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W杯優勝のカギは一体感…広島の元なでしこがエール 近賀「期待感は高い」、福元「十分世界と戦える」

2023.07.22

なでしこJにエールを送るS広島Rの福元美穂(左)と近賀ゆかり(右)[写真]=湊昂大

 FIFA女子ワールドカップオーストラリア&ニュージーランド2023が20日に開幕した。なでしこジャパン(日本女子代表)は22日にザンビア代表との初戦を迎え、26日にコスタリカ代表と、31日にスペイン代表と対戦する。

「ワールドカップはやっぱり特別ですね」。そう語るのは、サンフレッチェ広島レジーナに所属する元なでしこジャパンのDF近賀ゆかりだ。2005年に代表デビューを飾り、国際Aマッチ100試合に出場。ワールドカップには3度出場し、2011年には全6試合にフル出場して世界制覇に貢献した。「女子サッカーで言ったら、オリンピックの方が注目度は高かったけど、優勝してみると、サッカーにおけるワールドカップという大会の重み、価値はすごく感じました」

 同じくS広島Rに所属するGK福元美穂は、「女子サッカー選手にとって目標とする舞台なので経験できて良かった」と話す。2002年に代表デビューした福元は、国際Aマッチ81試合に出場。ワールドカップでは2003年大会にバックアップメンバーとして選ばれ、その後の3大会で本メンバー入り。2011年大会は、海堀あゆみ氏(現WEリーグコミュニティオーガナイザー)が守護神を務めたため、出場機会はなかったが、チームの一員として優勝に貢献した。

 日本中が歓喜に沸いたW杯制覇から12年。福元は当時を振り返り、「最後に優勝という形で終わることができて、今考えても夢のような時間をメンバーと一緒に過ごさせてもらったし、本当に貴重な経験でした。東日本大震災もありましたし、日本全体が優勝して一つになって盛り上がっていて、その場に関われたことがすごいいい経験でした」と話した。

 なでしこジャパンは2011年のW杯で初優勝し、2015年大会では準優勝を果たした。だが、2019年大会はベスト16で敗退。今回は3大会ぶりの優勝を目指す。世界的に女子サッカーが盛り上がる中、日本ではW杯制覇から10年後の2021年に女子プロサッカーリーグのWEリーグが始まり、今大会ではMF猶本光(三菱重工浦和レッズレディース)ら14名のWEリーガーがメンバーに入った。さらに国内だけではなく、長年ヨーロッパで活躍するDF熊谷紗希(ローマ)をはじめ、マンチェスター・CのMF長谷川唯やエンジェル・シティのMF遠藤純など、女子サッカーが盛んな欧米でプレーする選手も増えてきた。

 福元は今大会のチームについて、「国外に出て世界と戦っている選手もたくさん増えているし、本当にみんな上手だなと思う」と話し、「そこに日本の良さでもある組織力がプラスされたら十分世界と戦えると思うので頑張ってほしい」とエールを送った。

 自身もイングランドやオーストラリアなどでプレー経験を持つ近賀は、「東京五輪などでいろんな経験を積んでいる選手がいる。海外に出ている選手も増えてきて、海外のチームとやることに慣れてきたと思うし、彼女たちにとってはそれが日常だと思うので、本当に期待感は高い。『日本の女子サッカーのために』っていう思いも前より強くなっている雰囲気も感じる。応援したいし、やってほしいなと思います」と大きな期待を寄せた。

 W杯のような短期決戦をいかに勝ち抜けられるか。優勝した2011年大会を振り返ったとき、近賀はチームの“勢い”が記憶に刻まれているという。「ああいう大会は波に乗ったチームが強い。(2011年は)私たちがそうだったし、そういう雰囲気をどんどん出せるチームが実力以上のものが出せると思った」。そんな勢いを作るのに、チームの一体感が欠かせない。

「チームの雰囲気は大事になってくる。大会に入ると、試合に出られる選手、出られない選手が出てくる中で、チームの矢印が全員一緒っていうチームが強いと思うし、海外のチームを見ても、やっぱり優勝するチームは勝つ雰囲気を持っている。私たちが優勝した時はそれを持っていた自信があるし、この前の男子のW杯を見てもやっぱり雰囲気がいいなと思ったし、苦しい試合でも勝てるんじゃないかっていう雰囲気がチームにも漂っていたと思う。やっぱり『チームのために』っていうところが大事だと思う」(近賀)

 福元も、「2011年の大会は全く期待されずに挑んだけど、試合を重ねるにつれてチームも一つになっていった。チーム全体のつながりもそうだし、ポジションが近いDFとGKだったり、ボランチ同士だったり、サイドの連携だったり、そういった隣の人との絆やつながりが良くなっていった。やっぱり1人で守れないからみんなで守り、みんなで戦おうっていう思いが本当に一戦一戦強固になって優勝という結果になったと思う」とW杯優勝の秘訣を語った。

 チームとしてだけではなく、もちろん個々の活躍も不可欠。2人に今大会の注目選手を聞くと、どちらもWEリーガーの名前を口にした。近賀が「本当に好きな選手」と言うのがMF藤野あおば(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)だ。「シュートが上手いイメージがあるし、海外の選手相手にも動じないメンタルの強さを持っているような感じがする。この大会で活躍すればもっとステップアップすると思うし、本当に大きな一歩になる感じがする」と19歳の活躍に太鼓判を押す。

 福元は同じGKの山下杏也加(INAC神戸レオネッサ)の躍動を信じている。「2011年に優勝した大会も、ここぞっていうときに海堀選手がビッグセーブを見せてくれたので、大会ではそういうGKの役割が大きいし、すごく重要だと思う。山下選手のビッグセーブを期待したいし、攻撃の起点になるビルドアップも持っているので、世界の舞台でそれを思いっきり披露してほしい」

 女子サッカーが盛り上がる4年に1度の祭典が始まった。日本としてはWEリーグが開幕して以降、初めての大会。なでしこジャパンの活躍がまた日本の女子サッカーの未来を作る。近賀は、「今回の大会は、これまでと違った意味のある大会だと思うし、これが女子サッカーの発展につながるものになってもらいたい。女子サッカーの面白さをより多くの方に見てもらえればいいなと思う」と願いをなでしこジャパンに託した。

取材・文=湊昂大

By 湊昂大

Kota Minato イギリス大学留学後、『サッカーキング』での勤務を経てドイツに移住して取材活動を行う。2021年に帰国し、地元の広島でスポーツの取材を中心に活動中。

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