今季のセリエAで注目すべき10選手 [写真]=Getty Images
セリエAの2020-21シーズンがいよいよ幕を開ける。
ユヴェントスの新監督には“あの”アンドレア・ピルロが就任し、フロントと指揮官の衝突が表沙汰になったインテルは、アントニオ・コンテ監督の続投を決めた。さらに、昨シーズンのチャンピオンズリーグで快進撃を見せたアタランタは円熟期を“継続”し、ミランも昨シーズンから続くポジティブな空気感を維持している。ガットゥーゾ体制2年目のナポリは着実な上積みを期待できるし、戦力放出とザニオーロ離脱の不安はあるとはいえ、“上積み”を感じるのはローマも同じだ。
そう、まさに群雄割拠。ユヴェントスが10連覇を目指すセリエAは、しかしこれまでとはワケが違う。
特別な1年の始まりを前に、「見逃せない10人」をピックアップした。彼ら全員が、チームの命運を左右する絶対的なキーマンだ。その動向を追えば、時間の経過とともに、現時点では“まったく読めない2020-21シーズン”の結末が見えてくるに違いない。
文=細江克弥
写真=Getty Images
デヤン・クルゼフスキ(MF/ユヴェントス)
まぎれもなく、2019-20シーズンにおける最高のヤングタレントだった。2016年から育成の名門アタランタに在籍していたとはいえ、パルマにレンタルされた昨シーズン開幕前はほとんどノーマーク。ところがユヴェントスとの開幕戦で圧倒的な存在感を放つと、わずか19歳にしてパルマの中核を担い、その地位を1シーズンきっちりと守り抜いた。
最大の魅力は打開力だ。左足でボールを細かく押し出しながら相手の目の前にさらし、重心移動を瞬時に見極めて逆を取る。大柄だが加速力があり、対面する相手は一度逆を取られるとリカバーできない。それでいて独りよがりなドリブラーではなく、特にフィニッシュの局面では冷静に“答え”を見つけられるから末恐ろしい。
おそらくそのクレバーさがなければ、ユヴェントスがブレイク1年目の選手に約40億円もの移籍金を費やさなかっただろう。ポジショニングもプレーの選択も攻撃も守備も、相手の弱点を見つけてそこを徹底的に突く“イヤらしさ”は現在のクラブ副会長であるパヴェル・ネドヴェドの現役時代を想起させる。アンドレア・ピルロ新監督との相性さえ良ければ、迎える新シーズンでさらなるスターダムに駆け上がる可能性は十分にある。
クリスティアン・エリクセン(MF/インテル)
インテルに加入した2019-20シーズン後半の成績を見れば、“期待はずれ”と評されても仕方がない。それでも特大の期待感が消えないのは、その個性に特別な力があることを知っているからに他ならない。
アントニオ・コンテ監督が短期間で作り上げた堅守速攻型のインテルは、昨シーズン前半のセリエAを席巻した。ただし“それ以上”を望むなら変化が必要だったことは明らかで、エリクセンはそれを実現するラストピースとしてチームの一員になった。だからこそ、スタメン出場がわずか「8」にとどまった約半年間の戦いは、チームにとっても個人にとっても理想的と言えるものではなかった。
もっとも、勝負の2年目はポジティブな要素が多い。コンテが作る3-5-2を進化させるためには、役割としての10番を置く“バージョン2”の完成が不可欠だ。エリクセンはもちろんその筆頭候補であるから、チャンスは必ず訪れる。逆三角形の下頂点にマルセロ・ブロゾヴィッチを置く“バージョン1”、正三角形の上頂点にエリクセンを置く“バージョン2”をコンテが自在に使い分けるシーズンになれば、インテルは間違いなくスクデットに近づく。
マリオ・パシャリッチ(MF/アタランタ)
もともと19歳にしてチェルシーに引き抜かれた逸材だが、エルチェでもモナコでも、ミランでもスパルタク・モスクワでも、レンタル先で特別な評価を得られたわけではなかった。風向きが変わったのは2018年夏。5クラブ目のレンタル先として、アタランタに加入してからのことだ。
技術は非凡。聡明で器用。だからどのポジションでも“計算どおり”のパフォーマンスを発揮できる特徴は、戦術的な“縛り”の多いジャン・ピエロ・ガスペリーニのサッカーに完全にハマった。1年目の2018-19シーズンはバックアッパーの域を出なかったものの、昨シーズンはその立場が一転。3-4-2-1を基本システムとするチームで「4」の中央と「2」の一角で求められる役割をきっちりとこなすと、プラスアルファとしての技術的・フィジカル的ポテンシャルをピッチの上ではっきりと示した。「9得点」という成績には、アタランタが完全移籍での獲得を決断するのに十分な説得力があった。
