サッカーの研究機関『CIES Football Observatory』は、全世界71リーグの計1226チームを対象に、2022-23シーズン(もしくは2022年シーズン)における1試合平均のパス本数を調査。その報告書によると、華麗なパスサッカーを繰り広げるマンチェスター・Cが2位以下に大差をつけて1位に輝いた。そして2位に入ったのが、J1リーグ昇格に王手をかけたアルビレックス新潟だった。それではデータを詳しく見てみよう。
■1位 マンチェスター・C 754本
最近はあまり聞かなくなった“ティキ・タカ”だが、生みの親であるジョゼップ・グアルディオラ監督のパスサッカーは健在だ。『CIES』の調査によると、今季のマンチェスター・Cはプレミアリーグで1試合平均「754本」ものパスを繰り出しており、2位以下に40本以上の差をつけて断トツで世界最多となっている。ペップ政権7年目のシティは、これまで磨き上げてきたパスサッカーをいかんなく発揮しているのだ。
今シーズンは、前線にFWアーリング・ハーランドという怪物を加えたことで直線的な攻撃が増えるかに思われた。確かに最速ルートでゴール前に持っていくこともあるが、圧倒的な力で押し込む時間帯が多く、1試合平均のポゼッション率は驚異の68パーセント超え(FBREF)。完全にゲームを支配して好きなようにパスを繋いでいる。プレミアリーグの中で見ると、最もパス本数の少ないボーンマス(352本)の倍以上のパスを出していることになる。それでいて今回の調査対象となった1226チームで2番目に高い「90.8パーセント」のパス成功率を維持しているのだ。
■2位 アルビレックス新潟 713本
パス本数でマンチェスター・Cに次いで2位に入ったのは、明治安田生命J2リーグに所属する新潟で1試合平均「713本」。松橋力蔵監督の元でコレクティブなパスサッカーを繰り広げているチームは、開幕7試合でわずか2勝とスタートダッシュに失敗したが、その後は快進撃を見せて現在J2リーグで首位。今月8日に開催される第40節ベガルタ仙台戦に引き分け以上で悲願のJ1昇格が決まる。
2017年に降格して以降、J2生活が続いていた新潟だが、ようやくJ1の舞台に帰ってこれそうだ。しかも、ただ単に結果を残すだけでなく、魅力的なパスサッカーで結果を出しているのである。ちなみに日本勢で新潟の次に上位に入ったのは、J1リーグで首位を快走する横浜F・マリノスで631本の18位タイ。続いてJ1リーグで2位の川崎フロンターレの20位(630本)となっている。やはりパスサッカーを極めるチームが結果を残しているため、新潟もパスサッカーを維持していけば、来シーズンにはJ1リーグで旋風を巻き起こしているかも!?
■3位 ベンフィカ 708本
3位に入ったのはポルトガルの名門ベンフィカだ。今季ポルトガル1部リーグで唯一無敗を維持しているクラブは、1試合平均「708本」のパスを繰り出して国内リーグで首位を走っている。700本以上のパスを記録しているのは、このベンフィカまでとなっている。
ベンフィカで注目すべきは、今オフに加入したアルゼンチン人MFエンソ・フェルナンデス(21歳)だろう。アルゼンチンのリーベル・プレートから加入した逸材は、ダブルボランチの一角として中盤で献身的に動きながらタクトを振るっており、彼のパス本数は国内リーグで最多。2位以下の選手に200本近い差をつけている。新加入ながら即座に活躍しており、ポルトガルリーグで8月の月間最優秀MFに選出された。9月のホンジュラス戦では途中出場からアルゼンチン代表デビューまで果たしており、ワールドカップでも彼のパスが見られるかもしれない。
■4位 パリ・サンジェルマン 693本
惜しくもトップ3入りを逃したのがフランスのパリ・サンジェルマン(PSG)だ。リーグ・アンのタレント集団は、今季リーグ戦で平均「693本」のパスを繰り出しており、ここまで無敗で首位を走っている。リーグ戦どころかカップ戦も負け知らずで、今季ここまで公式戦12試合で11勝1分け。国内リーグでモナコに引き分けた以外は全て勝利している。
PSGはフランスで2番目に多いリヨン(636本)より50本以上も多くのパスを出しており、パス本数ならば国内敵なしといったところだ。そのPSGに関して特筆すべきは、抜群の「精度」だろう。今回の調査によると、パス本数こそ4位に留まったが、パス成功率は1226チームの中で1位となる「91.3パーセント」を記録した。1試合平均「632本」もパスを通したことになる。
■5位 マッカビ・テルアビブ 682本
5位は「682本」でイスラエルの強豪マッカビ・テルアビブとなった。ここまで、上位に入ったクラブはどこも国内リーグで首位を走っているが、マッカビ・テルアビブはイスラエルリーグで3位に甘んじている。これには理由があり、今回の調査は9月26日までの試合を集計したもの。マッカビ・テルアビブは、10月1日にマッカビ・ハイファとの大一番に敗れて今季初黒星を喫して首位から陥落したのだ。
とはいえ、6試合を消化して首位のマッカビ・ハイファとは2ポイント差なので、まだまだ十分に巻き返せる。ちなみに、マッカビ・ハイファのパス本数は1試合平均「503本」でマッカビ・テルアビブを大幅に下回っている。
■スコットランドの2強は…
興味深い結果が出たのはスコットランドの2強、セルティックとレンジャーズだ。永遠のライバルである両チームは、今回の調査結果では「655本」の同数を叩き出して12位タイで並んだのだ。しかし、パス精度に関しては、「87.0パーセント」のレンジャーズに対して王者セルティックが「87.4パーセント」で一歩リード。さらに“前方へのパスの割合”でも、「26.1パーセント」のレンジャーズに対してセルティックが「30.7パーセント」と上回った。古橋亨梧や前田大然といった日本代表の快足ストライカーのスピードを活かすべく、縦へのパスが増えているのだろう。ちなみに、この「30.7パーセント」というのは、パス本数ランク上位17チームの中では最高数値となっている。
■『CIES Football Observatory』の1試合平均パスランク
1位 マンチェスター・C(イングランド) 754本
2位 アルビレックス新潟(日本2部) 713本
3位 ベンフィカ(ポルトガル) 708本
4位 パリ・サンジェルマン(フランス) 693本
5位 マッカビ・テルアビブ(イスラエル) 682本
6位 リヴァプール(イングランド) 675本
7位 バイエルン(ドイツ) 671本
8位 カスピ(カザフスタン) 663本
9位 シャフタール(ウクライナ) 660本
10位 アヤックス(オランダ) 657本
10位 シルケボー(デンマーク) 657本
12位 セルティック(スコットランド) 655本
12位 レンジャーズ(スコットランド) 655本
14位 アル・ナスル(UAE) 647本
15位 ディナモ・キーウ(ウクライナ) 643本
16位 リヨン(フランス) 636本
17位 FCソウル(韓国) 632本
18位 ヨング・アヤックス(オランダ2部) 631本
18位 横浜F・マリノス(日本) 631本
20位 川崎フロンターレ(日本) 630本
※9月26日までの試合が対象
(記事/Footmedia)
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By Footmedia