中野克哉 [写真]=安藤隆人
本連載の著者である安藤隆人氏は、元銀行員という異色の経歴を持つサッカージャーナリスト。今では、高校サッカーを中心に日本列島、世界各国を放浪し精力的な取材を行っている。巷ではユース教授と呼ばれる。本連載では安藤氏の“アンダー世代”のコラムをお届けする。
文=安藤隆人
この連載も早いもので50回目を迎えた。50回目は引き続き第6回FマリノスカップU-17から。3月27日から4日間にわたり繰り広げられた熱戦が幕を閉じ、京都橘が初出場初優勝を飾った。優勝の原動力となったのが、1年の時からレギュラーを張る、新3年のエース中野克哉だ。
中野の特徴は高い技術とスピードあるドリブル。細かいボールタッチとステップワークで、相手DFと駆け引きし、シザーズ、股抜き、ワンツーと状況に応じた形で突破していく。スペースへ持ち出すドリブルもうまく、相手が飛び込みづらいポジショニングとコースを描いていく。今大会でも高い個人技を随所に披露。グループリーグ第二戦の仙台ユース戦では、ペナルティーエリア内で3人に囲まれても、ドリブルで一気に突破。シュートはDFに阻まれたが、臆することなく仕掛ける姿勢は好感が持てる。
「ドリブルの質をもっと高めたいし、周りを活かせるようになりたい」
こう語る彼は、エースとしての自覚を見せ始めている。
「今年は(小屋松)知哉くん(名古屋)のような個で打開できる選手がいないので、いかにチーム全体でつなぎながらゴールを目指して行けるか。シンプルに繋ぎながらも、僕は最後のアタッキングサードで突破力を発揮していきたい」
2年連続で国立に進出し、今年は高円宮杯プレミアリーグウェストに初参戦。自身も国立を2度経験し、高校選抜にも選ばれるなど、チームとしても個としても注目が集まる1年となる。
「プレッシャーはありますが、それに押しつぶされてしまったら何も残らない。期待が高いからこそ、やるしかない」
昨年までは先輩たちに引っ張られ、ある意味やりたいようにプレーすることが出来た。しかし、今年は違う。最高学年を迎え、周りのプレッシャーも直に受けることになる。今年はエースとしてだけではなく、より大人としてチームを支える1年となる。