60年ぶりにW杯出場を逃した [写真]=Getty Images
厳しい言葉が監督記者会見の席で飛んだ。2018 FIFAワールドカップ ロシア・欧州予選プレーオフのセカンドレグ、イタリア代表対スウェーデン代表はスコアレスドローに終わり、2戦合計0-1でイタリアの予選敗退が決定。試合終了から1時間半以上も経ってから会見場に表れたジャンピエロ・ヴェントゥーラ監督に対して、「監督としての責任は?」「予選を通過できなかった最大の過ちは何だったのか?」「この“破産状態”について、イタリア国民に対して謝罪の意はあるか?」などと厳しい言葉が飛んだ。それものはず。この会見場にいたイタリア人メディアほぼ全員が1958年のW杯スウェーデン大会に出場できなかったアッズーリを知らない。60年ぶりの歴史的な夜となったためだ。
この日のサン・シーロは7万2,696人のサポーターで超満員だった。誰もが奇跡の突破を信じ、本大会出場決定の歓喜の瞬間を分け合おうという期待に満ち溢れていた。キックオフ前のイタリア国歌ではスタジアム中が大合唱。この日がイタリア代表として最後の可能性があるGKジャンルイジ・ブッフォンにとっても計り知れない重い意味を持つ一戦だった。
イタリアはフィジカルに優れるスウェーデンの堅い守りに悩まされる。フォーメーションは3-5-2のまま、プレーオフ第1戦からは出場停止のマルコ・ヴェッラッティ、アンドレア・ベロッティとダニエレ・デ・ロッシに代えて、ジョルジーニョ、アレッサンドロ・フロレンツィ、そして前線にはマノロ・ガッビアディーニをスタメンに組み込んだ。確かにジョルジーニョは数回のクロス、そしてシュートもあり、53分にはフロレンツィがマッテオ・ダルミアンからのクロスをジャンプしながらゴールを狙い飛び込んでいく場面も見られた。特に後半はイタリアが攻めに攻めていたものの、ゴールが遠い。イタリアのメディアは3度のPKが与えられていたはずだったと報じている。9分にエリア内でマルコ・パローロがルドヴィグ・アウグスティンションにファールを受けたなどの場面だ。
予選敗退という結末に終わり、イタリアサッカー史における最悪の汚点となった。原因を数え上げればキリがない。2006年のW杯ドイツ大会をピークに、イタリアサッカー界は下降の一途を辿っている。ヴェントゥーラ監督に代表チームを一任したイタリアサッカー協会の責任も問われるべきだ。ブッフォンを筆頭とした主力が“高年齢化”し、チームは世代交代にも失敗。一貫性のない選手の起用方法にも疑問が残る。ラツィオであれだけのゴールラッシュを見せているチーロ・インモービレ、成長株のアンドレア・ベロッティらを擁する攻撃陣をうまく生かしきれず。30代に突入したBBC(アンドレア・バルザーリ、レオナルド・ボヌッチ、ジョルジョ・キエッリーニ)に代わる、守備の核となり得る選手の見極めもできなかった。なお、バルザーリ、デ・ロッシ、キエッリーニらは代表引退の可能性が高いと報じられている。
まずは新しい指導者のもと、1日も早く新体制の準備に取り掛からなければならない。W杯出場を逃した今、UEFA EURO 2020の出場権獲得が先決のミッションだ。予選が始まる2019年3月まであと1年半もない。ベテランと若手の入れ替えは必須であり、大掛かりな改革が必要になってくる。イタリアメディア『ガゼッタ・デロ・スポルト』が実施した「次の代表監督は誰がふさわしいか?」というアンケート調査では、カルロ・アンチェロッティ氏が断トツで67.3パーセント、現在はチェルシーを指揮する元代表監督のアントニオ・コンテ氏が22.6パーセントだった。
隣国フランスは1994年にW杯アメリカ大会の出場を逃し、大批判を浴びた。しかしながら、98年にはジネディーヌ・ジダンの登場などもあり、自国開催のW杯で栄冠を勝ち取った。今回、地獄を味わったアッズーリには徹底的な改革と変化が必要である。昔のイタリアサッカーのブランドも実力もすでに崩壊した。このままではヨーロッパ、そして世界から取り残されるばかりだ。この屈辱をバネに再出発できるかどうかが、イタリアサッカー界の運命を左右するだろう。
文=赤星敬子
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