アタランタにとって絶対的なエースはアレハンドロ・ゴメスとヨシプ・イリチッチの2人だが、進境著しいパシャリッチがその“格”に近づくのなら、スクデット候補としての可能性はさらに高まる。
セルゲイ・ミリンコヴィッチ・サヴィッチ(MF/ラツィオ)
市場価値が100億円にまで膨れ上がった2018年、しかしロシアW杯直後の2018-19シーズンのパフォーマンスはいまいちで、その評価は下降気味だった。ところが、万全のコンディションを取り戻した昨シーズンは文句のつけようがない素晴らしい圧巻の仕事ぶり。一時はスクデットも視界に捉えたラツィオの中核としてチームを牽引した。
よく称えられるのは圧倒的なフィジカルに裏打ちされた攻守のダイナミズムだが、最大の特徴はそれを駆使して発揮される“相手を動かす力”にある。ドリブルで運べる。ラストパスを出せる。両足を使える。高さと強さに加わるそうした繊細さがあるから、ピッチのどこにいても相手は目を離せない。昨シーズンは隣でプレーするルイス・アルベルトがアシスト王に輝いたが、彼の存在感がそれを間接的にアシストしたことは間違いない。
ケチで知られるクラウディオ・ロティート会長が、これだけの“資産”をそう簡単に手放すことはないだろう。もしも1年後に売る決断を下すなら、それは売らざるを得ないほど価値が高まったことの証であり、その活躍によってチームがとびきりの成果を得た証であるかもしれない。
サンドロ・トナーリ(MF/ミラン)
18歳からイタリア代表に名を連ねる異彩は、ついに憧れのミランにたどり着いた。飛び抜けたパスセンスから“ネクスト・ピルロ”と称されてきたが、本人の憧れの的はジェンナーロ・イヴァン・ガットゥーゾ。ミランでは、そのヒーローが背負った「8」を受け継ぐ。
セリエAでの1年目となった昨シーズンは3度の監督交代など低空飛行を続けたブレシアにあってもまったく動じることなく、そのレベルがセリエAでも十分に通用することを証明した。トップスピードの動きの中でも正確なラストパスを出せる右足の精度はもちろんだが、ピッチ内での活動量と献身性なら引き合いに出される偉大な先人ピルロを上回る。まだ20歳にして、しかも1年目のセリエAで35試合に出場したタフさは特筆に値すると言えるだろう。つまり、目指す理想郷はピルロとガットゥーゾのハイブリッドだ。
ミランの中盤にはフランク・ケシエやイスマエル・ベナセルら好タレントが揃っているが、昨シーズンの負担過多を考えれば自分の仕事に専念できる環境によって1プレーごとの輝きは増すだろう。あとは指揮官ステファノ・ピオリの起用法次第。もしもミランの復権を象徴する存在になったと誰もが認める日が来たなら、セリエAの勢力図が大きく変わるかもしれない。
ニコロ・ザニオーロ(MF/ローマ)
右ひざの故障による長期離脱から復帰後、昨シーズン終盤はローマ首脳陣と話し合いながらかなり慎重な調整を続けてきた。それだけに、イタリア代表として出場した9月のオランダ戦で今度は左足のひざを故障し、長期離脱を避けられない現状があまりにも惜しい。
2018年夏にインテルからローマに移籍すると、すぐに頭角を現して脚光を浴びた。最大の魅力はボールを運ぶ力。190センチを超える長身をうまくコントロールしながら両手を広げて自らのテリトリーを守り、力強くぐいぐいと前にボールを押し出して敵陣に突っ込むパワーがある。ハードなタックルを受けても簡単には倒れないし、それでいてボールの置きどころがいいから相手にとっては飛び込みにくい。さらに、ミドルレンジから強引に狙う左足は精度もパンチ力も十分。同世代には将来を嘱望されるタレントが多くいるが、中でも最も高く評価される選手のひとりだ。
シーズン後半戦の復帰が実現すれば、ローマにとっては大きな“補強”となる——とポジティブに考えるしかないが、チームにとってそれだけ大きな痛手であることは間違いない。リーグ終了後に開催されるEUROを考慮すれば、所属するローマだけでなくセリエA全体やアッズーリにとっても早期回復が期待されるが……。
ピオトル・ジエリンスキ(MF/ナポリ)
ここ数年のセリエAにおいて、最も成長した選手の1人だ。ウディネーゼから加入した2016-17シーズン当時はマレク・ハムシク、アラン、ジョルジーニョが形成する黄金の中盤のバックアッパーでしかなかったが、ジョルジーニョとハムシクが去り、さらに指揮官が替わると立場が一変。手にした地位と信頼によって急成長が促され、ついには不動と見られていたアランを押しのける形でレギュラーの座を手に入れた。
