中央大学・三島頌平【写真】=安藤隆人
本連載の著者である安藤隆人氏は、元銀行員という異色の経歴を持つサッカージャーナリスト。今では、高校サッカーを中心に日本列島、世界各国を放浪し精力的な取材を行っている。巷ではユース教授と呼ばれる。本連載では安藤氏の“アンダー世代”のコラムをお届けする。
文=安藤隆人
4月16日、関東大学サッカーリーグ前期・第三節の中央大VS慶應義塾大の試合で、両チームのスタメンの中でただ一人、1年生が名を連ねていた。
中央大学のルーキー・三島頌平。全国各地から優秀なタレントが集まる関東大学リーグ切手の強豪・中央大において、1年次からスタメンの座を掴むことは至難の業である。
三島は帝京大可児高校時代、FW杉本太郎(鹿島)らと共に、インターハイベスト8進出に貢献。広い視野と高いキープ力、そして正確な長短のパスを駆使するゲームメーカーで、Jクラブのスカウトからも注目を浴びる存在だった。清水エスパルスが強い興味を示していたが、「もう一度大学でしっかりと鍛え直す」(三島)と、中央大学に進学。4年後のプロ入りに向け、新たなスタートを切った。
早々にレギュラーを掴み、順当な滑り出しのように見えたが、早くも大きな壁が立ちはだかった。今季の中央大は思うようなサッカーが展開できず、苦しい戦いを強いられていた。慶應大との試合でも、ブロックを形成してきた慶応大に対し、横パスが多くなり、ポゼッションはしているが、なかなか相手のバイタルエリアを攻略できなかった。三島もポジションが下がり、横パスを多用。得意とする攻撃のスイッチを入れる鋭い縦パスは影を潜めた。判断も遅く、リズムを作りきれないまま、試合は1-2で敗れた。
試合後、中央大学サッカー部の佐藤健総監督は、三島に対してずっと話をしていた。
「『もっと中心になってやってくれ』と言われました」(三島)
まだ入学したばかりのルーキーに、試合の責任を負わせることは酷かもしれないが、それだけ実力を持っているということ。佐藤総監督の言葉は、期待の表れであり、『ルーキーだから』という甘えを持たず、主力としての自覚を持つことを促している。
「何もできなかった。もっと自分が動いて、攻撃を組み立てなければいけなかった。本当に悔しい」
1年でスタメンという地位に浮かれている暇はない。今のタスクは不調のチームをどういい方向に導いていくか。いきなり訪れた壁。だが、それは実力者ゆえの必要な『成長の階段』。すんなりとはいかないが、チャレンジすることは必然であり、重要な過程。4年後の目標に向け、タレントは今まさに磨かれようとしている。