ブラジル・ワールドカップも、ついに決勝を残すのみとなった。
聖地マラカナンでの最終決戦に臨むのは、ともに約四半世紀ぶりの世界制覇のかかる優勝3回のドイツと同2回のアルゼンチン。欧州と南米を代表する超大国同士の激突となったが、試合のキーマンはただ一人。アルゼンチンのリオネル・メッシだ。
今大会にキャプテンとして臨んでいるメッシだが、チーム自体も完全に「メッシ仕様」。走らないどころか、もはや走っただけで話題になる王様の周りを、馬車馬のように働くチームメートで固める。その筆頭格だったアンヘル・ディ・マリアが負傷で出場が不透明な点は確かに痛恨だが、戦い方は変わらないはずだ。
豪華絢爛なアタッカー陣を抱えながらも、攻撃はまさにメッシ頼みとなるため、大量点は生まれにくい。それでも、さすがは世界最高の選手である。何人に囲まれようが、試合から消えていようが、ゴールとアシストと、結果は残してきた。準決勝のオランダ戦はPK戦で勝ち上がり、残りの5試合は全て1点差での勝利。対戦相手に関係なく、ハビエル・マスチェラーノを中心とした守備でのらりくらりとペースを掴み、メッシの一発にかけてきた戦法で世界一に挑む。
一方、ドイツはアルゼンチンとは対照的。今大会最多の17ゴールを挙げているが、バランスの良さが際立つ。前線ではトーマス・ミュラーやマリオ・ゲッツェ、メスト・エジルらがポジションチェンジを繰り返し、5得点のミュラーを筆頭に8選手が得点者となり、どこからでもゴールを奪える強みがある。守備ではスピード不足が懸念されるが、ペナルティエリア外にも果敢に飛び出せるGKマヌエル・ノイアーが最後方に控えている点は心強い限り。純粋な戦力値では大会参加国では飛び抜けていたと言えるだろう。
ただ、相手がメッシを擁するアルゼンチンとなれば、上手く事が運ぶかどうか。あまり試合に関与しないとは言え、メッシはメッシである。機械仕掛けのように精密精巧だったチームだが、人間磁石のようなメッシに引き付けられ過ぎてバランスを崩すようだと、戦前の予想などは一気に無に帰するだろう。
両チームは、過去2大会でも準々決勝で対戦。2006年は開催国だったドイツがPK戦の末に勝ち抜け、リターンマッチとなった2010年でもドイツが4-0で大勝して返り討ちにしている。過去2大会に出場しているメッシやマスチェラーノらは3度目の正直に挑み、ドイツは2度あることは3度あるとばかりに過去の再現を狙う。
ちなみに、決勝での対戦は1勝1敗。28年前にはアルゼンチンのディエゴ・マラドーナが、24年前はローター・マテウスがそれぞれ黄金のトロフィーを掲げている。
再び「神頼み」が成就するのか、精密機械が完成を見るのか。両国のカラーを象徴するかのようなチーム同士が、白亜のキリスト像が見守る中でいよいよ激突の時を迎える。
文●小谷紘友