かねてから抜群の運動量と献身性、さらにテクニックを兼備するオールラウンダーとして知られているが、特に昨シーズンは球際の勝負強さと90分を通じた安定感、さらに闘争心をむき出しにする姿勢によって特別な存在感を感じさせる選手になった。中盤でパスを引き出す細かな動き直しや相手の陣形を微妙に動かす駆け引きなどオフザボールのクオリティーもかなり高く、その様子を追い続けるだけでも楽しめる。昨シーズンのナポリは監督交代の難しい時期を過ごしたが、ジエリンスキのパフォーマンスはまったくブレることなく、再開後のコッパ・イタリア獲得にも大きく貢献した。
闘争心や献身性を重んじるガットゥーゾ体制において、今やジエリンスキはリーダーの風格を漂わせる。間違いなく、今シーズンのキーマンだ。
マヌエル・ロカテッリ(MF/サッスオーロ)
イタリア代表として出場した9月のオランダ戦、この試合で見せたパフォーマンスによって、ロカテッリの評価は急上昇している。
ミランでのデビュー当時の鮮烈な活躍を覚えているファンは少なくないだろう。前年にセリエAデビューを果たしたアカデミー出身のレジスタは、2016-17シーズンのスタートからわずか18歳でレギュラーポジションを奪取。第9節のユヴェントス戦では鮮やかな決勝ゴールを奪い、一気に注目を集めた。しかしその年の後半から出場機会を失うと、2019年1月にサッスオーロへ移籍。「早熟すぎた」と失格の烙印を押す声もある中で、しかし本人はロベルト・デ・ゼルビ率いるチームのポゼッションスタイルで完全復活を遂げた。
サッスオーロ加入後の成長は、いかにもレジスタらしい配給やクリエイティブな要素ではなく、むしろ攻守の切り替えの速さや球際の強さ、相手の足下に躊躇なく踏み込んでボールを奪おうとする姿勢など、プレー全体としての“力強さ”に表れている。それを十分に発揮したオランダ戦は、ユヴェントスが獲得に本腰を入れる理由がよくわかる90分間だった。今やアッズーリでレギュラーを争える力も十分にある。さらなる成長が楽しみなタレントだ。
ソフィアン・アムラバト(MF/フィオレンティーナ)
2019年夏にクラブ・ブルージュからヴェローナに加入したモロッコ代表MFは、イヴァン・ユリッチ監督の下で素晴らしい快進撃を見せたヴェローナの“心臓”として大ブレイク。開幕前はサウジアラビアでプレーする兄ノルディンに知名度で劣ったが、昨シーズンのナンバーワンMFに押す声もあったほどの活躍で一気に立場を逆転させた。
最大の武器は圧倒的な運動量と優れた判断力。密集地帯で相手の前に踏み込んでボールを奪う能力が非常に高く、そのままぐいぐいと前に運んでフィニッシュのお膳立てまで遂行する。狭いエリアでプレッシャーを受けてもミスが少なく、落ち着いて試合をコントロールするクラシカルな司令塔としての側面も魅力だ。
昨冬のマーケットですでに契約を済ませ、今シーズンは新天地フィオレンティーナで2シーズン目のセリエAを戦う。昨冬の移籍市場から即戦力の獲得に成功しているチームで中盤の舵取り役を担うことになれば、さらなるステップアップも期待できそうだ。
サムエレ・リッチ(MF/エンポリ→?)
まだ19歳と若いが、すでにイタリアの未来を担う才能として大きな注目を集めている。というより、個人的にその将来性を最も楽しみにしている選手のひとりだ。ぜひ動画配信サイトで「SAMUELE RICCI」を検索してほしい。ボールを自ら運びながら40〜50メートルのロングパスをビシッと通すその姿に特別な才能を感じるし、ショートパス全盛の現代サッカーにおいて1本のパスで局面を打開しようとするプレービジョンに新鮮さを覚えるに違いない。
エンポリのアカデミーで育ったMFは、アンダーカテゴリーではすでに結果を残している。U-17、U-18、U-19代表と着実なステップアップを続け、同年代の主力選手として徐々に知名度を高めてきた。そうして迎えた昨シーズンは、セリエBを戦ったエンポリでついにトップデビュー。21試合に出場し、セリエAの各クラブが獲得を狙うタレントとなった。
ミランやインテル、フィオレンティーナ、サッスオーロ、国外ではドルトムントらが興味を示していると言われているが、新シーズンの舞台は、果たして。その動向に注目したい。
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By 細江克弥