2018年ワールドカップ、はじまりますね! そこで海外ZINEでは、世界各地のサッカー事情について調査&レポート。ペルーはなんと36年ぶりの出場! はじける国民! インターネット無料? 喜び余って祝日にしちゃう大統領!? 「サッカー優先」で回る暮らしぶりをお伝えします。
記事執筆・提供=japotina/「海外ZINE」編集部
■36年ぶりのW杯出場! まさかの大統領命令で祝日に
オラ!(スペイン語の挨拶)
マチュピチュやナスカの地上絵で有名な、南米ペルー在住のjapotina(ハポティーナ)です。他の南米諸国同様に、ペルーも「サッカー命」な国なんです。今回は、そんな白熱するサッカー事情をご紹介します。
「世界一厳しい予選」をくぐり抜けたペルー代表
絶対王者ブラジルやメッシ率いるアルゼンチンと正面衝突し、強豪ぞろいの南米グループ予選をギリギリで通過、36年ぶりのW杯出場を果たしたペルー。ただ、FIFA世界ランキング11位(2018年4月現在)と、実はとっても強いんです! それなのに36年ぶり出場だなんて、南米予選は想像を絶する激戦区。そのため、南米予選は「世界一厳しい予選」といわれています。
予選時は、国中が血眼になって、ペルー代表を応援していました。
みんな持ってるペルー代表のユニフォーム。もちろん着るのは人間だけではありません!?
歓喜の大統領命令で、なんと平日が祝日に!
さらに、ペルーが南米予選を突破しW杯出場が決定した瞬間には、突然の大統領命令が発令され、なんと翌日は平日だったにも関わらず、祝日になってしまいました!! 日本ではありえない喜びっぷりで、日本人のjapotinaはあんぐり。開いた口が塞がりません。さすがサッカー命のペルーです……。
テレビではW杯出場を果たした決定打の瞬間をエンドレスリピートです。それももちろんですが、歓喜に舞うサポーターたちの様子も繰り返し放映されていました。
ついにはインターネットまで無料に!
japotinaが契約している通信会社も、突然の宣言で、翌日はインターネット通信料が全て無料になりました!
どれだけ浮かれるのでしょうか……。
他にも、お店では大セールが行われるのはもちろんのこと、みんな外に出て大音量のサルサやラテンミュージックとともに踊っていました。
■大都会も、アンデス山脈でもアマゾンでも、サッカーは生活の一部!
上のようにW杯出場を果たしたら平日でも休日にしてしまうような、経済活動よりもサッカーを優先するペルー。大都会の首都リマのみに限らず、電気も水道もないようなアンデス山脈の高地に暮らす人々や、アマゾン熱帯雨林のジャングルに住む人々も、もちろんみんなサッカーが大好きです。
そんなペルー国内の1部リーグは、プリメーラ・ディビシオンと呼ばれ、1951年よりプロリーグ化されました。現在では16クラブが所属しています。一番人気は、首都リマに本拠地を置く、アリアンサ・リマ。日本の野球でいう巨人のようなチームです。2017年度の国内リーグでは11年ぶりに優勝を果たし、リマは大騒ぎでした。
アリアンサ・リマに限らず、ペルー人は誰しもが必ず自分のお気に入りチームを持っており、大事な試合になると、いくら家族であっても親友同士であっても、ライバルチームを応援する相手とはギスギスします……。
そんな勝敗が決まる大事な瞬間を見逃すわけにはいきません! 試合前はみんな急いで帰宅、路上でも緊張感があふれます。
ただでさえ、ペルーの首都リマは世界一交通マナーが悪いといわれているのですが、サッカーの試合前となると、もっと大変なカオスになります。上の写真ではお伝えきれないのが残念ですが、クラクションの音量もものすごいことになっているのです……。
■試合中はみんなで仕事を放棄するのがペルー流!
