移転お披露目式典
ベトナム1部VリーグのハノイFC改めサイゴンFCが4月17日朝、ホーチミン市内のホテルで、クラブ移転のお披露目式典を開催した。シーズン序盤での移転は前代未聞で、ベトナム国内でも賛否両論が巻き起こっている。
ホーチミンサッカー協会(HFF)は移転に肯定的だ。というのも、ベトナム最大の経済都市であるホーチミンには現在、1部クラブがなく、市民がサッカー観戦に飢えているということがある。しかし、同市に拠点を置いた過去の殆どのクラブが設立して数年で解散や活動停止したため、真の意味で市民の信頼を勝ち取るのはかなり難しいとみられる。
サッカー好きな国民のため、スタジアムに足を運びはするが、もともと地方出身者が多いホーチミンのような大都市では、熱烈なサポーターというのはまずいない。ハノイも同じで、国内屈指の強豪であるハノイT&Tですらホームでの観客動員には苦戦している。因みに、ハノイT&TとサイゴンFC(旧ハノイFC)はいずれも、企業複合体T&Tグループのドー・クアン・ヒエン会長の保有クラブであるが、運営組織がそれぞれ独立していることで、規定違反にはなっていない。
サイゴンFCのグエン・ザン・ドン会長はこの式典で、クラブの資本金増資と公開会社化を発表。それによると、資本金は250億VND(約1億2500万円)から1000億VND(約5億円)に大幅増資。6月をめどに発行するという新株はファンやサポーターなどの個人にも販売する。なお、サイゴンFCの株は1株1万VND(約50円)で、10株から購入可能となる見通し。サポーターが直接資本参加できる仕組みを作ることで、クラブへの関心と愛着を高めるのが狙いだ。
一方、移転に最も否定的だったのは、ベトナムプロサッカー株式会社(VPF)のカオ・バン・チョン社長だ。昨年までベトナム王者ベカメックス・ビンズオンのCEO(最高経営責任者)を務めていたこの若き指導者は、移転を強行しようとするサイゴンFCに対し、「シーズン中の移転決定は理解しがたい」と述べ、最後まで慎重な姿勢を貫いた。
実際、今回の移転では、シーズン中ということもあり、選手の住居やホームスタジアム、練習場など様々な問題をクリアしなければならなかった。また、ベトナムでは、家族の結びつきが強く、故郷から遠くに離れたくないという気持ちが強いため、選手・スタッフからの反発もあったはずだ。これらが解決したとしても、昨年まで応援してくれたサポーターはもうおらず、新たにサポーターズクラブを組織する必要がある。
サイゴンFCは移転後、ホームの試合でスタジアムを2試合連続で無料開放しているが、流行りもの好き且つ飽きっぽいホーチミンの人々の関心を繋ぎ止めるのは容易ではないだろう。式典でドン会長が話していたように、「フェアプレー精神をもって、魅力的なサッカーを続けていくこと」以外に近道はなさそうだ。
(アジアサッカー研究所/佐藤)
アジアのサッカークラブや事業者の”中の人”になって、本物のサポーターやスポンサーを相手にリアルな運営を体験し、楽しみながら学ぶ&自分を磨く海外研修プログラムです。ビジネスでも大注目のアジア新興国は、チャンスも無限大。何を成し遂げるかはあなた次第!日本にいては絶対得られない体験をこれでもか!と積重なてもらいます。経験・年齢・性別・語学力不問です。
http://samurai-fc.asia/
By サッカーキング編集部
サッカー総合情報サイト