[写真]=足立雅史
文=川端暁彦
日章学園の早稲田一男監督は開口一番、対戦相手への賛辞を並べた。
「富山第一さんはいいチームでした。そつがないし、技術もある。特に中盤は非常に良かったですよね。簡単にボールを失わないし、いやらしいプレーをしてくる。そこは(自分たちが悪かったというより)逆に相手を褒めたい」
0-4での大敗。富山第一の選手から「まさか、こんな大差になるとは……」と驚きの声が漏れたゲームは、1点目が入るまでは内容的な差はなかった。ただ、日章学園の指揮官は潔く脱帽し、相手のプレーを称えた。
1959年生まれ、54歳の早稲田監督にとって国立は思い出の地。帝京高校時代は主将として優勝旗を手にした場所である。古河電工(現・ジェフ千葉)で活躍し、引退後に高校サッカーの指導者として歩み始めたのも、そこを再び目指していたからこそ。「こういうチャンスはなかなかない。3年前(第89回大会)にもベスト8に入って、その反省も踏まえていったんだけれど、やっぱり難しいな。絵に描いたようなシチュエーションだった。国立のピッチに立ったら泣いちゃうんだろうなと思っていたけれど、また悔し涙になってしまったよ」と、無念の敗戦に終わった心境を静かに語った。
3回戦では九州の強豪にして優勝候補の東福岡をPK戦の末に沈めた。手応えがなかったわけではない。「例年にないほどの粘り強さを出し切れた大会だった。3年生には『お疲れさん』と言うしかない」と述べつつ、「1、2年生にはこういう悔しい思いを繋げていってもらわないとね。『来年に向けて今からが出発』だぞと言いたい」と早くもその目は、来シーズンの戦いを見据えていた。
文=川端暁彦