文=川端暁彦
2年ぶりの「国立進出」を果たした四日市中央工業。そのチームには注目の1年生MF、森島司がいる。
背負うナンバーは14番。ダブルボランチの一角で先発を重ねているが、もう一人のボランチである村澤桂輔との役割分担は明確。ボールを保持すれば、村澤に後方を任せて森島が前に行くという形だ。「2.5列目」のようなポジションで、相手にとっては何とも捕まえにくい選手となっている。
「常に顔が上がっているし、戦術眼も技術もある」(樋口士郎監督)と、1年生ながら周囲の信頼は厚い。的確なボールさばきとパスの散らしでゲームを組み立てつつ、最後にフィニッシュワークにまで絡んでいく。トップ下に位置する同じ1年生の小林颯との連係も良好だ。
そんな森島は名古屋グランパスのU-15チーム出身。もっとも、愛知人だったわけではなく、地元の鈴鹿市から遙々と練習場のある愛知県豊田市まで通っていた。JFAエリートプログラムに選ばれるなど周囲の評価も低くなかったが、「学校が終わって、そこから電車だと(練習に)間に合わない」(森島)という環境はタフでもあった。中学2年の夏に面談を経て、クラブを離れた。このときに「高校サッカーに行く」(森島)ことも、合わせて決断したという。
ヴィアティン北勢FC(旧・三重北勢FC)に移籍して1年半を経て、進んだのは四日市中央工業。4歳上の長男・森島大がかつて通い、プレーしていた学校である。森島大は2年前の準優勝メンバーだ。実は、2歳上の次男・森島広も、地元の強豪・海星でプレーしており、今回の選手権三重県予選決勝では対戦もしている。兄二人の姿を観て、「高校サッカーのほうが楽しそう」と感じたことが、Jクラブではなく部活を選ぶ決め手となった。ちなみに、末の弟もヴィアティンでプレーするサッカー選手である。
サッカー一家で育った森島が目指すのは、もちろん兄を超える記録となる全国の頂点。「人とは違うプレーヤーになりたい」と語る1年生の司令塔が、国立のピッチに立つ。
文=川端暁彦