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【インタビュー】「日本人史上最高の選手になる」堂安律が見据える野望と未来図

2018.06.10

 掲げる目標は「日本人史上最高の選手になる」こと。日本サッカーの次世代を担う男・堂安律の瞳には一点の曇りもない。

 2017年6月、弱冠19歳の若武者はオランダのフローニンゲンに新天地を求めた。欧州初挑戦ながら公式戦31試合で10得点4アシストと結果を残し、サポーターズクラブが選出する年間最優秀選手賞を受賞。そして4月には新たに3年契約を勝ち取り全幅の信頼を得た。

 なぜ移籍1年目から活躍することができたのか。そして、さらなる高みを見据える堂安が思い描く未来図とは……。

インタビュー=岩本義弘
写真=兼子愼一郎、ゲッティイメージズ

■オランダで甦った“小学生の時の感覚”

――自分が「サッカー上手いな」と気付いたのは何歳の時ですか?
3歳です。3つ上のお兄ちゃん(AC長野パルセイロ所属 堂安憂選手)の年代に混じってやっていたので、「俺、上手いんやろうな」と。まあ、そんなに甘くはなかったですけどね(苦笑)。

――気付いたらサッカーが好きになってどんどん上手くなっていったという感じ?
小学生の時は努力したというより、サッカーが好きでボールを蹴っていましたね。

――ガンバ大阪の先輩・宇佐美貴史選手も「気付いたら上手くなってた」と言っていました。
あの人は天才ですよ! 今まで一緒にやってきた中でも「レベルが違うな」と。すごく尊敬しています。

――ちなみに幼少期の頃のポジションは?
ピッチのどこにでもいたと言われます。ずっとドリブルしてました。いや、ドリブル“しか”していないかもしれないですね。

――西宮SSを経て、G大阪ジュニアユースに入団しました。ポジションやプレースタイルに変化はありましたか?
初めての試合が4-4-2のボランチでした。ガンバに入ったことでボール回し、ポゼッションを覚えたのですが、スタイルの変化でちょっと自信がなくなってしまって……。「ああ、どうしよう」と悩んでいたら、鴨川(幸司)監督に「お前はドリブラーだからドリブルをしろ」と言われたんです。そこからポジションがサイドハーフになって、1年時でAチームに上がることができました。そこで「ドリブルを極めよう」と決心しましたね。

――ボランチを経験したことでサッカーの難しさを感じたのではないですか?
当時は「サッカーって面倒くさいな」と……(笑)。ディフェンスに戻らないといけないし、「間を閉めろ」とか「縦パスを切れ」とか言われだして。そこでギャップを感じました。ただ、今のオランダでの感覚は小学生の時に似ていて、そんなことを考えずに好きな攻撃をやっているというイメージなんです。もちろん頑張るところは体に染み付いているのでやりますけどね。

――今はとにかく気持ち良くプレーできているのですね。
小学生の時くらいの練習量をこなしていますね。オランダではサッカーしかしていないくらいです。

■「上手くなっている」という実感はすごくある

堂安律

[写真]=Getty Images

――普段の練習に加えて、居残り練習もされているようですね。
1時間くらいはやっています。主にはシュートとヘディングの練習。あとは縦に切り込んだ時の右足のクロスも練習しています。一通り自分のポジションに当てはめてながらですね。チーム自体が若いので、みんな居残り練習をするんですよね。例えばですけど、週末の日曜日に試合があるとします。そうすると翌日の月曜日がオフで火曜日、水曜日が練習。で、試合3日前の木曜日がまたオフになるんですよ。金曜日と土曜日に練習して試合という流れです。練習は週に4日だけなんですが、これがめちゃくちゃキツい。週の半ばにオフがあるから練習の強度を下げなくてもいいという監督の考えなんです。

――練習の雰囲気はいかがですか?
練習でも削られたら胸ぐらを掴み合っての喧嘩になります。6対2のボール回しでもなりますから。ボールを回され続けると鳥かごの中の選手がイライラしてきて削りに行くんですよ。「おい! 次、覚えておけよ!」となって、また代わった時にやり返すんです。でも、練習後は「イェーイ!」ってハイタッチしてて、「これ何やねん」と(笑)。俺は「最初からキレるなよ」と思いますけどね(笑)。

――そういう“ギラギラした”環境の中でやっているのは楽しい?
楽しいですね。自分が「上手くなっている」という実感がすごくあります。あんなにキツい練習を毎日やるのは高校生以来ですよ。

――昨シーズンは欧州初挑戦ながら、公式戦2桁得点を記録しました。最も成長した部分はどこだと感じていますか?
以前は「消える時間が多い」と言われていたのですが、オランダに行ってから90分を通して試合に絡めるようになりました。ずっと試合に関与できていますし、フィジカルコンタクトの部分ではチームで一番勝率が高いんです。最近は(ディエゴ・)マラドーナの映像を見ています。自分でゴリゴリ当たっていくじゃないですか。突っ込んで行く感じを参考にしています。

