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中国サッカーの未来を担う10人のキーマン

2017.12.12

中国サッカーは今、転換期にある。 市場規模の拡大、自国リーグの発展、代表チームの成長、国内外の関心の高まり。ただそうしたものは突然、起きたわけではなく、携わる人と人によって育まれてきた。そしてここがさらなる飛躍のポイントとなるならば、そこには必ず、重要人物が存在する。中国サッカーは今、彼らを中心に、世界への進出を加速させていく――。

文=黄志铭(WYFAグループCOO)
写真=ゲッティ イメージズ

徐 根宝(Xu Genbao)
アカデミーの礎を築き上げた中国サッカーの“ゴッドファーザー”


徐根宝氏は、2001年に上海近郊の崇明島に「根宝サッカーアカデミー」を設立。現在の中国代表の張琳?や武磊など、多くのトップ選手を輩出してきた。05年には上海東亜を設立して自ら監督に就任。3部リーグだった新興クラブを7年で中国スーパーリーグまで押し上げた(現在の上海上港)。今年8月に行われた全国男子サッカー選手権において、上海のU-18とU-20の両チームがそれぞれ優勝を飾ったが、このチームの半数以上は、根宝サッカーアカデミー出身の選手だった。根宝サッカーアカデミー出身選手は、今後の中国代表の担い手として期待が寄せられているが、その礎を築いた現在74歳の徐氏は、「中国サッカー界のゴッドファーザー」と呼ばれている。

許 家印(Xu Jiayin)
サッカーで名声を広めた広州恒大のオーナー企業会長


許家印氏は不動産業者である恒大グループの会長だ。2010年2月、約17億円を投じて広州FC(広州恒大)の経営を引き継いだ。その後、広州恒大が今シーズンまで7年連続のリーグ優勝を達成するなど、輝かしいタイトルと共に成功を収めた人物だけに、中国サッカーに決して少なくない影響力を持っている。不動産業で巨万の富を築いた許氏にとって、自らの名声を全国に広めた要因は、サッカーでの成功と、派手なパフォーマンス。今年の全国人民代表大会に出席した許氏は、中国サッカーの課題として「ユースサッカーの発展」を取り上げ、育成分野への投資の必要性をメディアに訴え掛けた。13年に開校した「恒大サッカースクール」も、生徒2800人を抱える世界最大のサッカースクールとして、国際的な注目も集めている。

マルチェロ・リッピ(Marcello Lippi)
中国国民に夢を与えた世界的に知られる名指揮官


UEFAチャンピオンズリーグ(1996年、ユヴェントス)、AFCチャンピオンズリーグ(2013年、広州恒大)、FIFAワールドカップ(06年、イタリア代表)の3大会で優勝した史上初の監督。その成功に満足することなく、16年10月に、おそらく彼のキャリアで最も困難な仕事となる中国代表監督に就任した。2018FIFAワールドカップアジア最終予選の4試合でわずか勝ち点1しか挙げられなかった代表チームを復調させ、就任から6試合をわずか1敗で乗り切って勝ち点11をもたらした。ロシア行きの切符を逃し、失意にかられる中国国民に対して、「いつか再び、W杯に出場できる」という夢を与えた戦いぶりだった。中国代表の短期的な目標は、19年のアジアカップでのタイトル奪取だ。

李 毓毅(Li Yuyi)
今後10年間の中国サッカーを担う中国サッカー協会副主席


李毓毅氏は2015年12月に中国サッカー協会(CFA)副主席に選出された。CFAが中国政府の傘下を離れて独立する上で、重要な役割を果たした人物である。李氏はCFAの主流グループにおける改革者であり、プロリーグ実行局や大会部門、育成部門など、複数の部門を担当している。国営放送『中国中央電視台』を通じて「中国サッカーが遅れを取っている最大の理由は、CFAが遅れているからだ」とまで語り、中国サッカーの問題点に言及。中国サッカーの改革実現に向けたプランニングや実行力に期待が集まり、この先10年間の中国サッカー界におけるキーマンとなることは間違いない。

文 筱婷(Wen Xiaoting)
貴州恒豊智誠に魔法を掛けたクラブオーナーの愛娘


貴州恒豊智誠は2017年のCSLにおける最大のサプライズだった。残留を目標に掲げた昇格1年目にもかかわらず、上位クラスの7位でフィニッシュ。その中心にいたのがクラブオーナー文偉の娘、文筱?会長だ。15年に彼女が現職に任命された後、チームは1年でCSL昇格の快挙を成し遂げた。彼女の“魔法”は、スペイン人のグレゴリオ・マンサーノ監督を迎えた今シーズンも解けなかった。文会長は独自の手法でクラブ周辺にサッカー文化を創出してクラブの成功に寄与してきた。ファンとの交流活動や各種イベント、チャリティーなどを企画してクラブを盛り上げ、文会長に象徴される貴州恒豊智誠は、若さとエネルギーと希望にあふれる存在として、ピッチ内外で注目度を高めている。

