本連載の著者である安藤隆人氏は、元銀行員という異色の経歴を持つサッカージャーナリスト。今では、高校サッカーを中心に日本列島、世界各国を放浪し精力的な取材を行っている。巷ではユース教授と呼ばれる。本連載では安藤氏の“アンダー世代”のコラムをお届けする。
文=安藤隆人
毎年恒例の『春のフェスティバル巡り』の第三弾。神奈川県で開催されている『第6回FマリノスカップU-17』の取材に向かった。
この大会は横浜FMユースがホストチームとなり、全国の強豪Jユースと高校が8チーム集結し、『みなとリーグ』と『みらいリーグ』に4チームずつ分かれ、最後に順位決定トーナメントを行う。
初日はマリノスタウンで東福岡VS仙台ユース、前橋育英VS札幌ユースの取材。東福岡の新3年制であるMF増山朝陽に注目した。
増山はサニックス杯の時から抜群の存在感を放っていた。ポジションは右MF。スピードとボディーバランスに長けたドリブルで、相手DFを切り裂いていく。特に反転のスピードが早く、上半身のフェイントだけで交わしていくドリブルは、身体能力の高さを示している。
「攻撃のリズムを壊すのも自分だし、いいリズムを作るのも自分。その中で良いプレーをすることが大事だと思っています。ドリブルが得意ですが、もっと周りをうまく使って崩すことをやっていきたい」
こう語る増山は、今年になってようやくレギュラーを掴んだ。父親は日本人で、母親はスペイン人とフィリピン人のハーフ。1年次は岐阜国体で活躍するなど、能力の高い選手であることは間違いなかった。しかし、チームでは昨年までレギュラー確保とまでは行かなかった。分厚い選手層の前に、なかなか頭角を現し切れなかった。
「攻守においてがむしゃらさが足りなかった。もっと球際を激しくいかないといけなかった」
最高学年になった以上、もうそんなことを言っていられない。今年はレギュラーとして、攻撃のキーマンとして、1年通じて戦わないといけない。彼の決意がプレーににじみ出ていた。
「サイドもFWもどこでも好き。でも、シュートがまだセンスないので、高めていきたい。将来的には世界でプレーをしたい。やっぱりスペインに憧れます」
大きな将来への夢を持つ遅咲きのアタッカーが、『赤い彗星』・東福岡の伝統のサイド攻撃を担う。