――オランダではわずか1シーズンで確かな実績を残しました。ステップアップ移籍も視野に入れていますか?
これからいろいろな選択肢が出てくると思います。夏に移籍するのか。半年間フローニンゲンでプレーして冬に移籍するのか。もう1シーズン残るのか。3つの選択肢のどれかではあります。ただ、来年1月にAFCアジアカップ2019があるので、出場できる保証はないですけど半年間フローニンゲンでガッと得点を取って、アジアカップで日本代表に定着したい。ただ、もちろん“勝負”したい気持ちもあります。今回のワールドカップメンバーに選ばれなかった理由が「エールディヴィジだから」と言う人がいるのであれば、移籍して同じだけ得点を取って見返すという考えも自分の中にあります。

――ですが、結果的にフローニンゲンへの移籍は間違っていなかったですよね?
移籍した時は「どこやねん」とか「まだ早いわ」とかいろいろな声がありました。ただ、結果を残せば黙ると思うし、いい移籍だったと思います。

――先ほど「アジアカップ」という言葉が出ました。日本代表への思いも強くなってきているのではないですか?
もちろん夢ではあります。ですが、それが一番の夢とか言われると、今は自分にできることがクラブにあると思っているので。そこにフォーカスする必要はあると正直思います。

――堂安選手の待望論も日に日に大きくなっています。日本代表はもう近くまで来ているという感覚ですか?
日本代表という目標に対して近づけはしましたけど、まだ一回も行ったことのない世界なので。まだまだ「夢」という感覚ですかね。もう少し段階を踏んで行けば「近づいてきたな」と思うのかもしれないですけど、バッと目の前に来て「もう行けちゃうの?」という感覚です。まだ実感はないですね。

――昨年はFIFA U-20 ワールドカップ韓国2017にも出場しました。東京オリンピックに臨む森保ジャパンどのような存在ですか?
単にオリンピックというよりも、“東京オリンピック”という母国に対してのモチベーションがあります。ただ、オリンピックはクラブに拘束権がないので、出場できる契約にしておかないといけないと思います。もしもチャンピオンズリーグに出るようなクラブに移籍していたら時期的に出れないですからね。

■将来は世界の誰もが知る「DOAN」に

堂安律

[写真]=兼子愼一郎

――今年3月にサッカーキングで掲載されたインタビューでは、ネイマールのことを「ネイマールさん」と呼んでいましたよね(笑)。
あれぐらい上手い選手は今までにもいたと思いますけど、魅了して得点を取るじゃないですか。エンターテイナーとして人々を楽しませて最後は自分が決める。「やっぱりお前か!」ってなるあの“主役感”がカッコいいんです!

――好きな選手には同じ左利きのアタッカー、パウロ・ディバラを挙げています。どんなところが好きなんですか?
まずはシュートが上手い。あとは(リオネル・)メッシほどのスピードはないけど、ドリブルでヌルヌルっと相手を抜いていける。スピード型ではないので、あれは真似できるんじゃないかなと。そういうところは勉強しています。

――名前が出たメッシも同じく左利きのアタッカーという共通点を持っていますが。
大好きですね。もうあれだけの選手は現れないでしょ! 今、俺がエグいと思っているのはアシスト。ジョルディ・アルバへの対角線のパスの精度が高すぎる。相手DFは「ここに来る」と分かるじゃないですか。でも、取れない絶妙なところに出すんですよね。

――その他にプレーの参考にしている選手はいますか?
今は(モハメド・)サラーを見ていますね。突破力と突進力、あとは左サイドで崩した時に右サイドからスプリントで入ってワンタッチで決めるじゃないですか。簡単に決めることを極めたいので、サラーのフリーランニングは見ていますね。そこを習得できればもっと簡単に2桁得点も達成できると思います。昨シーズンは自分でもビックリするようなゴールばかりでした。ワンタッチのゴールがもっとあったら「(リーグ戦で)2桁いったのに」という反省でもありますけど。

――来シーズンに向けた課題を教えてください。
まずはフリーランニングです。あと昨シーズンはシュートの調子が良かった一方、局面の一対一で抜き切るシーンがなかった。相手を剥がしてシュートの形はありましたけどね。抜き切るという部分の理想は伊藤達哉(ハンブルガーSV)。あれぐらい剥がせたら何でもできますからね。

――では、最後に。10年後、どんな選手になっていたいですか?
10年後はもう30歳ですか……。目標は日本人史上最高の選手になること。そしてチャンピオンズリーグ優勝です。世界中どこの街を歩いても僕の顔を知っているような“超有名人”になりたくて、海外で日本人を見かけたら「Hey DOAN!」と言われるくらいになりたいです。もうフローニンゲンの街では日本人が歩いていると「DOAN!」と言われますが、オランダ国内でもまだまだですし、もちろん世界的には全然ですから。そこまで突き詰めていきます!

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