[写真]=川端暁彦
文=川端暁彦
3年生らしからぬ「25」という重い番号を背負った四日市中央工業のDF後藤凌太。1月5日に行われた履正社との準々決勝でも、その献身的な守りは健在だった。だが、この試合の彼に関するハイライトは、間違いなく後半ロスタイム。セットプレーからこぼれてきたボールを押し込んだ、その瞬間だった。
終了間際に生まれた劇的な同点ゴール。自慢のスピードで走って行く先は、控え選手たちの待つベンチだ。「僕もずっとBだったんで……。出られない奴があそこにいるし、(中村)研吾なんて1、2年のときは試合に出ていたのに、今は出ていないですから」。ベンチメンバーの喜び方は、劇的な同点ゴールだったからというだけではなかった。あっという間に、もみくちゃにされる25番。高校での公式戦初ゴールは、サッカー部の歴史に残るような、国立をたぐり寄せる1点となった。
登録の身長は170cm。ただ、実際はそれよりも少し小さいかもしれない。CBとしてはかなり小柄な部類に入るだろう。ずっとBチームにいた彼がAチームへと大抜擢されたのは、8月も終わろうとするころだった。
選手権県予選に向けて、DF陣のテコ入れを考えていた樋口士郎監督の目に、その存在が入ってきたのだ。「素直に、うれしかったです」。そこからさらにレギュラーポジションにまで大抜擢。だが、この起用に小さなDFは見事に応えた。体は小さいが、「絶対に負けない」というスピードを武器に、高いディフェンスラインを保つ四日市中央工業のサッカーを支える。「後藤がいるおかげで、ラインを高く保てるようになった」と、すっかり樋口監督の信頼も勝ち取った。
後藤のゴールで追い付いた四日市中央工業は、続くPK戦でも勝利を飾った。次は国立。夢にまで見た舞台だ。2年前、1年生だったときはスタンドで応援団の一員だった。3年生になっても、試合に出られない日々が続いた。だがそれでも続けた努力が、一つの実を結んだと言える。ただ、まだまだ満足はないとも言う。
「僕らの目標は、全国制覇ですから」
文=川端暁彦