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毎熊晟矢は菅原由勢を超えられるか? AZで新たな一歩を踏み出す右SBに求められるもの

2024.06.23

AZへの移籍が決定した毎熊晟矢 [写真]=Getty Images

「海外移籍を本気で考えた最初のきっかけは、2022年カタールワールドカップ(W杯)を見ている時。同じJリーグで戦っている選手たちが出ていて、Jでは別格なのに、W杯になると海外組の方が勝負強さやタフさがより強く出るんだなと感じたのが大きかった。Jにいても国際舞台でやれると思っていましたけど、自分が代表に入るようになって違いを肌で感じたので、意識が高まりました」

 6月21日にオランダ1部・AZと正式契約し、オンラインでの入団会見にのぞんだ毎熊晟矢。彼は1年半越しの海外への思いを結実させ、26歳にして欧州組の一員として新たな一歩を踏み出すことになった。

 昨今は10代で欧州の扉を叩く選手も少なくないが、20代後半になってからチャレンジするのは遅い部類に入る。それでも、過去には、26歳を目前にした2019年2月にベルギー1部・ヘンクへ赴き、欧州5大リーグへと駆け上がった伊東純也(スタッド・ランス/フランス)、やはり26歳になる直前の2023年夏にオランダ1部・NECへ赴き、1年目からリーグ戦11ゴールを挙げた小川航基のような例もある。

 毎熊も「この歳からでも上のレベルに行けることを証明できるようにやっていく」と宣言していたが、8月から始まる新シーズンで一気に定位置をつかみ、存在感を発揮しなければならないのは確か。今から異国の環境に適応し、チーム戦術や仲間の特徴をいち早く理解したうえで、自身のストロングである攻撃力を前面に押し出すことが重要になってくるのだ。

 クラブ側は「菅原由勢の後釜」という認識で獲得に踏み切ったという。それは本人も自覚している点だ。

「菅原選手は攻撃面で素晴らしい仕事のできる選手。ゴールもアシストもできるし、結果も残せるところが特徴。自分も同じクラブに入ったからには結果にこだわってやらないといけない。どこまで自由にやらせてもらえるか分からないでけど、僕は中に入っていったり、外を使ったりという使い分けをうまくやりながら、違ったアクセントをつけられたらいいと思っています」

 毎熊は菅原のようなダイナミックさをもたらしつつ、攻撃面の迫力をより前面に押し出す構えだ。そのうえで、課題と言われる守備面もレベルアップできれば、日本代表復帰にも近づくはず。6月の2026 FIFAワールドカップ・アジア2次予選・ミャンマー&シリア2連戦でメンバー落選を強いられた彼は「森保(一監督)さんから提示された課題に悩みながら向き合っている」と苦しい胸中を明かしていたのだ。

「3月の北朝鮮戦でメンバー外になって、森保さんが僕に足りない部分があると考えていることを痛感させられました。実際に話もしましたけけど、要求の1つが守備ですね。デュエルの部分は前よりは行けてると思いますし、トライもしていますけど、Jリーグの試合でも相手と入れ替わってしまったり、ミスをしてしまうこともゼロではない。ここ数カ月、いろいろ考えながらやってきましたけど、うまくいかない部分が多かった。なかなか正解が見つからないですけど、真摯に向き合っていかないといけないなと思っています」

 世界で戦っていくためには、1対1の守備力というのは必要不可欠。オランダは伝統的にウイングを生かしたサッカーを志向するチームが多い分、毎熊が試合に出るようになれば、相手のウインガー、サイドアタッカーと対峙する機会も増える。そこでしっかりと敵を封じる力をつけられれば、森保監督の評価も上がるはずだ。

 1〜2月のAFCアジアカップカタール2023では、日本が主導権を握る試合が多かったため、毎熊がファーストチョイスになれたが、ここからはW杯で上位躍進することを重視しなければいけない。となれば、国際経験値と1対1の守備力で上回る菅原や橋岡大樹らの方がベターというのが、今の代表スタッフの見方なのだろう。

 今後はパリ五輪世代の関根大輝や半田陸らが台頭してくる可能性もあるだけに、代表右SB争いは一段と熾烈になってくる。その中で生き残っていくためにも、AZでコンスタントに試合に出て、目に見える攻守両面で成長を印象付けなければならない。

 新シーズンのAZはUEFAヨーロッパリーグ(EL)にも参戦することになっており、フォーマット変更に伴ってより多彩な国のチームと対戦できるチャンスが訪れる。その機会も最大限生かしながら、「攻撃だけではない毎熊晟矢」を築いていくことができれば、2年後のW杯の大舞台も夢ではなくなる。今回のAZ移籍はキャリアの成否を大きく左右するものになるだろう。

 セレッソ大阪からは過去に香川真司、乾貴士、清武弘嗣、南野拓実といった面々が欧州で成功を収め、日本代表入り。W杯の大舞台をつかみ取っている。毎熊もその系譜を継ぐことが求められるのだ。

「最も印象に残っているのは、直近のカタールW杯で日本がドイツやスペインを破った試合。世界の強豪国に対して全員が自己犠牲の精神を示してつかみとった勝利に感動しました」と話す彼が次は主役になれるように、ここからの快進撃を期待したいものである。

取材・文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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