大津のMF平岡拓己 [写真]=森田将義
1回戦の浦和東(埼玉2)戦を5-0で大勝したかと思えば、続く立正大淞南(島根)戦はPK戦での辛勝。この日の初芝橋本(和歌山)戦も2点のリードを一度、追いつかれてからの勝利となった。「今は甘い部分と逞しい部分が混在している。ここで全部が出来たら僕の仕事が無くなっちゃう」。平岡和徳監督がしぶとく勝ち進むチームについて、そう表現するが、監督自身も今年は“監督と父親”の顔が混在している。
球離れの速い散らしで攻撃のリズムを作り、ここまで勝ち上がりを支えてきたボランチの平岡拓己は監督の実子。主将で攻撃のキーマンでもあるMF葛谷将平が「常に僕を見てくれているので、必ず欲しい所に出してくれる」と信頼を寄せる影の実力派だ。
現役時代の監督と同じ背番号7だが、「本人は俺ではなく、遠藤(保仁)を意識しているみたい」と拗ねる素振りはまさに親の顔。「周りから、息子さんが入ってくると『大変ですね。実力が同じなら、他の選手を使わないといけないでしょ』ってよく言われるけど、『え?なぜですか?実力が同じなら、息子を使うでしょ?だって、かわいいもん』って返す」と冗談めかして話すが、「最初はここまで頑張ってレギュラーになるとは思わなかった」と現在の起用は決して、父親としての判断ではなく、監督の判断としてのモノだ。
拓己自身は入学当初、“監督の息子”という立場に難しさも感じていたが、「最初から覚悟はしていたし、乗り越えなければならないと思っていた。そして、監督に認められたかった」と早朝練習に誰よりも早く到着し、黙々と練習に取り組むなど努力を重ねた。守備に課題を残し、1、2年時はBチームのプレーが続いたが、最終学年を迎えた今年に入り大きく改善。「3歳の頃から、ずっと大津のサッカーを見て、自分が入ればどうなるかをイメージしてきた」との言葉通り、大津のボランチに重要視されるダイレクトやワンタッチでの散らしも評価され、定位置を確保した。
「父の夢は全国制覇なので、その力になりたい」。夢の実現まであと3試合。平岡親子が笑顔で大会を終える事が出来るか注目だ。
(文=森田将義)