本連載の著書である安藤隆人氏は、元銀行員という異色の経歴を持つサッカージャーナリスト。今では、高校サッカーを中心に日本列島、世界各国を放浪し精力的な取材を行っている。巷ではユース教授と呼ばれる。本連載では安藤氏の“アンダー世代”のコラムをお届けする。
文=安藤隆人
第92回全国高校サッカー選手権大会において、優勝候補筆頭と目されていた東福岡だったが、3回戦で同じ九州の日章学園に敗れて大会を去った。
この悔しい敗戦を胸に、新たなスタートを切ろうとしている2年生ストライカーがいる。中島賢星。『赤い彗星』が誇る伝統的な4-3-3システムの攻撃の要となるサイドアタッカーを任されている。180cmを超す高さと屈強なフィジカル、そしてスピードを駆使して、強烈なカットインからゴールを狙う。ボールを持ってからのダイナミックなプレーは一見の価値ありで、確かな足元の技術をベースに、バリエーション豊富な仕掛けを見せる。
「目標はプロでプレーすること。そのためにはすべてのレベルをもっと上げないといけない」
こう語る彼は、まだまだプレーの波がある。調子がいい時は抜群の活躍を見せるが、調子が悪い時は、一目瞭然で、試合から消えてしまうこともある。先の選手権でもその落差が目立った。
「悪い時にいかに自分の中で立て直せるか。課題が多いので、そこは意識を高くして解消していきたい」
来年度は間違いなく彼が『赤い彗星』の絶対的なストライカーとなる。彼はスリートップの中央、つまりセンターフォワードを任される可能性が高い。そうなると明治大に進む先輩エース・木戸皓貴のように、ポストプレーや高い決定力を求められる。これからはエースの自覚と重責を背負うとともに、プレーの幅をより広げていく過程に入っていく。
これからプロになるという目標を果たすための重要な1年を迎える。この1年を彼はどのように過ごし、どのような成長を見せてくれるのか。今から楽しみでならない。