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【コラム】無敵艦隊に慢心なし…「チャレンジャー」精神で再び世界の頂点へ

2017.12.10

スペイン代表を率いるロペテギ監督 [写真]=Getty Images

 12月2日のスペイン紙『アス』は「不満は言えない」と報じた。前日に行われた2018 FIFAワールドカップ ロシアの組み合わせ抽選会だ。同紙の見出しは、ほぼ大半のスペイン人の気持ちを代弁したものだった。

 スペインは組み合わせ抽選会で、ポット2に振り分けられた。FIFAランキング上位から8チームずつ計4つのポッドに振り分けられたが、開催国ロシアがポット1に入るため、FIFAランキング8位のスペインはポット2に。ゆえにポット1にいる優勝候補筆頭のドイツ、ブラジルと同組になる危険性があった。スペインの行き先次第で「死のグループ」が生まれる可能性があると予想されたが、(厳密には閉幕後に大会を振り返るまでは分からないが)3つの強豪が同居する死のグループは生まれなかった。

 スペインは6月15日に欧州王者のポルトガルと対戦し、20日にイラン、25日にモロッコと対戦するグループBに組分けられた。現欧州王者であり、レアル・マドリードの大エースを擁するポルトガルと初戦で対峙するが、国内には悲観的な報道や予想は一切ない。むしろワールドカップ予選の両者のパフォーマンスを比較し、自信を抱いているという印象が強い。フランスで開催されたEURO 2016は歴史上で最も低いレベルの大会の一つで、その大会で優勝したポルトガルは90分で勝利したゲームが準決勝のウェールズ戦だけと記録を持ち出し、イベリア半島の隣国をドイツ、ブラジル、フランス、アルゼンチンのようには評価していない。リーガ・エスパニョーラでプレーした選手が7人いる隣国モロッコ、かつてレアル・マドリードの監督だったカルロス・ケイロスが率いるイランについても決して侮れない相手だとは伝えていない。少なくとも前大会のオランダ、チリ、オーストラリアのグループよりは難しくないという印象を国内のメディアも国民も抱いている。

 決勝トーナメントに進出した場合、優勝候補筆頭のドイツ、ブラジルとは準決勝まで当たらない。決勝トーナメント1回戦はロシアか、ウルグアイが予想され、頭を抱えるほど難しいライバルではない。フランス、アルゼンチンと対戦する可能性が高い準々決勝まではスムーズに勝ち進むのではないか。「不満は言えない」とは、そんな見通しの上に成り立っている。

フレン・ロペテギ

スペインは初戦でポルトガルとの対戦が決定した [写真]=FIFA/FIFA via Getty Images

 組み合わせ抽選後のスペイン紙『マルカ』のインターネット予想では、4万人の投票のうち、スペインの優勝を予想する人が最も多く投票の29パーセントを占めた。次にブラジルが24パーセント、ドイツが23パーセントで、12パーセントのアルゼンチン、8パーセントのフランスが続く。その数字からも、スペイン人の自信が伺える。スペインは前大会で惨敗したが、イスコを中心とした魅力的なサッカーをする予選の戦いぶり、そして本体化の組み合わせを見て、サッカー好きの国民はその自信と誇りを回復させたようだ。

 そんな報道の中、ひとりだけ厳しい姿勢を崩さない人がいた。記者がどれだけポジティブなコメントを引き出そうとしても、楽観と読み取られるような発言は一切しなかった。スペインのフレン・ロペテギ監督だ。

「複雑で難しくハードなグループだ。ワールドカップで楽なグループはない。ポルトガルは偉大すぎるチームで、さらに彼らは少し前にタイトルを勝ち獲っている。モロッコはコートジボワールに勝利し、予選を勝ち抜いた結束が強いチーム。イランは予選を無失点で終えており、私たちはとても高い要求をされる」

 指揮官はあくまで「複雑なグループ」と一貫した。トーナメントの展望を聞かれても、「グループリーグを突破していないのだから、仮定の事は何も言えない」と返答を突っぱねた。リッピサービスなどない。ワールドカップ予選のイタリア戦のパフォーマンスや予選の結果など絶賛されたが、指揮官は浮かれることはなく、地に足をつけて、ワールドカップに向けて強化を続けている。その指揮官の姿勢ゆえに国民は「今回の代表チームは勘違いせず、チャレンジャーとして戦いに向かっている」とさらに希望を大きくするのかもしれない。

文=座間健司

By 座間健司

フリーライター&フォトグラファー。フットサルとサッカーを中心にスペインで活動中。

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