2018年ロシア大会では初戦でコロンビアを下した日本 [写真]=Getty Images
開幕まで1週間を切ったFIFAワールドカップカタール2022。どの監督も口を揃えて「初戦が重要」と語るが、確かにワールドカップでは初戦の結果でチームの命運が決まってしまうようだ。
出場チーム数が24から32に拡大され、現行のフォーマットとなったのは1998年のフランス大会。そこから前回2018年ロシア大会までの直近6大会で、ワールドカップのグループステージ初戦に勝利したのは「73チーム」となっており、そのうち「61チーム」が見事にグループステージを突破を果たしている。初戦に勝利したチームのグループステージ突破率は、なんと「83.6%」となっているのだ。
反対に、初戦を落とした「73チーム」はというと、わずか「8チーム」しか決勝トーナメントに進めておらず、グループステージの突破率は「11%」まで落ち込むことになる。また、初戦を引き分けた「46チーム」のうち「27チーム」がグループステージを突破しており、その突破率は「58.7%」。そのため初戦に負けないことが極めて重要になるようだ。
これは日本代表も例外ではない。出場した過去6大会のうち、初戦を落とした3大会(1998、2006、2014)はいずれもグループステージで敗退している。一方で、初戦に負けなかった3大会(2002、2010、2018)は、100%の確率で決勝トーナメントに進めているのだ。
そのため日本は11月23日に開催されるグループE初戦で強豪ドイツに負けなければグループ突破が見えてくる。一方、万が一にも負けることがあれば、ベスト16への道は非常に険しくなると言わざるを得ない。
それでは、ワールドカップ過去6大会の初戦の結果をおさらいし、初戦に結果が持つ重要性について深掘りしてみよう。
[写真]=Getty Images
■1998年フランス大会
突破率=初戦勝利100%、初戦敗戦0%、初戦ドロー50%
32チーム制となって初めての1998年大会は、初戦の重要性が顕著に表れた大会となった。グループステージ初戦の16試合で、勝利した11チームは漏れなく全て決勝トーナメントに進出。開催国にしてこの大会でワールドカップ初優勝を遂げるフランスも、初戦ではクリストフ・デュガリーやティエリ・アンリのゴールなどで南アフリカに3-0で勝利。勢いそのままグループステージを3戦全勝で突破して頂点まで駆け上がった。
一方で、アルゼンチンに0-1で敗れた日本を含め、初戦を落とした11チームは全てグループステージで敗退を余儀なくされた。FWラウールや現スペイン代表監督のルイス・エンリケを擁するスペインも、初戦でジェイ・ジェイ・オコチャのナイジェリアに敗れると、グループ最終戦のブルガリアに6-1で快勝しながらもグループ3位で敗退を余儀なくされた。
また、初戦で引き分けた10チームのうち半数の5チームがグループステージを突破している。
■2002年日韓大会
突破率=初戦勝利75%、初戦敗戦8.3%、初戦ドロー75%
初出場の1998年大会で3戦全敗に終わった日本は、共催国として2度目のワールドカップに臨み、グループ初戦のベルギー戦に引き分けて勝ち点1を獲得。日本にとってワールドカップでの初ポイントは、グループ突破の足掛かりとなるものだった。結局、日本は残り2戦にも勝利して勝ち点7で首位通過。同じH組からは、初戦で日本と引き分けたベルギーが2位突破を果たした。
この大会の初戦は「勝ち点1」が勝利と同等の価値を持っていた。というのも、この大会のグループ初戦で勝利した12チームうち、アルゼンチン、コスタリカ、ロシアを除いた9チームがグループステージ突破を果たした。初戦に勝利したチームの突破率は「75%」。一方で、グループステージ初戦で引き分けた8チームのうち、日本を含めて実に6チームが決勝トーナメントに駒を進めており、こちらも突破率は「75%」だったのだ!
