マンチェスター・Uの補強第1号となったマラシア [写真]=Getty Images
マンチェスター・Uが5日に獲得を発表したオランダ代表DFタイレル・マラシアは、今季からチームを率いるエリック・テン・ハフ新監督にとって補強第一号となった。様々な要素が絡み合う移籍市場において、この移籍がテン・ハフ監督の意向をどれほど反映したものかは分からないが、大体の場合、新監督の獲得第一号をみれば、その後のチーム作りの方向性を知ることができる。そこで今回は、イギリスメディア『アスレティック』がまとめた直近20年での名将たちの補強第一号を紹介しよう。
■カルロ・アンチェロッティ
クラブ:レアル・マドリード(第一次)
獲得選手:ダニエル・カルバハル(585万ポンド)
現在二度目のレアル・マドリード監督を務めているカルロ・アンチェロッティが、一度目に同チームを指揮した際、最初に獲得したのがスペイン代表DFダニエル・カルバハルだった。カルバハルは2012年夏にレヴァークーゼンへ移籍したが、そのシーズンにドイツ紙『ビルト』でブンデスリーガ年間ベストイレブンに選出される大活躍を見せたことで、クラブが1年で買い戻しオプションを行使した。そこからケガなどの離脱はあれど、不動の右サイドバックとしてチームを支え、5回のチャンピオンズリーグ(CL)優勝を含む多くのタイトル獲得に貢献。費用対効果を考えれば、信じられないバーゲン価格だったと言えるだろう。
■クラウディオ・ラニエリ
クラブ:レスター
獲得選手:エンゴロ・カンテ(780万ポンド)、ヨアン・ベナルアン(600万ポンド)
後に“スポーツ史上最大の番狂わせ”と言われるプレミアリーグ優勝を果たし、“ミラクルレスター”と呼ばれるチームを作り上げるクラウディオ・ラニエリ。そんな指揮官が就任後、最初に獲得したのはその中心メンバーとなるフランス代表MFのエンゴロ・カンテだった。フランスのカーンからたった780万ポンドの移籍金でやってきたカンテは、一緒に加わった元チュニジア代表DFヨアン・ベナルアンの移籍金と合わせても1380万ポンドしかかかっておらず、仮にカンテ1人にこの額を費やしていても、まだまだ安かったと言えよう。
■ジョゼ・モウリーニョ
クラブ:チェルシー(第一次)
獲得選手:パウロ・フェレイラ(1340万ポンド)
自身を「スペシャル・ワン」と称した就任会見で注目を浴びたジョゼ・モウリーニョがまずチェルシーに連れてきたのは、ポルト時代の愛弟子である元ポルトガル代表DFパウロ・フェレイラだった。フェレイラは1年目から左右のサイドバックをこなし、プレミアリーグとリーグカップの2冠達成に大きく貢献した。指揮官が去った後もクラブに残り、結局2013年の引退までチェルシーの選手としてありとあらゆるタイトルを獲得。引退後も今年3月に退団するまで若手の育成などでクラブに貢献を続けた。1340万ポンドはかなりお買い得だったと断言できる。
■ジネディーヌ・ジダン
クラブ:レアル・マドリード(第二次)
獲得選手:エデル・ミリトン(4270万ポンド)
2021-22シーズンのレアル・マドリードにおいて、フィールドプレーヤーの中で出場時間が最も多かったのがブラジル代表DFエデル・ミリトンだった。4バックの一角としてクラブの3冠を支えたミリトンだが、最初から順風満帆だったわけではない。そもそもミリトンをポルトから連れてきたのは、前監督のジネディーヌ・ジダンだった。しかし、加入後2シーズンはレギュラーだったわけではなく、高額な移籍金もあって批判を受けることも多かった。ただ、前述のように加入3年目の昨シーズンからレギュラーの座を掴み、タイトル獲得に貢献。自身を獲得した監督が去ったあとにチームに馴染むミリトンのような例もあるのだ。
■マウリツィオ・サッリ
クラブ:チェルシー
獲得選手:ジョルジーニョ(5000万ポンド)
2018年夏、チェルシーの監督に就任したマウリツィオ・サッリが、自らの“サッリボール”に欠かせないピースとして古巣ナポリから連れてきたのがイタリア代表MFジョルジーニョだった。当初は監督と共に批判されることも多かったジョルジーニョだが、恩師が1シーズンで退任した後もコンスタントに試合に出続け、いまだに国内タイトルはないものの、逆にCLやヨーロッパリーグ(EL)、UEFAスーパーカップ、クラブワールドカップといったあらゆる国際タイトルを獲得している。2020-21シーズンにはUEFA男子最優秀選手賞を受賞した。5000万ポンドという数字は大金だが、これらのタイトルを見ると、その価値はあったと言えるだろう。
■ユルゲン・クロップ
クラブ:リヴァプール
獲得選手:マルコ・グルイッチ(510万ポンド)
才能ある選手を獲得し、成長させてきたユルゲン・クロップ監督だが、当然全てが上手くいったわけではない。最初に獲得した選手がまさにそうだった。インテル、ユヴェントス、チェルシー、ミランなどそうそうたるクラブが争奪戦を繰り広げた末、クロップの補強第一号としてリヴァプールにやってきたセルビア代表MFマルコ・グルイッチだったが、それから5年半で公式戦に出場したのは16試合のみ。スタメンに限ればわずか5試合しかない。レンタル移籍を繰り返し、昨年夏に退団が決まったグルイッチだが「僕はクロップ監督の補強第一号だ。そんなにプレーはできなかったけれど、ユルゲンは常に好きな監督であり続けるよ」と指揮官へ感謝の言葉を述べた。
■ジョゼップ・グアルディオラ
クラブ:バイエルン
獲得選手:マリオ・ゲッツェ(3150万ポンド)
2013年、バルセロナで一時代を築いたペップ・グアルディオラが新天地に選んだのはドイツの象徴バイエルンだった。そんな指揮官の補強第一号は「ドイツ史上最高の選手」との呼び声もあった元ドイツ代表MFマリオ・ゲッツェだ。周囲はグアルディオラがゲッツェを“新たなメッシ”に進化させることを期待した。そこからバイエルンはブンデスリーガ3連覇を達成する。しかし、その中心はゲッツェではなかった。度重なる負傷や試合感の欠如でゲッツェはかつての輝きを失い、2016年夏に古巣ドルトムントへ復帰。当時ゲッツェの代理人を務めていたフォルカー・シュトルート氏は「グアルディオラが彼を壊した」と指揮官への恨み節を口にした。これはフロント主導の選手獲得が上手くいかなかった例と言えるだろう。
■マウリシオ・ポチェッティーノ
クラブ:サウサンプトン
獲得選手:ヴェガール・フォレン(350万ポンド)
2013年1月18日、サウサンプトンは3部から苦楽を共にしてきたナイジェル・アドキンス元監督を突然解任し、マウリシオ・ポチェッティーノ新監督の招へいを発表した。そのニュースの数時間後、クラブはさらにノルウェーのモルデから元ノルウェー代表DFヴェガール・フォレンの獲得を発表。タイミング的にフォレンはポチェッティーノが獲得を熱望した選手というわけではなさそうだが、補強第一号であることには変わりない。リヴァプール移籍の噂もあったフォレンへの期待は大きかったが、蓋を開けてみれば、結局ファーストチームでは一切出場機会を与えられず、半年後にモルデへ出戻ることとなった。
(記事/Footmedia)
By Footmedia