初戦の日大山形戦でハットトリック達成のFW柳原慶斗 [写真]=森田将義
「高校サッカーの歴代最高記録の大迫(勇也)選手の10ゴールを超える気持ちでこの大会に挑んでいる」。今大会、一人目のハットトリックを記録した初芝橋本(和歌山)のFW柳原慶斗(3年)はそう力強く言い切った。
前半は「点が入れば良いなくらい」(阪中義博監督)というゲームプランながらも、立ち上がりからエンジンがかからなかった初芝橋本。相手にボールを持たれる時間も多く、ファールからセットプレーを与えるなど苛立ちが募る展開が続いた。
そんな苦しい流れを一変させたのが柳原の一撃だった。31分に後方からの浮き球をPA手前でコントロールすると、背負ったDFをそのまま引き連れ、PA左へと進む。それでもついてくるDFに強引に突っ込みながら、打ったシュートが相手DFに当たって、オウンゴールを誘った。「ゴール前では泥臭いプレーをしたいと思っている。サッカーを初めてからずっと、PAに入ればパスを考えず自分で行くように心掛けている。イメージ通り出来た僕らしいゴール」で先制すると、勢いに乗った後半は前線で躍動した。
38分と41分には右サイドからのクロスに飛び込みながら頭で合わせて、ゴールを奪うと44分には自らPA左に切り込み、豪快な左足シュートを決めて、ハットトリックを達するなど大暴れ。チームの5-1という好発進に貢献した。
「うちは本来、柳原ではなく、末吉(塁)のチーム。僕もアイツに出せば、何とかなるし、蹴っとけって指示も飛ばす」と阪中監督が冗談交じりに話すように、攻撃の要は背番号10を背負う末吉だが、大会前に太ももを痛め、本調子に戻らず。この日はスタメンから外れ、試運転という形で途中出場した。
「塁はいつも僕の隣りにいて、ラストパスを出してくれる」。2トップを組む相方と繰り出す息の合ったプレーに自信を見せつつ、「点を獲っているだけでいつも注目されない。注目されるのは塁とか(渡辺)淳揮ばかり。注目されるためには自分でアピールして、名前を売っていくしかない。そのためには(2008年の高校サッカー選手権で樹立した)大迫選手の記録を抜くしかないと思った」とライバル心を隠さない。
スタイルは「大迫選手は相手DFの裏に抜け出したり、ボールを受けて、上手く周囲を使ったり綺麗なイメージだけど、僕はゴール前で貪欲さを発揮する“泥臭い”タイプ」と異なるが、「得点能力に関しては同じくらいだと思っている」と自信も見せる。
目標達成まで、あと8得点以上。チームが早期敗退していてはとても届かない数字だけに、「そんなに簡単に負けられない。目指すは全国制覇」は記録更新と日本一というダブル獲りを目指す。今大会を終えた頃には初芝橋本の顔といえば、柳原になっているかどうか注目だ。
(文=森田将義)