サッカーの試合の日は、みんながテレビの前で息巻きます。ただ、国際試合の場合、時差のため勤務時間中に試合があることもしばしば。「試合が見たいのに見れない……」、日本人なら誰しもそんな歯がゆい思いをしたことがありますよね!?
ペルーでは、ノープロブレム。
だって、会社命令で試合時間に合わせて早退もしくは遅刻出勤になるんです。むしろ会社命令にしないと、勝手にみんな無断欠勤しちゃいます。それは会社にとっても困るので、試合中は会社全体で仕事をしません。そうすれば、少なくとも試合の前後は、みんな真面目に働くから。まぁ、それに社長や上司たちも試合を見たいからね……。
会社員が仕事しなければ、もちろん個人の商店やタクシー運転手だって仕事をしません! いつもは渋滞がひどい金曜の夜の大通りだって、試合中はみんな観戦にもう夢中!
以前、こんな写真がペルーで一躍話題になりました。
なんと手錠をされた泥棒と捕まえた警察官が、路上で仲良く試合観戦しています! 仕事中の警察官や、はたまた泥棒だって試合が見たいのは同じ。これまた日本では考えられない光景です……。 日本では、一瞬で炎上しますね。
■国中から「帰化」を求められた日本人サッカー選手
さて、そんな日本から遠く離れたペルーで、地元の人間なら誰もが名前を知る日本人サッカー選手がいることをご存知ですか? ペルー人であるjapotinaの彼も即答していました。
33才ながら(2018年4月現在)今も現役の、澤昌克(さわまさかつ)選手。
澤選手は、2005〜2008年と2014〜2017年の2度にわたり、ペルーの1部リーグで大活躍されていました。2007年には、ペルーリーグの最優秀外国人選手賞を受賞したほど! 当時は、代表監督からも熱烈なラブコールがあったほど、国中が澤選手の帰化とペルー代表入りを望んでいましたが、残念ながら(?)最終的に澤選手が断り、ペルー代表には所属しませんでした。
澤選手が南米にきたきっかけは、実はペルーではなく、2001年にお隣の強豪アルゼンチンへのサッカー留学だそうです。ただ、怪我に見舞われ、アルゼンチンで思うように活躍できない頃、ペルーのクラブチームから声がかかり、2005年にペルーのチームへ移籍。そこからは前述の通りの大活躍をされました。
澤選手は2018年に日本に戻り、現在は柏レイソルでプレイしています。
ちなみに、澤選手の現在の奥様も、前の奥様も、なんとペルー人なんだとか……!
■ペルー人のサッカー観戦はまるでジェットコースター
最後に、ペルー人のサッカー観戦時の様子をご紹介して終わりたいと思います。南米予選の大事な一試合で、アルゼンチンとアウェイで激突したときの様子です。相手は強豪なだけになんとか引き分けにしたいところ……!
音量に注意して、下記ビデオをご笑覧ください!
まるでジェットコースターに乗っているかのようなこの雄叫び!!
ペルーでは、サッカーの試合時に親戚中が一堂に会し、みんなで叫びながら応援します。ビデオに写っているのはjapotinaの彼の家族や親戚たちです。すべてのご家庭でこの大騒ぎなので、街がどれだけすごいことになっているか日本人の想像を超えます……。
ゴールが決まれば、街中に雄叫びとブブゼラ(南アフリカのラッパ)が鳴り響く。近所迷惑なんて言葉は、この国に存在しません。遊園地やジェットコースターのない、まだまだ途上国のペルーでは、こうやってみんなサッカーの試合で大興奮し、日々のストレスを忘れ、人生を楽しみます。日本人のjapotinaは、最初はみんなの反応に笑ってばかりでしたが、近頃はどさくさに紛れて一緒にシャウトし、同化しています。なかなか気持ちいい体験です(笑)。
ぜひ南米を訪れた際は、サッカーの試合を観戦されてみてはいかがでしょうか? 日本人には驚きの異文化体験ができること間違いなしです!
チャオ!
By サッカーキング編集部
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