折れないのが今季の清水ユース、5連勝は“脇役”たちの存在感

前半32分、清水FW大野(中央)が同点ゴールを突き刺す

文=川端暁彦

 5月11日、高円宮杯U-18プレミアリーグEAST第5節が各地で一斉に開催された。この第5節を終えると、同リーグは高校総体予選および全日本クラブユース選手権予選のための中断期間へ突入する。つまりこの節は〝序盤戦ラストゲーム〟である。

 開幕4連勝でスタートダッシュに成功した1位・清水ユースはアウェイで鹿島ユースとのゲームに臨んだ。カシマスタジアムで行われたこの試合、立ち上がりから清水が主導権を握り、……とはならなかった。「長いボールに勝てないし、セカンドも拾えなかった」と大榎克己監督が嘆き、「最初はやばかったです。マークを外すのが難しかった」とMF水谷拓磨が苦笑いを浮かべたように、序盤から攻勢に出たのは鹿島だった。激しくプレッシャーをかけて球際の攻防も制し、奪ったボールは素早くシンプルに前へと運んでいく。身体能力に秀でるFW鈴木優磨を先陣に置く攻勢で、前半30分過ぎまで首位チームにほとんどサッカーをさせなかった。

「マンツーマン気味に来るのはわかっていたのだけれど……」と大榎監督が振り返ったように、清水が特に苦しんだのが鹿島の激しいマーキング。特に中盤中央の3枚に対する守備は厳しく、ここでボールが動かなかったことがチームの機能不全を生んでいた。32分にはMF平戸太貴の一撃を浴びて失点。首位チームは窮地へと追い込まれた。それでも前半ロスタイムにFW大野椋馬が粘り強く同点ゴールを奪取したものの、後半開始早々の52分に鹿島FW色摩雄貴にこぼれ球を押し込まれて元の木阿弥。このまま敗勢の流れだった。

 ただ、ここで折れないのが今季の清水だ。リードを奪った鹿島の攻勢の勢いが減じ、疲れも見え始めたところで主導権を奪い返していく。CBの持ち出し、ボランチのドリブルといったマンツーマン破りのセオリーを踏まえて攻撃をかけつつ、選手交代からギアを上げていった。まずは88分、水谷が同点ゴールを奪うと、さらにロスタイムも4分を経過したところで、前節でも終盤に同点ゴールを決めているMF柴田祐輔が再びゴール。クロスボールへ巧みに動きを合わせての貴重な決勝点に、「チームの粘り、あきらめない気持ちが出た」と胸を張った。

「ミラクル的な試合ができている」と大榎監督。開幕5連勝と言っても、内容は薄氷の勝利が目立つ。エース格のFW北川航也が負傷離脱しており、内実は苦しい部分もある。「正直、(北川)航也がいないのは厳しい面はあります」と柴田も率直に認める。ただ、その上で「航也がいない分、よりチームプレーができるようになっている。彼の個人技に頼る部分が大きかったので」と水谷が言うように、“困ったときの北川頼み”ができなくなった分、個々の選手が自覚を持ってチームとして戦えるようになった側面もあるようだ。

 大榎監督は「左SBの田口雄太なんて体は小さいし、足も速くない。いつやられるかと心配しながら使っていたが、彼は本当に賢い選手。どんどん良くなって、本当によくやってくれている。(決勝点の)柴田も前に行く推進力は元々あるが、昔はワンタッチでパスを出すなんてまるでできなかった選手。随分と良くなった」と個々の成長に目を細める。絶対的エースが不在の苦しい試合の中で、脇役と見られていた選手たちが存在感を出していく。そんな好循環の中で、清水は開幕5連勝。堂々の首位で序盤戦を終えた。

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