ユヴェントスの新星、モイーズ・キーン [写真]=Getty Images
イタリアで人種差別は根深い社会問題だ。セリエAの試合において、人種差別コールが起こるたびに幾度となく議論がされてきたが、一向に解決策を見出すことができていない。「即刻試合を中止すべきだ」、「一部のならず者のために、それ以外の人々が被害を受けるのはいかがなものか」。議論は平行線をたどったままだ。
ユヴェントスの新星、モイーズ・キーンもピッチの上で不当な人種差別コールを受けた一人だ。4月2日に開催されたセリエA第30節、カリアリ戦で相手サポーターから人種差別を受けていたキーンは、1-0で迎えた85分にロドリゴ・ベンタンクールからのクロスを流し込むと、両手を広げてゴール裏に陣取るカリアリ・サポーターの方を向くゴールパフォーマンスを披露。これが挑発行為とみなされ、相手サポーターの怒りを買った。
キーンの行為には批判も及んだ。チームメイトのレオナルド・ボヌッチは「キーンも対応を誤った。非はキーンとサポーターの双方に半分ずつある」と若きアタッカーを非難した。キーンは今シーズン10試合の出場ながら6得点を挙げているが、まだ19歳の少年。自らの存在価値を否定されたような差別を受けることに反発するなというのも酷なことだ。非難されるべきは当然、人種差別コールを浴びせていた一部の心ないサポーターであるべきでないか。
今シーズン、一躍イタリア全土の注目を浴びることとなったキーンは、コートジボワールの両親を持つ移民の子だが、れっきとしたイタリア人だ。トリノから70キロほどにある、イタリア北部のピエモンテ州、ヴェルチェッリで生を受け、5歳の時に移り住んだ近郊のアスティでイタリア教育を受けてきた。そこでは、パオロ・マルディーニやバレージ兄弟をはじめとする多くのイタリア人選手と同じように、オラトーリオというカトリック教会に隣接した児童集会所で、サッカーに明け暮れていた。
キーンが通ったオラトーリオ『ドン・ボスコ』のロベルト・パスクエーロ司祭が当時を物語る。
「(7人用サッカーのアスファルト・コートの上で)擦り傷をたくさん作っていましたが、気にはしていなかったですね。すぐに立ち上がり、プレーに戻っていましたよ。毎週日曜日になると、このコートで“ワールドカップ”が行われていました。10年前からすでにアスティは多国籍な町で、アルバニア人、ルーマニア人、ペルー人、北アフリカ人といった外国人が多くいました。モイーズはイタリア人たちと一緒のチームでプレーしていましたよ」
やがて、兄のジョヴァンニ(現在U-23ユヴェントスに所属)がアスティ・カルチョの下部組織に入団。だが、クラブ関係者の目に止まったのは、ジョヴァンニではなく、連れ添っていたモイーズだった。下部組織責任者のレナート・ビアージは「メイングラウンドの脇の小さなグラウンドでモイーズがプレーしていました。7、8歳だったと思います。その年代の子どもにしては、普通ではない蹴り方と動きをしていたのです。10歳以下は入団できなかったのですが、2歳上のカテゴリーでプレーできるようにしました。それでも1試合で4得点はしていましたよ」と当時から規格外であったことを明かしている。
「アスティ・カルチョにいさせることにもはや意味がなかったんです。私はトリノFCの友人、シルヴァーノ・ベネデッティに連絡しました。『もの凄い子どもがいる』ってね。入団テストを受けて、すぐに採用が決まりました」。こうして、2007年に強豪クラブでの人生がスタートとなるが、その3年後には世界的な名門クラブに籍を移すこととなる。ユーヴェ移籍を進めたのは、キーン兄弟の叔父でもあり、ユヴェントス下部組織に在籍経験を持ち、現在はリーグ・アンのアンジェでプレーするアブドゥライ・バンバの父だとジョヴァンニは打ち明けている。
こうして、ユヴェントスの門をくぐり、U-15からは年代別のイタリア代表にも選出。15-16シーズンにはU-17ユヴェントスで25試合出場24得点を記録した。ロベルト・マンチーニ監督の強い要望ですでにフル代表入りし、3月23日に行われたEURO2020予選のフィンランド戦では初ゴールをマーク。19歳23日でのゴールは、1958年に18歳258日でゴールしたブルーノ・ニコレーに次ぐ、同国代表史上2番目の若さでの得点と、時の人となった。
ジョルジョ・キエッリーニは「我々にとっての世界遺産」と絶賛。テクニック、スピード、得点能力の高さと、どれも超がつくほどの一級品だ。アヤックスにチャンピオンズリーグ準々決勝で敗れ、再出発を余儀なくされたクラブにとって新しいシンボルとなり得るだけでなく、再建中のアッズーリにとっても中心選手となり得る存在だ。
それでも奢りはない。「自分はC・ロナウドでもないし、メッシでもない。でも、ハードワークして彼らのようになりたい」。世界的スターになれる可能性は十分に秘めている。しかし、イタリアは昨年3月に右翼政権が誕生。移民・難民が乗る船の入港を拒否し、移民への弾圧を強化するなど、移民に対する風あたりが強くなっている。冒頭で記した人種差別問題と同時に移民問題もあり、これから、黒人であり移民の子でもあるキーンが活躍するたびに、こういった問題、サッカーとは関係ない部分で矢面に立たされてしまう恐れもある。これが唯一、懸念されるところだ。
「両親は30年以上前からイタリアで暮らしていることもあって、僕は生まれてすぐにイタリアの市民権を得た。だけど、移民の子だからといって違いがあってはならない。僕らはみんなこの国で生まれたのだから」
養子としてイタリア人に育てられたマリオ・バロテッリも、活躍すれば英雄扱い、結果が出せなければ戦犯扱いとなった。彼もまた人種差別問題で心を痛めた一人だった。キーンも同じような境遇に陥ることもないとは言えない。それでもキーンがゴールを挙げ続ければ、移民問題で分裂の危機にあるイタリアを一体とさせることもできるだろう。彼はクラブとアッズーリの再建だけではなく、イタリアという国の将来を担っているのかもしれない。
文=佐藤徳和/Norikazu Sato
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