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全幅の信頼を寄せられるPK職人の富山第一・田子真太郎 大塚「田子がいるから勝てる」

2014.01.12

[写真]=鷹羽康博

第92回全国高校サッカー選手権大会 準決勝 富山第一-四日市中央工
篠幸彦(フリーライター) 取材・文

14年1月11日(土)/12:05キックオフ/東京都・国立競技場/観客22228人/試合時間90分

富山第一 2(1-1 PK5-3)2 四日市中央工

得点者
(富山第一)
藤井(前半22分)
細木(後半12分)
(四日市中央工)
中田(前半44分)
井手川(後半28分)

 前半は富山第一が四日市中央工(四中工)の高いDFラインの裏を徹底的に狙う。その狙いが功を奏し、前半22分にCKを獲得。そのCKから藤井徹が先制した。そのまま折り返すと思われたが、前半44分に四中工は中田永一がFK直接決めて同点とする。後半は立ち上がりから富山第一が積極的に圧力をかけ、後半12分に細木勇人のゴールで勝ち越しに成功。しかし後半28分、四中工も井手川純がロングフィードから富山第一のDFラインの裏へ綺麗に抜け出し、同点に追いつく。富山第一は終了間際にPK職人のGK田子真太郎を投入すると、見事その期待に応えて富山第一がPK戦を制して、富山勢として初の決勝へ進出した。

 立ち上がりから富山第一の狙いはハッキリとしていた。四日市中央工(四中工)の高いDFラインの裏へ徹底して早いタイミングでボールを供給し、そのボールにスピード豊かな9渡辺仁史朗をはじめ、巧みな2列目からの飛び出しで西村拓真、野沢裕弥がチャンスをうかがった。四中工としては、1回戦からそういった狙いを持って蹴り込んでくるチームを相手にしてきたこともあり、坂圭祐、後藤凌太のCBコンビは落ち着いて対応していた。

 しかし、徐々に富山第一がチャンスへ結びつけそうな匂いを感じさせはじめた前半22分。大塚翔のスルーパスに反応した西村の抜け出しからCKを獲得。細木勇人がショートコーナーで村上寛和が左足でクロス。DFに当たりながらこぼれたボールに藤井徹が押し込み先制。富山第一は四中工DFラインの裏を突破して得た最初のCKをものにした。

 四中工は「前半はプレスのキツさにビビる部分があった」(森島司)と、富山第一の細木、藤井らを中心に積極的に前からプレスをかけてくる守備に苦戦した。なかなかリズムが作れない中、前半44分。大辻竜也のロングボールを井手川純がトラップし、反転。前を向こうというところを富山第一の村上が引っかけて倒す。ゴール正面やや左という絶好の位置でFKを得た。そのFKで中田永一が左足で振り抜いたボールは壁を越えて鋭く曲がって落ち、バーをたたいて右サイドネットを揺らした。終了間際のスーパーFKで同点とし、国立が大きく沸いた。

 後半、前半終了直前の同点弾で四中工が勢いに乗るかと思われたが、富山第一が出足鋭く四中工へ襲いかかる。後半8分、9分と立て続けに決定機を作り、直後の12分。ここまで左サイドで存在感を見せていた竹澤昂樹が、ドリブルで中へスルスルと抜けてバイタルエリアへ侵入する。前を走る細木に出したパスはDF当たってこぼれるが、細木がうまく拾ってゴール右上へ冷静決めて再びリード。今大会、四中工の壁となり、危ない場面を跳ね返し続けた坂もこの場面は防ぎ切れなかった。

 しかし、四中工は準々決勝でも見せた粘り強さを発揮する。後半28分、中田のロングフィード一発で富山第一DFライン裏へ綺麗に抜け出した井手川が、右足インサイドで巻いたボールを転がし、冷静にゴール右隅へ流し込む。富山第一としては「簡単に裏へ抜けられるのはいちばん気をつけていた」(藤井)形から再び同点弾を許してしまった。

 その後、お互い一度ずつ決定機を作るも得点にはならない。後半終了間際に富山第一はPK職人、田子真太郎を投入し、PK戦を迎える。そして、「田子がいるから勝てると思っていた」(大塚翔)と、チームメートから全幅の信頼を寄せられるPK職人が見せた。お互い2人目までを成功させ、富山第一3人目野沢も左隅へ決める。四中工3人目はFKを沈めている中田。得意の左足で蹴り込んだボールは甘いコースへ飛び、田子がはじき返す。田子の雄たけびとともにバックスタンドの富山第一応援団が歓喜に揺れる。富山第一はこのリードを守って5―3でPKを制し、富山勢として初の決勝へ進出を決めた。

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