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市立船橋の状況を先読みした柔軟な対応 相手監督も舌を巻く守備面の修正力

2014.01.04

第92回全国高校サッカー選手権大会 3回戦 市立船橋-水戸啓明
鈴木潤(フリージャーナリスト) 取材・文

14年1月3日(金)/12:05キックオフ/千葉県・フクダ電子アリーナ/観客7148人/試合時間80分

市立船橋  4(2-0、2-1 )1 水戸啓明

得点者
(市立船橋)
柴戸(前半14分)
石田(前半35分)
成田(後半7分)
室伏(後半14分)

(水戸啓明)
石川(後半26分)

序盤からゲームを支配する市立船橋は、前半14分にセットプレーから4柴戸海が決めて先制。前半35分にも12山之内裕太のクロスに10石田雅俊がヘッドで合わせて前半で2点のリードを奪う。後半に入っても市立船橋の優勢は変わらず、後半7分には7成田悠冴、後半14分には8室伏航が立て続けに決めて試合を決定づける。その後、水戸啓明も1点を返したものの、市立船橋が盤石の戦いぶりで準々決勝進出を果たした。

 ふがいないパフォーマンスに終始した前日の2回戦と比べ、市立船橋の動きは見違えるようによくなった。ダブルボランチを経由した丁寧なビルドアップで攻撃を組み立て、5磐瀬剛と4柴戸海の両センターバックが効果的なフィードを放つなど攻撃は多彩。エースの10石田雅俊も「昨日より入りがよかった」と振り返った通り、前線にボールが入ったときのテンポがよく、力強い攻撃で水戸啓明の守備ラインを深くに釘付けにした。

水戸啓明の生命線は右サイドにある。右サイドバックの7阿部悠大のオーバーラップとクロスから活路を見出したいところだったが、そこは市立船橋の左サイドバック、12山之内裕太が高めにポジションを取っていたため、7阿部は相手の攻撃力を警戒するあまり、なかなか前へ出て行けない。さらに市立船橋は、右サイドバックの2篠原良介も積極的に攻め上がり、両サイドバックが高い位置に張り出すという攻撃的なシフトを敷く。それに伴い、中央で10石田、11横前裕大、7成田悠冴、8室伏航がフレキシブルにボールを出し入れしながら攻撃を繰り出した。

前半14分、左CKからニアサイドの5磐瀬がスルー、ゴール中央の4柴戸がヘッドで押し込んで先制点を挙げた。さらに前半35分には、12山之内のアーリークロスに飛び込んだ10石田がダイナミックなヘディングシュートでネットを揺らす。

前半のシュート数は市立船橋の16本に対し、水戸啓目が3本。この数字が示す通り、市立船橋が圧倒的に攻め込んだ前半だった。

後半も流れは変わらず、むしろ今大会初ゴールに気をよくした10石田が、その“個の力”をいかんなく発揮し始める。後半7分には裏への飛び出しから放ったシュートのこぼれ球を7成田が詰め、後半14分にも10石田のポストプレーが8室伏の豪快な一撃を誘発した。4-0となり、早くも市立船橋が試合を決定づけた。

水戸啓明もチャンスがなかったわけではない。市立船橋の両サイドバックが高い位置を取るため、ボールを奪った瞬間は大きなチャンスだった。つまり、カウンターを仕掛けたときには当然両ワイドには広大なスペースが生まれており、一気に縦へ攻め上がった7阿部のクロスから10石川大地、14神山健太朗がゴール前のスペースに飛び込んで好機を生み出して応戦していく。前半のうちに点を返すこともできたのだが、そこは市立船橋ディフェンス陣の寄せの早さにシュートタッチが狂い、千載一遇のチャンスでは精度不足が目立っていた。

水戸啓明・巻田清一監督が「今までの対戦相手とは違う。一枚上手」と舌を巻いたのは、市立船橋の守備面の修正力だ。今までならば、相手の守備の粗を見つけ出せば、そこを突破口にこじ開けることができていたのだが、市立船橋の状況を先読みした柔軟な対応によって、前半途中からストロングポイントを思うように出せなくなってしまう。

それでも水戸啓明は、かたくなに自分たちのストロングポイントを貫き通した。4点差をつけられても気持ちを切らさず、隙があれば7阿部は積極的に右サイドを駆け上がりクロスを供給。後半26分にはその形が実り、右サイドからのクロスを10石川がヘッドで合わせて市立船橋の堅守を打ち破り、1点を返した。「偶然ではなく、必然的に崩す場面があったので、そこは評価したい」と巻田監督も選手の成長を感じたゴールだった。

しかし、水戸啓明の反撃もこの1点のみ。大量リードを奪った市立船橋は、終盤は3バックシステムへの変更やサブメンバーをピッチに送るといった、今後の戦いを見据えながら試合を進め、3点のリードを保ったまま4-1でゲームを終わらせた。

前日とは全く異なる好パフォーマンスで快勝を飾った市立船橋。何より10石田に一発が出たことで、朝岡監督も「決めてくれて安心しました」と安堵の表情を見せた。エースの覚醒は、夏冬連覇を狙うチームにさらなる勢いをもたらすことができるだろうか。

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