シーズン後半戦で結果が求められる海外日本人選手たち [写真]=Getty Images
ヨーロッパで英気を養っているヴァイッド・ハリルホジッチ監督が、思わず頬を緩ませるようなニュースが立て続けに飛び込んできた。昨年11月の2018 FIFAワールドカップ ロシア アジア最終予選の第5戦、サウジアラビア戦で日本代表に新風を吹き込んだ海外組が、所属クラブで結果を残したのだ。
ヤング・ボーイズからヘントへ移籍した日本代表FW久保裕也は、新天地で鮮烈なデビューを飾った。ジュピラー・プロ・リーグ(ベルギー1部)首位のクラブ・ブルージュ戦でスタメン起用され、先制点となる直接FKを叩き込んだのだ。
Jリーグでプレーしていた当時やU-23日本代表での久保は、フリーキッカーのイメージを抱かせなかった。鮮やかな弧を描いた右足の一撃は、新たな可能性を示す意味でもインパクトの大きなゴールだっただろう。
もっとも、冬の移籍で加入した選手は、チームに足りない部分を補強する存在だ。「いきなりスタメンで起用され、すぐに結果を残した」といった表現が使われがちだが、クラブ側は即戦力として獲得している。「いきなり」も「すぐに」も、ヘントの首脳陣からすれば織り込み済みなのだ。
ベルギーの1部リーグは16チームで争われ、トップ6がチャンピオンシップラウンドと呼ばれるプレーオフへ進出する。久保のヘントは24試合終了時で6位につけており、4位とは勝点1差、5位とは同勝点、7位とは勝点1差というポジションだ。レギュラーシーズンが残り6試合となったなかで、来季のチャンピオンズリーグ出場をかけるプレーオフへの進出は予断を許さない。新加入選手の久保には、はっきりとした結果が求められるのだ。スタートは申し分のないものとなったが、23歳のアタッカーはさらにアクセルを踏み込んでいかなければならない。
ドイツのブンデスリーガでは、ケルンの日本代表FW大迫勇也が2ゴール1アシストを記録した。6-1の快勝に貢献したものの、対戦相手は最下位のダルムシュタットだ。ここで結果を出さなければどの相手からゴールを奪うのか、というカードである。ある意味では当然の活躍、と受け止めるべきだろう。
ペーター・シュテーガー監督の信頼をつかんだ今シーズンの大迫は、フランス人FWアントニー・モデストと補完性の高い2トップを形成している。モデストが得点ランク2位の14ゴールをあげているのも、大迫の直接的なアシストがあり、間接的なサポートもあるからに他ならない。
物足りなさがあるとすれば、大迫自身の得点数だ。ダルムシュタット相手の2発で、今シーズンのブンデスリーガ通算得点数はようやく「4」となった。ストライカーとしては、さらにペースをあげていく必要がある。
アシストをコンスタントに記録しても、守備の献身性をアピールしても、得点が少なければストライカーの立場は安定しない。逆説すれば、ゴールは何ものにも優る説得材料となる。1860ミュンヘンからケルンへ移籍したのも、冬の移籍で加入しながら6ゴールをマークしたのがアピールとなったからだ。シーズン開幕から好調を維持しているだけに、大迫にはドイツで自身初となる2桁得点を記録してほしいものだ。
ゴールが求められるのは、日本代表MF原口元気にも共通する。ヘルタ・ベルリンでプレーするこの25歳は、ウインターブレイク後の2試合でスタメンから外れている。積極的な仕掛けとアシスト、攻守におけるハードワークはパル・ダルダイ監督に認められているものの、いまだにノーゴールなのだ。
消化試合数が少ない時期ならともかく、すでにシーズンは折り返している。それでもなお無得点というのは、ポジティブな評価に黒い染みを落とすようなものだ。分かりやすい結果を残すことで、巻き返しを図ってほしいものである。
去就が気になるのは日本代表MF清武弘嗣だ。
セビージャで苦闘する彼には、リーガ・エスパニョーラ、ブンデスリーガ、MLS(メジャー・リーグ・サッカー)のクラブ、それにJリーグの複数クラブが興味を示していると言われる。セビージャ残留の可能性も、もちろんある。
欧州のマーケットが期限を迎える1月31日までに、清武は新たな戦いの場所を見つけられるのか。それとも、セビージャで捲土重来を期すのか──欧州のマーケットにとどまる意味は見落とせず、現実的には欧州でのプレーを続けるだろう。
ロシアW杯アジア最終予選で、チーム内競争を高めてきた彼らの状況は、ハリルホジッチ監督のチームにも無関係でない。それぞれのパフォーマンスを、注意深く見つめていく必要があるだろう。
文=戸塚啓
By 戸塚啓