“内弁慶”なクラブたち [写真]=Getty Images
サッカー界には一つの通説が存在する。「ホームチームの方がアウェイチームよりも有利」だという通説だ。
ホームで圧倒的な強さを見せるチームが、敵地に赴くと途端に弱くなる。あるいは本来の実力を発揮できない。Jリーグではあまり見られない光景だが、欧州サッカーでは珍しい話ではない。
2016-17シーズンのプレミアリーグでも、ホームチームの勝率は49.2パーセントを記録したのに対して、アウェイチームの勝率は28.7%に過ぎなかった。そんな研究結果もある。シーズンによって数値に多少の変動はあるものの、アウェイチームの勝率がホームチームの勝率を上回るということはほぼありえない。
熱戦が繰り広げられているチャンピオンズリーグ(CL)においても、「ホーム有利」は明らかだ。今シーズンの決勝トーナメント1回戦ファーストレグの結果は、ホームチームの4勝1分け3敗。勝率50パーセントを達成している。近年は見直しの動きがあるとはいえ、“アウェイゴールルール”が存在するのも、敵地で戦うチームにはハンデがあるという前提があるからだろう。
では、ホームとアウェイの成績が好対照なチームはどこなのか。今シーズンの欧州4大リーグ(プレミアリーグ、リーガ・エスパニョーラ、ブンデスリーガ、セリエA)の全78チームを対象に、ホームとアウェイの1試合平均勝ち点を比較。その差が最も大きなチームトップ20を導き出した。
まずは、結果からご覧いただこう。以下、括弧内の数字は「ホーム平均勝ち点/アウェイ平均勝ち点/平均勝ち点の差」である。以下の順位は、「平均勝ち点の差」に基づいてつけられている。
欧州4大リーグ ホーム&アウェイ勝ち点差ランキング
1位 マジョルカ(1.54/0.17/1.37)
2位 バルセロナ(2.85/1.50/1.35)
3位 グラナダ(2.08/0.85/1.24)
4位 レバンテ(1.92/0.69/1.22)
5位 バレンシア(2.08/0.92/1.16)
6位 フランクフルト(1.75/0.64/1.11)
7位 アラベス(1.69/0.67/1.03)
8位 トッテナム(2.00/1.00/1.00)
9位 エヴァートン(1.85/0.86/0.99)
10位 アスレティック・ビルバオ(1.75/0.77/0.98)
11位 ドルトムント(2.45/1.50/0.95)
12位 アトレティコ・マドリード(2.15/1.25/0.90)
13位 アウクスブルク(1.64/0.75/0.89)
14位 ベティス(1.62/0.75/0.87)
15位 エイバル(1.45/0.62/0.84)
16位 ユヴェントス(2.83/2.00/0.83)
17位 ボルシアMG(2.36/1.55/0.82)
18位 ウディネーゼ(1.50/0.69/0.81)
19位 ニューカッスル(1.54/0.79/0.75)
20位 アストン・ヴィラ(1.31/0.57/0.74)
上記のとおり、1位に輝いたのは久保建英が所属するマジョルカだった。ホームとアウェイの平均勝ち点の差は「1.37」。今季はアウェイで勝利がなく、12試合でわずか2ポイント(0勝2分け10敗)しか稼いでいない。アウェイの平均勝ち点(0.17)は、レガネス(0.67)を下回る欧州4大リーグワースト記録になる。
2位にランクインしたのはバルセロナだ。リーガ・エスパニョーラで首位を奪還した彼らだが、ホームとアウェイの成績は実に対照的。12勝1分けと無敗をキープするホームの平均勝ち点は「2.85」。ここまでホーム全勝のリヴァプール(平均3.00)に次ぐ成績を残しているが、アウェイの平均勝ち点は「1.50」と、欧州4大リーグでは20番目の成績になる。敵地でのゲームを苦手としていることは度々報じられているが、数字で見てみると改めて“内弁慶チーム”であることが分かるだろう。3月1日には敵地サンティアゴ・ベルナベウで、レアル・マドリードとの“エル・クラシコ”を控えているが、勝利をつかむことができるのか注目される。
続く3位から5位までも、スペインのチームが並ぶ。5位のバレンシアは今季ここまでホームで無敗(7勝6分け)。公式戦でも、今季本拠地で敗れたのはCLグループステージ第2節のアヤックス戦(0-3)の1試合だけだ。19日に行われたCL決勝トーナメント1回戦ファーストレグでは、敵地でアタランタに1-4の大敗を喫したが、ホームで迎えるセカンドレグに奇跡を起こす可能性もゼロではない。
なおトップ5をスペイン勢が占めたが、上位20チームの顔ぶれを見ても、最多9チームがスペイン勢だった。それだけ、リーガ・エスパニョーラはホームとアウェイのパフォーマンス差が顕著なリーグだと言える。
上位20チームを国別に分類すると、1位がスペイン勢で9チーム。2位がドイツ勢で5チーム(最多勝ち点差はフランクフルトの1.11)、3位がイングランド勢(最多勝ち点差はトッテナムで1.00)で4チームだった。最下位のイタリア勢に至っては、上位20チーム中わずか2チーム(最多勝ち点差はユヴェントスの0.83)にすぎなかった。
では、セリエAではホームとアウェイに有利不利がないのかと言えば、そうでもない。今回の調査で、同リーグでは別の現象が起きていることが分かった。
実は、ホームよりもアウェイで好成績をあげるチームが多いのが、今季のセリエAの特徴なのだ。アウェイの平均勝ち点がホームのそれを上回ったのは、全20チーム中9チーム。ほぼ半数のチームがアウェイを得意としている(=ホームを苦手としている)ことがデータで示されている。
該当のチームは以下のとおり。(※括弧内の数字は「ホーム平均勝ち点/アウェイ平均勝ち点/平均勝ち点の差」)
ナポリ(1.17/1.69/0.53)
アタランタ(1.67/2.08/0.42)
ブレシア(0.46/0.83/0.37)
インテル(2.08/2.42/0.33)
フィオレンティーナ(1.08/1.25/0.17)
レッチェ(0.92/1.08/0.16)
ローマ(1.62/1.75/0.13)
ボローニャ(1.31/1.42/0.11)
ミラン(1.42/1.46/0.04)
もちろん、ミランのようにホームとアウェイの平均勝ち点差がほとんどないチームもある。ただ、ホームで思うように勝ち点を伸ばせていないチームが多いのも事実だ。
なお、イングランドとスペインは全20チーム中2チーム(10%)、ドイツは全18チーム中7チーム(約39%)が、ホームよりもアウェイの平均勝ち点が高かった。ブンデスリーガもセリエAと似たような状況にあり、大迫勇也の所属するブレーメンは、ホームの平均勝ち点が「0.45」、アウェイの平均勝ち点が「1.00」で、その差は「0.55」。欧州4大リーグの中で、最も“外弁慶”なチームだった。
セリエAでは、3月1日にユヴェントスとインテルによる大一番が行われる。ユヴェントスは今季ホームの平均勝ち点(2.83)がリーグトップ、対するインテルは今季アウェイの平均勝ち点(2.42)がリーグトップであり、“ホーム最強チーム”と“アウェイ最強チーム”の激突となる。
しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、無観客試合となることが決定。ホームチームにも、アウェイチームにも大きな影響を及ぼす観客がいないことで、両者のパフォーマンスには多少の変化が生じるだろう。普段と異なる環境でどれだけのプレーを見せられるか。優勝を占う一戦では、真の実力が試されそうだ。
(記事/Footmedia)
By Footmedia