コロンビア代表のクアドラード(左)とアリアス(右)[写真]=FIFA/FIFA via Getty Images
日本代表は19日に2018 FIFAワールドカップ ロシアの初戦を迎える。相手はコロンビア代表。言わずと知れた4年前の対戦相手であり、サブ組中心のメンバーに日本のディフェンスはズタズタにされた。今回は初戦ということもあり、前回はケガで欠場したラダメル・ファルカオ(モナコ)をはじめベストメンバーで挑んでくることは間違いない。
そのコロンビアはポゼッションからもカウンターからも得点を狙えるハイブリッドなチーム。その中でエースストライカーのファルカオとフリーマン的なトップ下であるハメス・ロドリゲス(バイエルン)が要注意人物であることは間違いないが、多くのチャンスは右サイドからもたらされる。その仕掛人がフアン・クアドラード(ユヴェントス)であり、そのスピードスターを堅実に支えるのが右サイドバックのサンティアゴ・アリアス(PSV)だ。
4年前の対戦も右サイドはこのコンビだった。世界トップクラスの推進力を持つクアドラードはボールを持って前を向いたらまずドリブルを仕掛けてくる。対面する守備者は少しでも油断すれば一気に突破され、そのまま置き去りにされてしまうが、突破されずに何とか付いていっても10メートル、20メートルと確実に深い位置まで引っ張り込まれる。そうした状況からクロスを上げてくれれば中央で対処はできる。より危険なのはバイタルエリアのハメスにボールを出され、10番が前を向いて決定的なラストパスやミドルシュートを狙われるシーンを作り出されることだ。もう一つは縦に抉ると見せかけて斜め前に切り込み、ペナルティエリア内のエッジからショートクロスを出されるケースだ。その時、ファルカオに一瞬の動き出しでフリーになられていたらシュートミスかGKのビッグセーブを祈るしかなくなる。
クアドラードがそうした前向きなプレーを常にできるのは後方からアリアスがフォローアップしているから。決して派手な右サイドバックではないが、今シーズンはエールディヴィジ(オランダ)の月間最優秀選手を受賞しており、攻守に渡る貢献が光るアリアス。コロンビア代表では前方のクアドラードに付かず離れずのポジションを取りながら、インサイドに向けて仕掛けるタイミングで外側を追い越す動きも見せる。また後方からのビルドアップがあまりスムーズとはいえないコロンビアにあって最も堅実にボールを扱えるのがアリアスであり、クアドラードに付ける縦パスはほとんど相手にカットされない。自ら縦に仕掛けてくることはほとんどないが、ディフェンスを一瞬で横にかわすテクニックがあり、プレスが来ても1フェイクで逆を取り、難なく狙ったところにパスを通してしまう。そうしたプレーは元日本代表の内田篤人に通じるところがある。何よりアリアスの強みは1対1の守備センスであり、相手のサイドアタッカーにドリブルで破られるケースはほとんどない。たとえ日本を代表するテクニシャンの乾貴士でも単独で突破することは至難の業だ。また縦のドリブルに強いだけでなく、良い形でクロスを上げさせない対応ができる。
推進力のクアドラードと後方から堅実に支えるアリアス。彼らとマッチアップすることが予想される長友佑都と乾はもちろんディフェンスで後手に回らない様にタイトなプレッシャーをかけていきたいが、彼らを封じるだけでは日本の強みである左サイドからの攻撃を発揮できなくなってしまう。特に長友はクアドラードの自由を奪うというチームの中でも最大級のタスクを担うが、どこで攻撃に出ていけるか。クアドラードは所属するユヴェントスでしばしばサイドバックを任されるなどアタッカーとしては守備の貢献が低い選手ではないが、やはり常に前掛かりになるためショートカウンター気味の攻撃では長友がクアドラードを出し抜いてフリーで前に出ていくシーンを作り出すことは可能だ。そうなると1対1のディフェンスに定評のあるアリアスに対して、乾とともに数的優位の状況を生み出すこともできる。
試合の主導権は中盤の攻防も大きく影響してくるところではあるが、コロンビアの右サイド、日本の左サイドで劣勢になるとかなり苦しくなるため、長友と乾の健闘に期待したいところだ。
文=河治良幸
By 河治良幸