優勝をかけて戦った大津(青)と東福岡(赤) [写真]=川端暁彦
平成26年度全国高等学校総合体育大会サッカー(男子)の決勝が8日に行われ、大津(熊本)と東福岡(福岡)が対戦した。
山梨県で1週間にわたって開催されたインターハイ男子サッカー競技のファイナルは、大津高校と東福岡高校という九州を代表する名門校同士の対戦となった。強力なウイングプレーヤーを左右に配し、高い技術と強健な肉体を兼ね備える赤い彗星・東福岡は前評判通りに圧倒的な強さを見せての勝ち残り。対する大津は一戦一戦を積み重ねるようにチーム力を蓄え、攻守のまとまりを増してきたチームだった。
立ち上がりから主導権を握ったのは東福岡。右サイドに張り出すMF増山朝陽を中心にサイドから大津に圧力を加えていく。8分にはその増山の速いクロスをFW木藤舜介がスライディングで押し込んだが、これは惜しくもオフサイド。18分には高い位置でのボール奪取から最後は左サイドバック、末永巧が強烈なミドルシュートを放つも、今度はゴールバーが東福岡の先制点を阻んだ。
一見すると完全な東福岡ペースの前半だったが、準決勝終了後、東福岡について「最初の勢いが最後まで続くわけではない。何とか序盤をしのげれば」と漏らしていた大津・平岡和徳監督にとってはまさに想定内の展開である。迎えた23分、隠忍自重していた大津攻撃陣が火を噴く。スローインの流れからMF田原悟がFW一美和成とのパス交換で左サイドを突破。MF葛谷将平とつなぎ、そこから逆サイドへのクロスを、最後はフリーで待っていたMF古庄壱成が押し込んで先制点を奪い取った。
これでペースを乱された東福岡。以降はチグハグな攻撃も目立つ展開に。だが、大津も決め切れない。後半17分に一美のミドルシュートがDFに当たってバーを叩けば、直後の18分にもCKの二次攻撃から左サイドをワンツーで破ったMF坂元大希がゴールネットを揺らすが、このゴールはオフサイドで幻に。前半を鏡に写したような決定機を逸し、追加点を奪うことはできなかった。
こうなると意地悪をするのがサッカーの神様ということなのだろうか。大津は守備固めでDF時松拓海をマンマークでMF中島賢星に貼り付け、完全な逃げ切り体制。体を張った守備は機能しており、あと少し耐え切るだけ。そんな展開だったが、後半32分だった。左サイド、ペナルティーエリア手前でボールを持った東福岡MF赤木翼がゴールへと放り込む。放物線を描いたボールはGK頭上を破り、なんとゴールイン。東福岡が土壇場で同点に追い付いてみせた。
こうなると勢いは東福岡だったか。迎えた延長前半4分。ハーフウェイライン付近でボールを持った末永の選択はロングシュート。1点目のイメージもあったのだろう。GKが前に出ていることを見切った弾道は、無情にも再びGK頭上を越えていき、ネットを揺らす。2-1。東福岡がついに逆転に成功する。延長後半7分には赤木のシュートをGKが防いだところをFW餅山大輝が押し込んで、ダメ押し点。ロスタイムには増山も決め、インターハイ決勝は4-1のスコアで終幕を迎えることとなった。
8月8日、中銀スタジアム。激戦を制して夏の高校サッカー王者に輝いたのは、東福岡。本山雅志(鹿島)らを筆頭にキラ星のごとき名手を擁して史上初の“三冠(インターハイ、高円宮杯、選手権)”を為し遂げた17年前のチーム以来となる、真夏の戴冠である。
(取材・文=川端暁彦)
【得点者】
1-0 古庄壱成(大津)
1-1 赤木翼(東福岡)
1-2 末永巧(東福岡)
1-3 餅山大輝(東福岡)
1-4 増山朝陽(東福岡)