[写真]=Bongarts/Getty Images
文=鈴木智貴
日本を含め56カ国が加盟している国際プロフットボール選手協会(FIFPro)で弁護士を務めるオランダ人、ウィル・ファンメーゲン氏がとんでもない発言をし、現在ドイツでも物議を醸している。その内容とは、「マリファナはドーピング検査対象から外すべきだ」というものだ。
世界反ドーピング機構は今年1月1日より既に規則を一部改訂しており、試合後等の尿検査で検出されるカナビス(大麻)の量を従来の10倍まで認め、その規制を緩めている。しかし、ファンメーゲン氏からすれば、これでもまだ十分ではないようだ。
同氏はこう主張する。
「カナビスには、選手のパフォーマンスを向上させる物質は含まれていない。もちろんマリファナの摂取を奨励するわけでは決してないが、ドーピング物質のリストに含まれるべきではないと思っている。現在、若い選手にとってマリファナは、アルコールと同じくらい接触機会が多いものだ。カナビスは問題視され、アルコールは許される。カナビスを吸引してもほとんど正常であるのに、犯罪者と見なされてしまう」
しかしドーピングに関する専門家で、ニュルンベルクにある生物医薬研究所の所長を務めるフリッツ・ゼルゲル教授は「あまりにもバカげている」と、この考えを一蹴。大衆紙『ビルト』にそのコメントをよせている。
「残念ながら薬物は若者の間に出回り続けている。確かにマリファナ吸引を認めている国、または合衆国の州なども存在しているが、継続的な吸引は間違いなく脳に悪影響を及ぼす」
更に同教授はこう続けている。
「マリファナをドーピングリストから外すことで、何かの変化があるのだろうか? いずれにしてもドイツでは、マリファナの取引でさえ禁止されている。チームドクターがマリファナを与えるとでも? ファンメーゲン氏はこの意見を発表する前に、もう少し自分の考えを見直したほうがいいのではないか」
これまでブンデスリーガでは、2001年にドルトムントの元ガーナ代表FWイブラヒム・タンコに、ドーピング検査でのマリファナ陽性反応が検出され大問題になっており、またそれから2年後の2003年、ブレーメンのGKアレクサンダー・ヴァルケがマリファナの吸引により7カ月の出場停止を受けている。
いずれにしてもドイツでは禁止薬物の摂取に対し、サッカー界だけでなく法的にも厳しい処罰が待っている。ファンメーゲン氏の失言とも言えるこの仰天案に賛同する関係者は、極少数なのではなかろうか。
By 鈴木智貴