セルジ・ロベルトとシャビ(写真は2015年のもの) [写真]=Getty Images
14日に開幕する2018 FIFA ワールドカップ ロシア(W杯)で、優勝候補の一角に名を連ねているスペイン代表。中盤の要としてユーロ2008から国際主要大会3連覇に貢献した元同代表MFシャビが、2014年に引退した代表への自身の見解を示した。
スペイン代表は、イタリア代表と同組となったW杯欧州予選を9勝1分の首位で突破したものの、本大会出場国との連戦となった直前の国際親善試合では、3日のスイス代表との一戦には1-1のドローに終わり、9日のチュニジア代表との一戦にも1-0にとどまった。母国紙『ムンド・デポルティーボ』とのインタビューに応じたシャビは、「今回のW杯は各チームの実力が非常に拮抗している」との見立てを行った。
「今大会は多くのチームが優勝候補に挙げられている。いかなる相手も危険な存在であることは、チュニジアとの試合を見れば分かることだ。どのチームも良く走り、入念に準備をして来ている。それゆえ、選手個々のテクニックが勝敗を分ける試合が多くなりそうだ」
今大会のグループステージでは、15日の第1戦でユーロ2016覇者のポルトガル代表といきなり激突し、20日の第2戦ではイラン代表、25日の第3戦ではモロッコ代表とそれぞれ対戦するスペイン代表。W杯連覇を狙いながらグループステージ敗退を喫した前大会で、オランダ代表との第1戦に敗れて歯車が狂った経験を持つシャビは、初戦の重要性を説いた。
「スペインにはポルトガルとの厳しいデビューが待ち受けている。この試合がW杯における“ラ・ロハ”(スペイン代表の愛称)の行方を左右することになるだろう。なぜならポルトガルは守備が非常に良い強力なライバルだからだ。攻撃に関しても、誰しもが知るクリスティアーノ・ロナウドはもちろんのこと、ゴンサロ・ゲデスやベルナルド・シウバといった優れた選手もいる」
スペイン代表のプレースタイルにこだわりを持つシャビは、前大会終了後にビセンテ・デル・ボスケ前監督からバトンを受けたフレン・ロペテギ監督の手腕を高く評価すると共に、2大会振りの優勝を目指すチームにエールを送った。
「ロペテギ監督が代表のアイデンティティを保ってくれているのは嬉しい。パスをしっかりと繋ぐ僕たちのスタイルは、攻撃面においても守備面においても効果があることを、人々は理解する必要がある。ボールポゼッションが試合の支配者を決めるということをね。スペインは決定機を生かしさえすればいい。チャンスは間違いなく作れるのだからね」
その一方で、自身が24年間過ごしたバルセロナで右サイドバックのレギュラーを張るMFセルジ・ロベルトのメンバー落選を惜しんだシャビ。同ポジションにレアル・マドリードのDFダニエル・カルバハルとレアル・ソシエダのDFアルバロ・オドリオソラを選出したロペテギ監督の苦悩を慮りながらも、偽らざる本音を漏らしている。
「セルジ・ロベルトをW杯で見たかった。彼のことは昔から良く知っているので、代表に選ばれていたら個人的にも本当に嬉しかったことだろう。彼にはそれだけのクオリティがある。とりわけポリバレントな能力は秀逸だ。だが、幸運なことに僕はロペテギ監督ではない。多くの優れた選手の中から23人を選ぶのは決して簡単ではないからね」
本職である中盤の全てのポジションを自在にこなしたうえ、右サイドバックとしても高い能力を発揮し、逆サイドやウィングにも十分に対応できるS・ロベルト。シャビが嘆いた通り、W杯のメンバーから漏れたのは残念だが、それによりできた休暇を利用して日本を訪れたことをインスタグラムで報告している。
W杯出場国の中には、本大会間際になって指揮官を交代するというドタバタ劇を起こしたうえ、数少ない期待の若手をメンバーに選ばなかった新監督が、「彼はポリバレントでなかった」と苦し紛れに弁明するような代表も存在する。実現不可能な話ではあるが、ポリバレントなプレーヤーの代表格でありながら、ロシアの舞台に立つことができないS・ロベルトには、直前の親善試合でも連敗続きのそんなチームに入って欲しいところだ。
文=北村敦