(左)ムバッペに驚嘆したと語った(右)ヴァラン [写真]=Getty Images
2018 FIFAワールドカップ ロシア(W杯)を制覇したフランス代表の守備の要であるレアル・マドリードのDFラファエル・ヴァランが、母国紙『レキップ』とのインタビューで大会を振り返った。
近年、チーム内の不協和音や選手個人の身勝手な行為などにより、一体感の欠如が指摘されて来たフランス代表。ヴァランは、不名誉なレッテルを剥がせたことに満足感を表した。
「代表の一員であることを誇りに思っているし、フランス人であることに幸せを感じている。僕たちはフランス代表のユニフォームへの愛情を疑問視されて来た。だからこそ、『それは違う』ということを有言実行する必要があった。自分たちが国のために精一杯戦っているという自覚や自信は常にあった訳だけどね」
晴れて世界の頂点に立ったフランス代表だが、守備的かつ受動的なスタイルを批判する声も数多く上がっている。しかし、周囲の騒音は全く気にならなかったというヴァランは、現実的かつ効果的な戦いが出来たことに胸を張った。
「僕たちにとっては、醜くなることなど問題ではなかった。全てはチームのためだったからね。フランスは大会で最もぞっとするチームだったが、素晴らしかったよ。僕たちは冷血な暗殺者のようだった。クロアチアとの決勝はまさにそんな感じだったね」
25歳にしてW杯制覇を経験したうえ、レアル・マドリードでもチャンピオンズリーグ3連覇を達成するなど、同一シーズンにクラブと代表で世界の頂点に立った史上11人目の選手となったヴァラン。だが、今大会で大ブレークしたパリ・サンジェルマンのFWキリアン・ムバッペは別格だと感じているようで、最優秀若手選手賞を獲得した19歳の神童に舌を巻いた。
「僕も若い方だと思っているけど、彼はさらに若い。それにもかかわらず、彼は知的で成熟している。“モンスター”とか“エイリアン”といった言葉がまさに相応しい選手だね。僕はこれまで何人かの“エイリアン”に会って来たけれども、彼らはいずれも25歳から30歳までだった。だが、キリアンはまだ20歳にも達していない。これほど若い“エイリアン”を見るのは初めてだよ」
ヴァランが驚嘆したムバッペを筆頭に、W杯決勝のスタメンのうち6選手が25歳以下と若いフランス代表。攻守の鍵を握るアトレティコ・マドリードのFWアントワーヌ・グリーズマンとチェルシーのMFエンゴロ・カンテも、まだ27歳と円熟期が続いて行くことだろう。世界の頂点に立ったとはいえ、まだ選手個々の能力に頼っている感があるだけに、タレント軍団が成熟の時を迎えた暁には、史上最強と謳われるチームになっていても何らおかしくない。
文=北村敦