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アジア随一の多様性を誇り、新時代へ突入するフィリピンサッカーの2017年

2018.01.10

2017年はJPVマリキナでプレーした大友慧(左)と下野淳

■アセアンサッカー界を席巻するフィリピン代表

 タガログ語で雑種の野犬を意味する“アズカルス”の愛称で、近年アセアンサッカー界で台頭しつつあるフィリピン代表は、2019年にアラブ首長国連邦で開催されるAFCアジアカップへの出場を目指し、2017年は同大会のアジア3次予選を戦った。

 フィリピン代表は、イエメン、タジキスタン、ネパールと同居したグループFで、2勝3分の無敗で首位を走り、 3月に行われる最終節(タジキスタン戦)を引き分け以上で、念願の本大会初出場を決めることになる。

 2000年代初頭まで、加盟するアセアンサッカー連盟内でも弱小国のひとつに数えられていたが、2010年に開催されたAFFスズキカップでベスト4に勝ち上がる番狂わせを演じる。

 その後も3大会連続でベスト4入りするなど、後述する強化方針が実を結び、FIFAランキングでもアセアン勢最上位(最新ランクではベトナムに次ぐ2位)につけ、台風の目となっている。

フィリピン・フットボールリーグの発足

 2017年は国内リーグでも大きな変化があった。2010年から開催していたプロとアマが混在するユナイテッド・フットボールリーグを発展的に解消。アジアサッカー連盟による国内リーグ運営の指針に沿う形で、新たにフィリピン・フットボールリーグを発足させたのだ。

 新しいリーグには8クラブが参加。それまでは主に首都マニラで試合を行なっていたが、クラブのホームタウン制を盛り込み、バコロド、セブ、ダバオなど地方都市でも開催するホームアンドアウェー方式を開始している。

 4回戦総当りのリーグ戦と、上位4チームによるファイナルシリーズを行なったフィリピン・フットボールリーグは、ファイナルシリーズの決勝でグローバル・セブに競り勝った名門セレス・ネグロスが初代王者に輝いた。

 日系資本のJPV・マリキナ(JPボルテス)は、4人の日本人選手と4人の日系ハーフ選手などを擁してリーグに臨み、9勝6分13敗の6位で終えている。

■アジアの舞台で結果を残したフィリピン


 国内リーグを制したセレス・ネグロスと、準優勝のグローバル・セブは、アジアの大会も席巻する。

 大会フォーマットに大幅な変更が加えられたAFCカップに出場した両フィリピン勢は、共にアセアン地区のグループステージを首位突破。その後、セレス・ネグロスがアセアン地区を制するなど結果を残した。

 アジアサッカー連盟による国内リーグ運営の指針に従い、プロ化、ホームタウン制、外国人選手の登録枠などを正式に導入したフィリピンサッカー連盟。

 それまでのローカルルールを排除した新リーグの初年度に、クラブレベルでもアジアの大会を勝ち上がったことは、アジア各国協会の国内リーグ運営の是非に一石を投じたと言って良いだろう。

フィリピンにルーツを持つ選手が集結する意味

 フィリピンサッカー連盟は近年、フィリピンにルーツを持つ国外で出生または生活するハーフ選手などのスカウティングを行ない、主に欧米でプレーするそれらの選手を次々に召集している。

 イングランド、ドイツ、スペインといったサッカー先進国の若年代カテゴリーを中心に、ハーフ選手などの国籍取得を促して、代表活動と並行して国内のリーグでプレーすることで、フィリピンのサッカーを取り巻く状況を一変させることに成功している。

 人口の1割ほどが出稼ぎで国を離れ、フィリピン国内の家族や親族の生活を支えているという国情ゆえ、両親のいずれかがフィリピン人という選手が、世界中に点在していることに着目したのだ。

 周知の通り、日本にも多くのフィリピン人が渡っていて、現在のフィリピン代表には、佐藤大介(浦和ユース?仙台大学)や嶺岸光(聖和学園?仙台大学)といった日系ハーフ選手も名を連ねている。

 サッカー選手や関係者による、秩序なき国籍取得の策略が世界中で頻発する中、実際にフィリピンにルーツを持つ選手に白羽の矢を立てる強化方針は、実に真っ当で健全なものであり、フィリピンの大衆にも受け入れられている模様だ。

 フィリピンサッカー界のさらなる躍進を確信した2017年だった。

文=池田宣雄
協力=アジアサッカー研究所

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