この大会では、初戦を落としながらもグループステージを突破したのは1チームだけ(突破率8.3%)。そのチームこそがベスト16で日本を下し、最終的にベスト4に入るトルコだった。彼らは初戦でブラジルに敗れるも、残り2試合で勝ち点4を稼いで何とかグループステージを突破した。
■2006年ドイツ大会
突破率=初戦勝利84.6%、初戦敗戦15.4%、初戦ドロー50%
欧州開催ということもあり、ベスト8は欧州勢6チームと南米2チーム(ブラジル、アルゼンチン)となり、最終的には決勝でイタリアがPK戦の末にフランスを下して頂点に立った。そんな大会のグループ初戦では、13チームが勝利を収め、そのうち11チームが決勝トーナメントに駒を進めた(突破率84.6%)。
初戦に勝ちながらもグループ突破を逃したのはチェコと韓国の2チームだけ。韓国はFWアン・ジョンファンのゴールなどで初戦のトーゴ戦に勝利し、続くフランス戦も引き分けたが、最終戦でスイスに敗れて勝ち点4を稼ぎながらも3位で敗退を余儀なくされた。
一方で、オーストラリアに逆転負けを喫した日本を含め、初戦を落とした13チームのうち11チームが敗退を余儀なくされた。突破率はわずかに「15%」。初戦を引き分けたチームはというと「50%」(3/6)の確率で決勝トーナメントに駒を進めた。
■2010年南アフリカ大会
突破率=初戦勝利80%、初戦敗戦10%、初戦ドロー58.3%
初めてのアフリカ開催ということで、この大会では様々なワールドカップのジンクスが破られた。例えば、スペインが頂点に輝いたことで「欧州以外の開催では必ず南米勢が優勝する」というトレンドが崩れた。さらにスペインは「ワールドカップ初戦で敗れたチームは優勝できない」というジンクスをも覆して見せたのだ。
スペインは、グループステージ初戦でスイスにまさかの敗戦を喫して黒星スタート。しかし、そこから2連勝でグループを突破すると、決勝トーナメントは全て1-0のスコアで頂点に上り詰め、初優勝を遂げたのである。
だからといって「初戦が絶対説」は覆らない。圧倒的な実力を持つスペインが例外だったわけであり、グループ初戦で敗れた10チームのうち、決勝トーナメントに勝ち上がれたのはスペインだけ。突破率はわずか「10%」だった。一方で、カメルーンを1-0で下した日本を含め、初戦を勝利した10チームのうち8チームがベスト16に進出した(突破率80%)。
また、慎重な入り方をするチームも多かったようで、最近6大会の初戦の中で最もドロー決着が多かった。初戦16試合のうち6試合が引き分けに終わり、そのうち7チームがグループを突破した(突破率58.3%)。
■2014年ブラジル大会
突破率=初戦勝利85.7%、初戦敗戦21.4%、初戦ドロー25%
過去6大会で最も逆境を跳ね返したチームが多かったのが2014年大会だ。グループ初戦を落とした「14チーム」のうち「3チーム」がベスト16に進出したのだ。突破率は過去最高の「21.4%」。日本と同組のギリシャは、初戦のコロンビア戦に0-3で大敗を喫するも、続く日本戦に引き分けると、最後のコートジボワール戦を制して決勝トーナメントに進出した。ギリシャ同様、ウルグアイとアルジェリアも初戦を落としながら16強に勝ち上がった。
一方で、初戦を引き分けた4チームのうち、勝ち上がれたのはナイジェリアだけ。突破率は「25%」に留まり、初戦を落としたチームの確率(21.4%)とあまり変わらなかった。無論、初戦に勝利したチームの突破率は圧倒的で、14チームのうち12チームが決勝トーナメントに駒を進めた(85.7%)。
■2018年ロシア大会
突破率=初戦勝利76.9%、初戦敗戦7.7%、初戦ドロー83.3%
前回のロシア大会は、驚くべきことに「勝ち点1」が「勝利」の価値を超えてしまった! 初戦から強豪国同士が対戦したこともあり、B組のポルトガルとスペイン(初戦結果:3-3)、E組のブラジルとスイス(初戦結果:1-1)などは、初戦に引き分けた4チームが仲良くグループステージを突破したのだ。そのため、初戦で引き分けた全「6チーム」のうち、アイスランドを除いた「5チーム」がベスト16に駒を進めた。突破率は驚異の「83.3%」で、初戦に勝利したチームの突破率を上回ったのだ!
コロンビアを2-1で退けた日本を含め、初戦に勝利した13チームのうち10チームが16強に進出。突破率は「76.9%」に留まった。また、初戦に敗れたチームは絶望的で、13チームのうち突破できたのは日本に敗れたコロンビアの1チームだけ(突破率7.7%)。前回王者のドイツも、初戦でメキシコに敗れると、そこから立て直せずにグループステージ敗退。ドイツがワールドカップで16強に入れなかったのは19回目の出場にして初めてのことだった…。
その後の大会の行方と各チームの命運を大きく左右するグループステージ初戦。今大会はどのような戦いが繰り広げられるのだろうか。
(記事/Footmedia)
By Footmedia