日本代表戦に向けてトレーニングを行ったブラジル代表の選手たち [写真]=Getty Images
今年1月のAFC U-23選手権を経て成長を遂げた日本代表とは対照的に、リオデジャネイロ・オリンピック開催が決まった瞬間、自動的に出場権を獲得したブラジル代表にとっては親善試合であろうと重みを持つ一戦となる。
ブラジルは30日16時30分(日本時間31日4時30分)から日本との本大会前最後のテストマッチに臨む。いよいよ来週に迫った本大会へ向けての調整試合であることは間違いないが、金メダル獲得に向けて本番さながらのモードで臨んでくるだろう。
今回のオリンピック、ブラジルは必ずや頂点を取らなければいけない理由がある。1930年の第1回FIFAワールドカップから全大会に出場し、最多5度の優勝を誇りながらも、いまだオリンピックでの金メダルはゼロ。近年では2008年の北京、12年のロンドンと2大会連続でメダルを獲得してはいるものの、いずれも金メダルには届かなかった。
準決勝でドイツ代表に歴史的大敗を喫し、失意の大会となってしまったワールドカップ ブラジル大会から2年の月日が流れた。そして今年は未来のセレソンを担う若き精鋭たちが、自国開催のオリンピックで悲願の金メダルを狙う。
超攻撃的サッカーを志向する“育成のスペシャリスト”ロジェリオ・ミカーリ監督のもと、国内リーグで生きのいい選手たちを中心にチームを構成。3人のオーバーエイジには、経験豊富な守護神フェルナンド・プラス、A代表でも中軸を務めるレナト・アウグスト、そして絶対的エースのネイマールを起用した。ここからは、各ポジション別に戦力を分析していこう。
▼GK
1 フェルナンド・プラス(パルメイラス)※オーバーエイジ
18 ウイルソン(アトレチコ・ミネイロ)
本大会でゴールマウスを守るのは、オーバーエイジとして選出されたフェルナンド・プラスになるだろう。38歳の守護神は、これまでセレソンとは全く縁のないキャリアを送ってきた。しかし、この世代を代表するGKエデルソン(ベンフィカ/ポルトガル)が、今年6月に行われたコパ・アメリカ センテナリオ USA 2016の合宿中に負傷。ウイルソン、ジェアン(バイーア)、マテウス・ヴィドッド(コリンチャンス)といった選手を正GKとして起用するという手段もあったが、ミカーリ監督は国内リーグで好セーブを連発していたベテランに白羽の矢を立てたのだった。経験に裏打ちされた安定感あるセーブはもちろんのこと、最年長選手として若いチームを引っ張るリーダー的役割も期待される。
そのフェルナンド・プラスだが、今週の練習中に負傷し、日本戦は大事を取って回避する見込みとなっている。なお、本大会には間に合う模様だ。
▼DF
2 ゼカ(サントス)
3 ロドリゴ・カイオ(サンパウロ)
4 マルキーニョス(パリ・サンジェルマン/フランス)
6 ドウグラス・サントス(アトレチコ・ミネイロ)
13 ウィリアム(インテルナシオナル)
14 ルアン・ガルシア(ヴァスコ・ダ・ガマ)
センターバックの軸を務めるのは、マルキーニョスとロドリゴ・カイオのコンビだ。すでにA代表の一員としても活躍するマルキーニョスだが、実はまだ22歳。6月のコパ・アメリカでは、負傷のため出遅れたミランダ(インテル/イタリア)に代わって2試合に出場した。所属するパリ・サンジェルマンからの出場許可も無事に降り、今大会ではディフェンスリーダーとして期待が懸かる。
ロドリゴ・カイオはこの世代の立ち上げ当初から支えてきた選手の一人だ。身長は182センチと決して長身の部類には入らないが、鋭い読みで攻撃の芽を摘むプレーが最大の武器である。セットプレー時のポジショニングも的確で、3月に行われたU-23南アフリカ代表との親善試合では、セットプレーからヘディングで先制ゴールを決めている。
