第24節のアタランタ戦から第33節のラツィオ戦まで9試合白星なしと悪いデータばかりが目立ってしまった。
■20位:ペスカーラ(40点)
失点81というのが多すぎた。得失点差は-44と、チームの苦悩がうかがえる。スコアも第23節でラツィオに2-6、第24節ではトリノに5-3、第33節ではローマに1-4と大量失点のゲームが全く珍しくないほど、守備面での緩さが目立った。ダニエレ・セバスティーニ会長からの信頼も厚かったマッシモ・オッド監督もなかなか勝利を挙げられず、第24節トリノ戦の敗戦の後、チームを去った。
そこへ呼び戻されたのが老将ズデネク・ゼマンだった。2011-12シーズンにたった1年でチームをセリエB優勝に導き、インシーニェ、インモービレ、マルコ・ヴェラッティなどイタリア代表を育てた名監督だ。2月には会長の車に火をつけるなど暴挙に出ていたサポーターの期待は高まった。そして復帰第一戦、2月19日のジェノア戦ではアウェイで5-0と大勝し、ゼマン・マジックにさらなる期待がかかった。だがそれも長くは続かず5試合を残した第33節で、降格が決まってしまった。シーズンの成績は3勝9分け26敗だった。
会長は2月の放火事件の後、「シーズン後にクラブを手放す」と疲れた様子でコメントしていた。