アリアンツ・スタジアムで現役引退を発表したマルキージオ [写真]=Getty Images
「私のキャリアは夢のようだった」。クラウディオ・マルキージオが、10月3日に現役引退を正式発表した。ミランのパオロ・マルディーニやローマのフランチェスコ・トッティのような、愛するクラブでキャリアを全うするバンディエラとなり得る存在だったが、それは叶わなかった。
33歳。マルキージオほどの選手にとっては早すぎる選手生活の別れだが、2016年4月のパレルモ戦で負った前十字じん帯断裂のケガが、マルキージオの選手生命を早めることとなってしまった。「この夏のリハビリの間、何かが弾け跳んだ。頭ではどうにかしたいと思っても、体がそれについていかなかった。もしベストを尽くせないのであれば、立ち去るべきだ。年齢は関係ない。どのように感じるかだ」
引退会見が行われた場は、昨シーズンまで所属したゼニトではなく、2018年夏まで過ごしたユヴェントスの本拠地、アリアンツ・スタジアムのジャンニ・エ・ウンベルト・アニェッリホール。“イル・プリンチピーノ(貴公子)”が子どものころから憧れ、愛し、そしてすべてを捧げた“夢”のクラブだった。
マルキージオを一言で形容するならば、“エレガント”の言葉が最もふさわしいだろう。サッカー選手としては細身な体躯であり、スタイリッシュで俳優のような面持ち。スキャンダラスとは無縁の品格も持ち合わせ、ピッチの内外で手本であり、貴族のような風格をも醸し出していた。しかし、実際のところは、裕福ではない家庭に育った。日々深夜に帰宅する父、ステーファノの姿を目にし、幼少期から仕事に対する厳しさを学んだ。
「疲れ切っていたにもかかわらず、不平不満を一切漏らさないで、決して平静さを失うことはなかった」と自伝『ネロ・ス・ビアンコ』で語る父の印象は、マルキージオ自身のプレースタイルからも伺えるもの。常に100パーセントの力を出してプレーし、ピッチを縦横無尽に駆け抜けてきた。
そして、過酷な青年時代の競争に打ち勝った背景には、つねに熱狂的なユヴェントスのファンである母、アンナがいた。7歳からユーヴェの下部組織に所属した当初を振り返り、「練習に通い始めた時、トレーニング場までは50キロもあって、文句ばかり言っていたんだ」という幼少期の彼を温かく支えたのが母だった。「母は『1カ月経って、もし嫌なら辞めなさい』と言ってくれた。3日後には、僕はもう文句を言わなくなったよ」。1週間に何度も送迎を繰り返した母の情熱がなければ、今のマルキージオは存在しない。「スタジアムで応援してくれる母は誰よりも熱狂的でね。2人の姉が、恥ずかしさのあまり『もうやめて、お母さん!』と止めに入るぐらいなんだ(笑)」。マルキージオのユーヴェへの愛情は母から受け継がれたものだった。
マルキージオがトップチームでデビューするのは、あの“カルチョスキャンダル”により、クラブがセリエBへの降格を言い渡された2006-07シーズン。セリエA復帰を遂げた07-08シーズンはエンポリへレンタル移籍したものの、その活躍が認められ、翌シーズンにユーヴェに帰還することを許された。降格処分によるチームの弱体化がなければ、マルキージオの出場機会は多く与えられなかったかもしれない。いや、ひょっとすると、レンタルを繰り返しながら、そのまま放出という道をたどっていた可能性すらある。生え抜きの選手がイタリアの貴婦人、ユーヴェのユニフォームを身に纏ってプレーし続けるというのは、それほど希であるからだ。
現在ラツィオでプレーするチーロ・インモービレもユーヴェ下部組織の出身だ。プリマヴェーラを経て、2009-10シーズンまでの2年間でユーヴェの一員としてセリエAの3試合に出場している。だが、結果を出せずにいると、弱冠20歳でありながら二度とチャンスは与えられなかった。そのままレンタルでシエナ、グロッセートと渡り歩き、最後のペスカーラではセリエBで得点王に輝いたが、ユーヴェへの復帰は認められず、ジェノアへと売却されている。
昨シーズン、新星誕生と騒がれたモイーズ・キーンも然り。19歳で6ゴールを記録しながらも、2750万ユーロ(約33億円)でエヴァートンに売却された。イタリア代表として史上2番目の若さでのゴールを記録(19歳23日)したが、それもユーヴェの首脳陣にとっては単なる記録の一つでしかなった。それほど、ユーヴェでトップチームに昇格し、居座り続けるというのは容易なものではないのだ。アレッサンドロ・デル・ピエロやジャンルイジ・ブッフォン、そして現在のカピターノ、ジョルジョ・キエッリーニといったバンディエラはすべて引き抜かれた選手。下部組織からトップチームへと昇格し、長く留まることを許されたのがマルキージオだった。
そんなマルキージオでさえも、最後の最後までユーヴェの一員としてプレーすることはできなかった。下部組織からトップチーム昇格を勝ち抜いた同期には、パオロ・デ・チェリエとセバスティアン・ジョヴィンコがいた。彼らはマルキージオよりも早く、前者は2015-16シーズン、後者は2014-15シーズンを最後に志半ばで新天地へと旅立っていった。マルキージオはそういった“戦友”たちの羨望の的であり、最後の希望であったに違いない。
「これからすべてが変わる。新たな道のりがスタートする。私の家族は恐れを抱きながらではなく、好奇心を持って将来を考えることを教えてくれた。これから何をするか分からないが、あらゆる可能性を否定することはない」
ユヴェントスのメンバーとして公式戦433試合に出場。7度のスクデット獲得に貢献したが、昨シーズン限りで引退したアンドレア・バルザーリと同様にチャンピオンズリーグ優勝には手が届かなかった。バルザーリは今シーズン、守備部門のコーチとしてチームに加わり、悲願である欧州制覇を目指す。マルキージオもまた、指導者として、あるいはクラブのスタッフの一員として、名を連ねることとなるかもしれない。その資格は十分に持ち合わせている。それだけ、クラブのために身を粉にして尽力してきた選手なのだから。
文=佐藤徳和/Norikazu Sato
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