売って得た移籍金総額は約768億円…「安く買い、高く売る」ポルトの錬金術

ポルト

ポルトはこの11年間に選手売却で6億ユーロ以上の移籍金を得ている [写真]=Getty Images

 15日に行われたチャンピオンズリーグで、優勝候補バイエルン相手に金星を挙げたポルト。これで、ジョゼ・モウリーニョがチームを率いて欧州制覇を成し遂げた2003-04シーズン以来のCLベスト4入りに王手をかけた。

 11年前の奇跡の再現が期待されるポルトだが、その間、彼らは莫大な移籍金を手にしてきた。移籍マーケットにおいては、欧州有数の“勝ち組”として認識されているクラブだ。

 スペイン紙『アーベーセー』によれば、この11年間に選手売却で得た移籍金総額は6億ユーロ以上。現在のレートで日本円に換算すると約768億円以上という額になる。単純計算で毎シーズン約70億円近い移籍金を手にしている。

 もっとも、ポルトはただ選手を高額で売るだけのクラブではない。ピント・ダ・コスタ会長が徹底する「安く買って、高く売る」というポリシーに則り、選手獲得に投じる費用も極限まで抑えられている。

 その代表例が、かつて同クラブに在籍したハメス・ロドリゲスとラダメル・ファルカオのコロンビア代表コンビだ。

 サッカー選手の移籍情報を伝えるドイツメディア『Transfermarkt.de』の調べでは、前者は2013年夏のモナコ移籍時に4500万ユーロ、後者は2011年夏のアトレティコ・マドリード移籍時に4000万ユーロという高額の移籍金をクラブに残した。だが、ポルトが2人の獲得時に費やした額はそれぞれ735万ユーロと543万ユーロ。同じく、昨夏マンチェスター・Cへ4000万ユーロで売却したフランス代表DFエリアカン・マンガラも3年前にスタンダール・リエージュから、600万ユーロで獲得しており、いずれも桁が違うのはもちろん、その獲得費用は売却額の2割にも満たない金額だった。

 ちなみに、クラブ史上“最もお金を費やした選手”は、2008年夏に東京ヴェルディから加入したブラジル代表FWフッキで、その額は1900万ユーロ。ただ彼もまた、4年後にロシアのゼニト・サンクトペテルブルクへ移籍する際には、4000万ユーロという2倍以上のリターンをクラブにもたらしている。そして、獲得費用に1000万ユーロ以上かかった選手は、これまでフッキを含めて片手で数えられる程しかおらず、この11年間で手にした売却益は約4億ユーロ(現レートに換算して約512億円)になるという。

「超一流」とは呼べないまでも、前回のCL優勝以降、リーグ優勝7回、国内カップ優勝4回、ヨーロッパリーグ優勝1回を数え、近年のポルトガルで最も多くのタイトルを手にしているクラブとしては、かなりの“節約家”、あるいは“やりくり上手”と言えるだろう。

 そしてポルトは、この夏に向けても、すでに商売上手なところを発揮している。先月には、ブラジル代表DFダニーロを来シーズンからの6年契約でレアル・マドリードに売却したことを発表。その移籍金3150万ユーロ(約41億円)は、レアルがDFに支払った最高額になる。

 他にも、プレミアリーグやセリエAへの移籍が濃厚とされるコロンビア代表ジャクソン・マルティネスやメキシコ代表MFエクトル・エレーラ、ブラジル代表DFアレックス・サンドロなど、“高額商品”は数知れず。さらに、CLでの快進撃で彼らの市場価値はますます上昇している。

 もちろん、全てが良いことばかりではなく、昨年10月にあったような「スタメンにポルトガル人選手が1人も含まれない」という“国内組の空洞化現象”は、クラブのアイデンティティーに関わる問題として残っている。また「安く買って、高く売る」ことを可能としてきた、投資ファンドなどによる「第三者の選手保有」制度が今年5月から禁止されることも、ポルトにとっては逆風となる。

 だが、11年の時を経て、再び檜舞台に帰ってきたポルトガルの雄は、今オフの移籍マーケットでもビッグクラブをかき回す“隠れた主役”として多くの注目を集めるはずだ。

(記事/Footmedia)

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