今夏サンプドリアから加入したシック [写真]=Getty Images
ユヴェントスが夏のメルカートで真っ先に獲得したのは、意外とも言える“隠し玉”だった。サンプドリアのFWパトリック・シックだ。ポーランドで開かれているU-21欧州選手権にチェコ代表の一員として参加していたが22日、突然トリノにユーヴェが用意したプライベートジェットで表れ、メディカルチェックなどを行った。完全に全ての身体テストなどが終わったわけでなく、正式契約は改めてとなるという。しかし、これまでメルカートでは昨夏のゴンサロ・イグアインなどのように大物を真っ先に獲得していたため、意外な展開だった。サンプドリアとの交渉は移籍金+ユーヴェの若手選手となるようだ。
さて、それではシックとはどんな選手だろうか。ちょうど1年前の7月にサンプドリア入りしたシックは21歳。186cmの大型レフティストライカーだ。スパルタ・プラハの下部組織などを経て、チェコの各世代の代表で順調に育ち、セリエAデビューとなった。イタリアのサッカーにもそこまで戸惑うことなく、32試合出場11得点の2桁ゴールを叩き出した。コッパ・イタリアでも2得点と順調なスタートを切った。
スパルタ・プラハのU-19の監督だったダヴィッド・ホロウベックは、次のように印象を語った。「私がここでは見たことがないくらいの才能あふれるプレーヤーだった。思い出したのはティエリ・アンリ。すでに完成していて、左足ではできるだけ少ない回数のボールタッチだけで自由に操り、攻撃を仕掛けていけた」。17歳の時は全くディフェンスをしようとしなかったシック。だがユーヴェというビッグクラブへの切符を手にした。「自分を信じて継続していけば、スーパースターになる夢は叶う。そう、時々は私のことを思い出してほしいな」と未来の可能性を秘めたシックを思いやった。
そしてシックにとっても心強いのは、ユーヴェの幹部に同じ国の大先輩でもあるパヴェル・ネドヴェド氏がいることだ。チェコのサッカー史に名を残しているネドヴェドの存在は大きい。サンプドリアでは背番号14を着けていたシック。ユーヴェの14番は空いていないため、場合によってはネドヴェドが着けていた11番を背負うかもしれない。ユーヴェでの大きな冒険を始めるシックに期待が集まる。
文=赤星敬子