インドのベンガルールFCU-18とアビスパ福岡U-18の親善試合が行われた
◆日本とインドをサッカーで繋ぐ
今年は安倍晋三首相とインドのナレンドラ・モディ首相が制定した日印友好交流年だ。また、日印文化交流60周年の年でもある。そこでインドのIT都市として有名なベンガルールでは、8月5日にインドの強豪クラブベンガルールFCU-18対アビスパ福岡U-18の親善試合が行われた。この試合はAFCから国際親善試合に認定され、在ベンガルール日本国総領事館からの後援、日印友好交流年記念事業として開催され、日本とインドの文化交流深化が目的とされた。現地では約半年前から準備が開始し、企業からの協賛金募集やベンガルールFC側との交渉など、ゼロから現地在住日本人たちによって準備された。
◆インドのサッカー人気
インドで人気のスポーツといえばクリケットである。しかし、2014年のインドスーパーリーグ開幕以降、アレッサンドロ・デル・ピエロやロベルト・カルロス、マルコ・マテラッツィ、ディエゴ・フォルランなどがインドでプレーし、世界中から注目を浴びた。今では、クリケットに迫る勢いでサッカー人気が急上昇している。インドのシリコンバレーと呼ばれているベンガルールには多くの若者が集まることから、サッカーがとても人気である。2014年以前、1部しかなかったベンガルールアマチュアリーグは現在4部まであり、1000人を超えるインド人が所属している。そんなサッカー人気が急上昇している都市で活動にあるベンガルールFCは近年インドリーグで2回優勝している強豪チームだ。インド代表キャプテンでもある、スニル・チェトゥリが所属し、チームを牽引し2016年AFCカップでは2位というインド史上初の結果を残している。インド代表でも活躍し、2015年に171位だったFIFAランキングを2017年8月発表されたFIFAランキングでは97位まで上昇させた。ベンガルールFCはアカデミーにも非常に力を注いでおり、インド全土から優秀な選手をスカウティングし、外国人指導者のもとで育成している。今回の親善試合も、アカデミーの生え抜きの選手たちが選出され初めての国際試合に挑むことになった。
◆アビスパ福岡U-18初のインド遠征
8月3日深夜、アビスパ福岡U-18はベンガルール空港に到着した。全員がもちろん初めてのインドだ。日本クラブユース選手権から1週間も経たない日程での遠征となり、少し疲労感もある様子だった。8月4日には記者会見があり、両監督とキャプテンの初顔合わせとなった。午前中、チーム練習も行い、選手たちは軽く汗を流した。試合形式の練習では、楽しんでいる様子も伺えた。午後は在ベンガルール日本国総領事館に表敬訪問し、総領事から激励の言葉を頂いた。市内観光もし、整備されていない道路を見たり、牛が道路を歩いている風景を見たり、選手たちにとっては驚きの連続であった。8月5日の試合当日には現地在住日本人、ベンガルールFCのファン、日本に興味があるインド人など多くの人が集まった。試合は前半アビスパ福岡U-18のペースで進むが決定機を活かせず、0-0で終えた。ハーフタイム中ロッカールームでは監督から「こんなチャンス滅多にないから、もっとチャレンジをしろ!」と檄が飛ばされた。その言葉が選手たちに響いたのか、後半は積極的なプレーが増え、11番岸による2ゴールで相手を引き離した。しかし、ホームのベンガルールFCもこのまま負けるわけにもいかず、コーナーキックから意表をついたロングシュートで1点巻き返し、得点差を縮める。最後までベンガルールFCが攻め続けチャンスを作り出すが、一歩及ばず、2-1でアビスパ福岡U-18の勝利で試合は幕を閉じた。
◆アビスパ福岡U-18がインド遠征で得たもの
試合後、現地在住の日本人たちにより慰労会が用意された。ベンガルールに住む50名の日本人が集まり、選手たちを囲んだ。実際に海外で活躍する大人たちから生の声を聞くができ、選手たちも多くの刺激をもらったようだ。今回の遠征で海外への意識が大きく変わった選手が多くいた。これまで、なんとなく将来海外に行けたらいいなと思っていた感情が、今回実際に現地の大人たちと話して、将来必ず海外に行って活躍したいと思うようになった選手もいたようだ。監督も「日本では大人と接する機会が少なく、こういう機会は海外だからこそ経験できる。選手たちが大人と触れ合うことができ、いい刺激をもらうことができた」と語った。実際インドに滞在したのは3日間だけだが、選手の成長を実感することができた。これから日本サッカー界を変えていくのは、若い世代からの海外経験なのではないだろうか。
By アジアサッカー研究所