岡田武史(Takeshi Okada)
独自の育成システムを発展させて中国に新哲学をもたらした日本の知将


岡田武史氏は中国のサッカークラブで監督を務め上げた数少ない日本人の一人。2011年12月に杭州緑城と契約して以来、13年に中国を離れた今でも、中国サッカーとの強い結び付きを持ち続けている。岡田氏は、中国に新たなサッカー哲学をもたらした。杭州緑城での改革的手法には周囲からの批判もあったが、独自の育成システムを発展させて若い選手にチャンスを与え続け、ファンやクラブオーナーからは称賛を集めた。外国人スターがそろう上位クラブを打ち負かすことができず、13シーズンに降格を回避した後、辞任。ただし、その後も杭州緑城の若手育成顧問として関係を継続。「次世代のスター選手を育て上げる」という姿勢は、今後の中国サッカーに最も求められているものだ。

鄧 涵文(Deng Hanwen)
不動のレギュラーを約束された中国が生んだ若き右サイドバック


中国リーグ1の北京人和(来シーズンはCSLに昇格)でプレーする、22歳の右サイドバック。中国代表としても5試合に出場して2ゴールを記録し、23歳以下では中国最高の右サイドバックだと言える。今年6月に行われたフィリピン代表との国際親善試合では、左足で1得点、右足で1得点の2ゴールをマーク。スピードや柔軟性、優れたボールコントロール技術など多彩な能力を見せた。また、ゴールだけではなく、右サイドバックとして、アシストやスペースの使い方にも長け、守備においても、スピードと当たりの強さを武器に相手の自由を奪っている。代表チームの右サイドバックのファーストチョイスであり、今後10年間、不動のレギュラーを約束されたような能力の持ち主である。

張 玉寧(Zhang Yuning)
ブレーメンでプレーする20歳にして中国最高のストライカー


現在20歳の張玉寧は、杭州緑城のアカデミーでキャリアをスタートさせ、18歳の時にオランダのフィテッセと契約。2年間で27試合に出場して4ゴールを記録した。数字的には決して華やかなものではないが、海外でプレーする中国人としては最高のストライカーである。今年7月にはプレミアリーグのウェスト・ブロムウィッチ(WBA)と3年契約を交わし、2年間のレンタルでブレーメンへと移った。WBAのオーナーは中国人実業家の頼国伝であるため、張の獲得はビジネス面が主導したという声も確かにあるが、ブンデスリーガでの活躍を続けることで、WBAにとって素晴らしい取引だったことを証明できるだろう。すでに代表チームにも定着しており、新世代の中国を背負って立つ存在となる可能性を十分に持っている。

張 近東(Zhang Jindong)
インテルと江蘇蘇寧、2つのクラブを保有するオーナー


張近東氏は江蘇省南京に拠点を置く蘇寧電器の創始者の一人にして、最大の株主。2016年に約350億円を投じて、欧州制覇3回を誇るイタリアの名門クラブの株式70%を取得し、CSLの江蘇蘇寧とインテルの2クラブを保有することとなった。しかし、新生インテルの初年度は7位と振るわず、17-18シーズンはルチアーノ・スパレッティ新監督を迎えて好発進を切ったものの、今度は江蘇蘇寧が低迷を続けている。張氏が新たな王朝を築くためには、長期的な視野に立った若手育成や、インフラの整備に集中する忍耐力が必要になりそうだ。

譚 茹殷(Tan Ruyin)
AFC女子最優秀選手賞にノミネートされた“中国のアンドレア・ピルロ”


23歳の若手ながらも、2016年のAFC女子最優秀選手賞に中国人選手として10年ぶりにノミネートされた逸材。3年前は無名だったが、今では女子代表に欠かせない存在となり、負傷を抱えたまま挑んだリオデジャネイロ五輪では、フルタイム出場を果たした。試合を読む力、緩急を付ける力、パス能力はすでに、アジアの水準を凌駕する。加えてシュート能力も高く、リオ五輪の南アフリカ戦で決めた40メートルの強烈なゴールは、世界を驚かせた。当然、今後10年間の女子代表を引っ張っていく存在だが、何よりも彼女自身の存在をもって、年齢に関係なく才能は開花するものだと、中国サッカー界に示したことが大きい。

By サッカーキング編集部

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