高い身体能力を誇るマルキーニョスと、知性を生かしたプレーが持ち味のロドリゴ・カイオ。実践経験こそ少ないものの、うまくバランスの取れたコンビになるはずだ。
左サイドバックには、こちらもすでにA代表に名を連ねるドウグラス・サントス、右はウィリアムがファーストチョイスとなるだろう。中2日、3日と過密日程の中で進む大会だけに、左右のサイドバックをこなすことができるゼカの存在は頼もしい限りだ。
▼MF
5 レナト・アウグスト(北京国安/中国)※オーバーエイジ
8 ラフィーニャ(バルセロナ/スペイン)
12 ワラスィ(グレミオ)
15 ロドリゴ・ドウラド(インテルナシオナル)
16 チアゴ・マイア(サントス)
17 フェリペ・アンデルソン(ラツィオ/イタリア)
ボランチの軸となるのは、ドウグラス・コスタ(バイエルン/ドイツ)の負傷により、追加招集でオーバーエイジに抜擢されたレナト・アウグスト。ルーカス・シウヴァ(レアル・マドリード/スペイン)の欠場により、中盤でパスを駆使しながらゲームをコントロールする役割を担うことになるだろう。
そのレナト・アウグストの隣でサポートする役目にうってつけなのが、サントスに所属するチアゴ・マイアだ。素早い出足と身体の寄せで相手からボールを奪うプレーは一級品。すでに複数の欧州クラブが獲得に乗り出しており、この大会を機にブレイクの予感が漂う選手の一人だ。
フェリペ・アンデルソンやラフィーニャといった、日本でも知名度の高い選手たちもメンバー入りを果たした。ポジション争いは熾烈を極めることになるが、過密日程の大会で必ずしや全員に出番が回ってくることになることだろう。
▼FW
7 ルアン(グレミオ)
9 ガブリエウ・バルボーザ(サントスFC)
10 ネイマール(バルセロナ/スペイン)※オーバーエイジ
11 ガブリエウ・ジェズス(パルメイラス)
FWには、オーバーエイジで選出されたネイマールに加え、国内リーグで躍進目覚ましい選手たちがメンバーに名を連ねた。
注目は欧州移籍市場に賑わす2人のガブリエウだ。サントスに所属するガブリエウ・バルボーザ、通称“ガビゴル”は高度なテクニックとスピードを生かした突破を持ち味とする左利きのアタッカーだ。そのトリッキーなプレースタイルとサントスに所属していることから、「ネイマール2世」と称されることもしばしば。昨年11月、初めてA代表入りを果たすと、6月のコパ・アメリカに臨む23名にも選出され、ハイチ代表戦では得点をマークした。なお、大会終了後はユヴェントスへの移籍が濃厚となっている。
現在、国内リーグですでに10得点を叩き出し、得点ランキングのトップに立つ19歳、ガブリエウ・ジェズスは今、最も旬な選手である。この原石の去就を巡っては、バルセロナ、レアル・マドリード、マンチェスター・C、マンチェスター・Uといったビッグクラブが獲得合戦を繰り広げているほどだ。ガビゴルと同様、テクニックを駆使したチャンスメイクを持ち味とするが、中央で起点を作ることができるフィジカルの強さもすでに兼ね備えている。サイドからの仕掛けだけに固執せず、中央にも割って入ることができる推進力と高い得点力も魅力だ。
ルアンは知名度では既述の2人に劣るものの、今年1月にはレアル・マドリードが獲得に興味を示しており、未来のセレソンを担う一人になることは間違いない。待望の大型ストライカーとまでは言いきれないが、最前線でのチャンスメイク力、シュート決定力は国内でもトップレベル。チャンスと見るやいなや、必ずシュートまで持っていく貪欲さと、高確率で枠内を捉えるシュート精度の高さが魅力のストライカーは要チェックだ。
もう失敗は許されない。2年超しとなる自国開催の大会で、金メダル獲得を絶対的使命として“託された”若きカナリア軍団の戦いにも注目してほしい。
文=三島大輔
By 三島大輔
サッカーキング編集部